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レッドデビル  作者: toyocat
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第十七章 お爺ちゃん、プロレスジムを開設

数か月後、良子から連絡があった。

「詩穂さん、あなたのお爺ちゃんも歳で杖が必要になり、プロレスは無理になりました。お爺ちゃんが日本でプロレスジムを開きたいと希望しています。メンバーは私とジャガー姉妹に加えて、レッドデビルとピンクデビルにも加わってほしいそうです。体制が整えば、以前の経緯から大日本女子大のレッドデビルを応援する会とプロレス研究会の指導も定期的に実施したいそうなので、女子大の近くを考えているようです。東京に住んでいる詩穂さんに、適当な場所を捜してほしいと、あなたのお爺ちゃんが希望しているわよ。」と依頼を受けた。

「女子大の指導は、今も私と母とでしているわ。ところで良子さん、あなたレッドデビルを応援する会の元会長だから、お爺ちゃんをそそのかしたわね。母の話では、お爺ちゃんは、“男が一度決めた事は最後まで貫く”といつもいっていて、一度決めた事は覆さないそうなのよ。仕方ないわね。」とあきらめて母に相談した。

「ええ、その件でしたら父から聞いたわ。詩穂、明日から二人で捜しましょう。」と母と場所を捜す事になった。

「そういえば、高校時代の同級生の順子が不動産屋に就職していると先日晴美から聞いたわ。連絡してみるわ。」と晴美にどこの不動産屋に就職したのか確認した。

翌日、順子から連絡があった。

事情を説明した。

「すごいメンバーね。場所は上司にも説明して捜すけれども、私の上司はレッドデビルの大ファンなのよ。ここに就職できたのは、私がレッドデビルと友達だったからなのよ。詩穂がレッドデビルとして依頼したほうが効果的よ。詩穂がここに来られる日時を教えて。上司にレッドデビルが訪ねてくると報告するわ。」と協力的でした。

日時を聞いた順子は上司に、「レッドデビルがプロレスジムを開く場所を捜しています。詳しくは三日後、ここにきて説明するそうです。」と伝えた。

三日後、私はレッドデビルとして母と一緒に順子が就職した不動産屋を訪ねた。

順子が上司を呼びに行っている間に、私と母は覆面を被った。

順子が上司に、レッドデビルとピンクデビルが来た事を伝えた。

上司は、「岸田君を採用して正解だったよ。」と喜んで対応した。

事情を聞いた上司は、「それにしても、すごいメンバーですね。女子大から徒歩で行ける範囲にプロレスジムをご希望ですか?女子大に執着する理由は何かあるのですか?」と確認した。

「私たちは女子大でプロレスの指導をしています。私たちが指導していると知った、プロレスに興味のある女子大生の入会が多く、人数的に女子大内部だけでの指導は困難になっています。私たちのプロレスジムでの指導も考えています。」と説明した。

上司は、「わかりました。女子大の周囲は喫茶店や食堂や本屋さんなどが多く、売りに出されている店も数件あります。あたってみます。数日中にご連絡します。」と返答した。

私と母は不動産屋に挨拶して、母は夕食の準備があるため、ここで別れてプロレスジムに向かった。

私は、所属するプロレスジムに事情を説明して、お爺ちゃんのプロレスジムが稼働したら、そちらに移籍すると説明した。

先輩レスラーが、「そんなにすごいメンバーだったら、私たちの指導もしてくれないかしら?」

「私のような、どん尻のペーペーに聞いても無駄よ。母ならある程度決められると思うわよ。」と教えた。

先輩レスラーが練習後、私の自宅まで来た。

ちょうど母も買い物から戻ってきた。

プロレスジムの事を詩穂から聞いた先輩レスラーは、「すごいメンバーですね。女子大の指導をしていると聞きましたが、私たちの指導もお願いできませんか?」

「女子大生は収入がないので基本無料で指導していますが、あなたがたは有料になります。よろしいですか?日に一人限定で、順番に来てください。手の空いているレスラーが指導します。それと、女子大生の練習相手にもなってください。この条件でどうですか?」と母が返答していた。

「指導料金はどのくらいですか?」

「具体的な金額は、他のメンバーとも相談させてください。」と即答を避けた。

母は、これから夕食の準備をするので、夕食はここで一緒に食べないかと誘った。

「いえ、ピンクデビルに作ってもらったらバチがあたると帰った。」

数日後、お爺ちゃんが良子とジャガー姉妹を連れて来日した。

最初に私の自宅まで挨拶に来た。

その日は休日だったために父も在宅していた。

私の父がジャガー姉妹に、「大きくなったね。以前ここに来た時には、まだこんなに小さかったのにね。」と手で、その時の背丈を示していた。

ジャガー姉妹はぎこちない日本語で、「ご無沙汰しています。といっても私たちもまだ小さかったので、よく覚えていませんが・・・でも、もっと若かったと記憶しています。あなたも歳を取られましたね。」と挨拶していた。

その後、色々と雑談して、順子にメンバーが全員集まるので、私が所属しているレスリングジムに来るように連絡した。

私は、母とお爺ちゃんとジャガー姉妹と良子と一緒に、私が所属しているレスリングジムに挨拶にいった。

あらかじめ連絡していたので順子も来ていた。社長もついてきていた。

順子が新しいレスリングジムに案内した。

私のお爺ちゃんをはじめ、全員納得して契約した。

お爺ちゃんが責任者として登録した。

翌日から、レスリングジム開設の準備が始まった。

準備しながら母が、「開設そうそう、後継ぎの事を考えないといけないわね。誰が二代目になるのよ。」とお爺ちゃんの歳を考えていた。

良子が、「当然、二代目はピンクデビルで三代目はレッドデビルでしょう。詩穂さん、早く結婚して四代目を生んでね。」と私を見て笑っていた。

誰も反対意見がなかったので、四代目は別にして、後継ぎはピンクデビルに決まった。

お爺ちゃんは、「開設早々、縁起でもない話をするなよ。俺はまだ死なないぞ。」と不機嫌そうでした。

プロレスジムのマネージャーとして、良子を慕っていた伊吹千代子を推薦した。

晴美を推薦する意見もあったが、千代子は学生時代、同好会の副会長としてマネージャーの経験があるので千代子に決まった。

良子が千代子に声掛けして、千代子が引き受けて採用になった。

プロレスジムの名前がまだ決まってないと知った千代子が、レッドデビルとブラックデビルが主力メンバーなので、千代子の発案で、プロレスジムは、赤黒レスリングジムと命名された。

やがて、開設準備もできて、プロレス関係やマスコミにメンバーとともに発表した。

すごいメンバーにマスコミも驚いて、突然姿を消したピンクデビルも復帰すると聞いて取材にきた。

マスコミは早速、謎めいたピンクデビルに取材した。

「すごいメンバーを集められましたね。彼女らに声をかけた理由は何かあるのですか?」とメンバーを集めた基準を確認した。

「集めたというより、家族でプロレスジムを開設しただけですよ。ブラックデビルとジャガー姉妹は父の愛弟子です。レッドデビルは私の娘です。」と説明した。

「すごい家族ですね。ひょっとしてあなたのお父様は、世界最強と噂されていた天下無敵のあの世界チャンピオンのデビルですか。」

「はい、そうです。ジャガー姉妹にはデビルの名前が入っていませんが、ブラックデビルには父のデビルが入っています。そこから考えても、父が、すごいレスラーだと認めたレスラーだと思います。」

「しかし、ブラックデビルは以前、マリのリングネームでレッドデビルに敗れていますよね。本当にすごいレスラーなのですか?」

「はい、父の説明では、あの時のマリは、ほとんど練習していなかったようです。それで世界チャンピオンになるとは考えられない。すごい才能だ。しかるべきコーチが指導すれば、考えられないようなすごいレスラーに成長すると絶賛していたわ。それで父がスカウトしたのよ。父が指導して、父が予想した通りすごいレスラーだと認めたために、デビルの名前が入っているリングネームをつけたのだと思うわよ。ブラックデビルの話がでたのでついでに伝えると、娘のレッドデビルは気付いていないようですが、引き分けになったのは、ブラックデビルが手加減していたからよ。ブラックデビルのほうが数段上だわ。恐らく私も敵わないと思います。」と返答した。

プロレスジム開設のお祝いに来ていた晴美が、「ちょっと、詩穂、今の詩穂のお母さまのインタビューは本当なの?」と信じられない様子でした。

「ええ、私も試合終了後、母から、なぜ、あの時、ブラックデビルは大技を出さなかったの?その他にも詩穂を倒すチャンスは数回あったでしょう?手加減されていた事に気付かないのは修行が足りないわね。と怒られたわ。」と苦笑いした。

「そうか。良子さん、そんなに強かったのね。」と感心していた。

私たちは、ブラックデビルを主力メンバーとして戦っていた。

母が、「詩穂も若いから頑張りなさいね。せっかく千代子さんが赤黒レスリングジムと命名してくれたのだから。」と私と良子が最前線で戦っていた。

大日本製造の社長は香の命の恩人だからと、大日本製造がスポンサーになり、金銭的以外にも色々とバックアップする事になり、弘子が担当者になった。

私の母も、もう若くないので、他のレスラーの指導が主な仕事になり、挑戦されれば、受ける程度だった。

しかし、いくら歳でも、いまだにピンクデビルに敵うプロレスラーはいなくて連戦連勝していた。

ピンクデビルの試合を中継していたアナウンサーと解説者は、「ピンクデビルはレッドデビルの母だという事はもう歳でしょう?恐らく、五十か六十程度だと思いますが、それで連戦連勝とはすごいですね。」

「そうですね。ピンクデビルだけではなく、ブラックデビルやジャガー姉妹など、赤黒レスリングジムに所属しているプロレスラーは全員、遠心力や反動などを上手く使い、あまり体力を消耗しない独特な戦い方ですね。だから、あの歳でも戦えるのでしょうかね。」

「歳だけではないですよ。ブラックデビルも長期戦になって、他のレスラーに疲れがみえても、まったく疲れずに戦っていますね。競合レスラーは、そこでブラックデビルに敗れるのですね。」

「あっ、私たちが雑談している間に試合終了です。相手レスラーは立てません。今回も勝者はピンクデビルです。」と放送していた。

「いや、立てないのではなく、意識がないようです。今、救急車を呼んだようです。歳とはいえ、さすが、伝説のレスラーですね。」と感心していた。


次回投稿予定日は、8月31日を予定しています。

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