第九章 晴美、リンチされる
貞一の不良グループと接触した別の不良グループがヒソヒソ話をしていた。
「貞一からの情報では、春樹のやつ、マドンナの杉山さんとデートしたらしいぞ。半殺しにしてやる。」
晴美は、貞一の不良グループと接触した別の不良グループがヒソヒソ話をしていたので気になり、こっそりと話を盗み聞きしていた。
その内容に驚いて、レッドデビルに助けを求めた。
晴美は、「詩穂、先日貞一の不良グループとは別の不良グループが、今日春樹がクラブ活動終了後、帰宅途中に襲う相談をしていたわ。春樹を助けて!」とレッドデビルに助けを求めた。
「私が春樹とデートした事が、なんで、そんな大ごとになるのよ。もちろん、助けるわ。」と晴美を安心させた。
「それだけ詩穂の人気が根強いのよ。いやだったら、マドンナの正体みたり、レッドデビルと学級新聞で発表すれば少しは違うと思うわよ。
「私がお淑やかにしているのは、母がうるさいからでしょう。高校の教師にまで連絡して、学校での私の様子を聞いているらしいのよ。そんな事をしたら、母にばれるじゃないの。」と晴美を止めた。
私は一旦帰宅して、クラブ活動終了時間の少し前に、レッドデビルの姿で学校に行って、帰宅する春樹を尾行した。
しばらくすれば、春樹が不良少年たちに囲まれた。
「おい、春樹、お前マドンナの杉山さんとデートしたそうだな。」とリンチしようとしていた。
私はレッドデビルの姿で飛び出した。
「闇討ちなんて、一番卑怯なやり方じゃないか!」と止めに入った。
「なぜレッドデビルがくるのだ!」と悪役レスラーに後ずさりした。
そこへ晴美たちがきて、「病院送りにされたくなかったら立ち去れ!」と不良たちに迫った。
「晴美!お前レッドデビルのファンクラブに入っているらしいな。お前がレッドデビルを連れてきたのか!」と晴美に迫った。
「自分に後ろめたい事がなかったら誰が来ても関係ないだろう。」と不良たちの前に出て晴美を助けようとした。
悪役レスラーでは相手が悪いと晴美を睨んで逃げた。
不良少年たちは、「晴美のやつ、レッドデビルなんか連れてきやがって思い知らせてやる。リンチするぞ。」と晴美たちを狙っていて襲うチャンスを窺っていた。
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数日後、弘子が私の所属するジムに血相を変えてきた。
よく見ると、腕を痛そうにしていて、顔にアザができていた。
「弘子、その顔はどうしたのだ?何があったのだ?」とフラフラしている弘子を支えた。
「私たちがレッドデビルにチクったと、不良グループにリンチされた。私だけ、何とか逃げ出した。みんなを助けて!」と助けを求めた。
弘子は倒れて動けなくなった芝居をして、不良グループが油断したスキに逃げ出したのでした。
先輩レスラーが痛そうにしている腕を調べて、「脱臼している。骨折の可能性もある。助けるだけでは済まない。傷害事件として警察に通報しろ!この娘は私が病院に連れていく。」と忠告した。
「弘子、なぜ、ここまでやられたの?」と脱臼されるまでやられた理由を聞いた。
「私の体ががっしりしていて、私たちのグループでは一番強そうだったので集中攻撃された。晴美も中心人物だったので、集中的にやられていた。早く助けに行って。」とその理由を説明して晴美たちを助けようとした。
警察に通報して、弘子から聞いた場所にみんなを助けに行った。
「何しているの!」とみんなを助けていると警察が到着した。
「あら、先日の刑事さん。」と挨拶した。
刑事は私に手を挙げて挨拶を返し、警官隊に指示して不良少年たちは全員検挙された。
晴美に手を差し伸べて立たせようとしたが、激痛で立てなかった。
刑事が、「頭も打っている。立たせないほうが良い。救急車を呼ぶからそれまで安静にしていなさい。」と指示して救急車を呼んだ。
一足先に病院に行った弘子も含めて頭を打っているために、念のため全員入院した。
入院したと聞いて見舞いに来た同級生からこの件が漏れて高校内部でも、「女性に乱暴を働くなんて最低!」と噂が広まり、やがて父母たちの知るところとなった。
PTAから苦情があった。
「わが校の不良男子生徒が傷害事件を起こしたらしいじゃないの!被害者は、わが校の女子高生だと聞いたわ。女性に乱暴するなんて最低じゃないの!現在も数人入院しているらしいわね。他の女子高生が怖がって登校拒否しているって本当ですか?そんな女子高生が転校して転校先でこの事を喋ったらどうなると思うのよ。世間にこの噂が広がり、この高校に進学する生徒がいなくなり廃校になるわよ。そんな噂が広まる前に、その不良たちを退学処分にして!」と激怒していた。
どうやら、女子高生を守り転校を防ぐ事により噂が世間に広がらないようにしようとしているようでした。
職員会議で、刑事事件まで起こした不良グループは庇いきれない。他の女子高生も怖がっている。数人は高校に来るのも怖くて欠席がちだ。PTAも騒いでいるので退学処分はやむを得ないとして全員退学処分に決まった。
数日後、晴美たちが登校してきた。頭に包帯が巻いていて松葉杖だった。
「詩穂、助けてくれてありがとう。おかげで靭帯が伸びただけで骨折してなかったわ。あのままやられていたらやばかったかもしれないわ。弘子も脱臼はしていたが骨折はしていなかったわ。弘子も今日から出席すると思うけれども、私と違って肩が脱臼していたので、三角巾で出席すると思うわよ。真由美、ノートとかうまく取れないと思うので、サポートお願いするわ。」と感謝してサポート依頼した。
「弘子から聞いたわ。集中攻撃されたそうね。ひどい目にあったわね。弘子が脱臼までして私に知らせにきたので、私も気付いてすぐに晴美を助けにいったのよ。あいつらは退学になったから安心して。」と心配いらないと安心させた。
弘子はノートだけではなく、食事もうまくできない様子でした。
みんなで、「はい、あ~んして。」とからかいながら昼食のサポートもしていた。
今回の件を心配した教頭先生が昼休みに様子を見に来て、その様子を見て仲間がサポートしていると知り安心した様子でした。
やがて、みんなの傷も癒えて通常の生活に戻り、レッドデビルも連戦連勝していた。
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そんなある日、レスリングジムにいくと、「詩穂、とんでもないレスラーから挑戦されたわよ。伝説の覆面女子レスラーピンクデビルよ。」と先輩レスラーから聞いた。
「ピンクデビルって、急に姿を消したので死んだとのうわさがあるレスラーよね?生きていたの?それとも偽物?でも昔の事だから、四十前後の小母さんじゃないの?」となぜ急にこの業界に戻ってきたのか疑問に感じて、本物のピンクデビルか疑っていた。
先輩レスラーが、「ピンクデビルは只者じゃないわよ。デビュー戦でチャンピオンに挑戦して数分で倒したのよ。甘く見ると大火傷するわよ。」と忠告した。
「どうせ偽物でしょう?試合で化けの皮を剥がしてやるわ。」とピンクデビルが生きているとは信じられない。偽物だと自分に言い聞かせていたが、内心怖かった。
翌日高校で晴美が、「スポーツ新聞見たわよ。ピンクデビルとかいう、すごいレスラーから挑戦されたらしいじゃないの。」と心配していた。
京子が、「私も見たわ。伝説のレスラーって書いていたけれども大丈夫?」とみんなで心配していた。
「心配してくれてありがとう。いままでだと、相手レスラーの事を前もって調べてから試合に臨んでいたけれども、今回はピンクデビルの情報がほとんどないのよ。昔の映像を見たけれども、どの試合も相手レスラーをあっという間に倒していて、何もわからなかったわ。昔ピンクデビルと戦った事のあるレスラーに聞くと、気がつくとマットに沈んでいて、いつの間に投げられたのか、今でもわからない。ピンクデビルは化け物だ!と言っていたわ。ぶっつけ本番でいくしかないわ。でも、突然姿を消したから死んだとの噂もあるのよ。偽物の可能性もあるのよ。偽物だったら、リング上で化けの皮を剥がしてやるわ。」と対策がたてられずに困っている様子でした。
ピンクデビルは偽物だと自分に言い聞かせていたが、内心心配で怖かった。その気持ちを吹き飛ばすためにも、毎日練習に励んだ。
先輩レスラーが、「詩穂、心配なのはわかるけれども、少し落ち着いたらどうなの?試合前からもうピンクデビルに負けているわよ。ピンクデビルの事は私も調べるわ。」と落ち着かせようとした。
ピンクデビルの情報が不明の中、やがて試合当日になった。
試合開始のゴングが鳴った。
ピンクデビルは腕組みして微動だしなかった。
私はピンクデビルに、プロレス技をかけようとした瞬間、あっという間に投げられた。
私は慌てて起き上がり、ロープを使い、勢いをつけて、ピンクデビルにぶつかった。
腕をつかまれて、そのまま突き飛ばされた。
何をやってもピンクデビルに全く敵わない。
第一ラウンドが終わり、晴美はリングサイドから、「どうしたの?詩穂!いつもの実力を発揮して!」と詩穂に発破をかけた。
「偽物ではない。本物のピンクデビルよ。強すぎるわ。私の反則技が全然通用しないわ。」と作戦を考えても浮かばずに困っていた。
第二ラウンド、りきみ過ぎた。
力いっぱいぶつかると、簡単に避けられた。
後ろを取られると慌てて振り返り、ピンクデビルにぶつかっていったために、体が浮いてしまった。
ピンクデビルは、「どうしたの?もっと腰を低くしないと重心が高くなり簡単に投げられるわよ。」と忠告した。
聞き覚えのある声だったが思い出さない。
その後も色々と忠告されて第二ラウンドは終わった。
第三ラウンドも散々だった。試合というより、色々と忠告されて指導されているようだった。
解説者は、「ピンクデビルは大技もださずにフォールを取りに行く様子もなく、レッドデビルを投げたあと手招きして、ただ、レッドデビルをからかっているだけのようですね。このままだとピンクデビルの優勢勝ちになりそうですね。しかし、ピンクデビルのフォームはきれいですね。まるで白鳥のようですね。」と試合の様子を分析していた。
結局、ピンクデビルの優勢勝ちで試合終了した。
レッドデビルになってから初めて負けた。
控室で悔しそうにしていると先輩レスラーが控室を訪ねてきた。
「詩穂、ピンクデビルの昔の映像を見ると、反則もして相手レスラーを完全に倒していたわ。しかし、今の試合は反則もせずに大技も出さなかったわ。詩穂を倒す様子が見られなかったわ。ひょっとして詩穂の知り合いではないか?」とピンクデビルの予想をした。
「ピンクデビルは試合中、私にいろいろと話しかけてきたわ。その声に聞き覚えがあったけれども、誰の声か思い出さないわ。」と考えていた。
「やはり、そうか。詩穂を倒さなかったのは、詩穂を大事に思っている人の可能性があるわ。心当たりはないのか?」と納得した様子でした。
「あの声は、どこかで聞いた覚えがあるけれども思い出さないわ。思い出したら報告するわ。」と考えていた。
その後、試合の事は先輩レスラーも含めて雑談して、先輩レスラーと別れて晴美と帰った
次回投稿予定日は、6月30日を予定しています。