第十五章 弘子、社長から頼りにされる
ある日、総理大臣直属の第四秘書から、弘子が勤務する会社の社長に着信があった。
大村社長が慌てて上司の下山部長を通じて弘子を社長室に呼んだ。
下山部長は、「吉川君、社長が呼んでいます。社長室に行ってください。」と指示した。
弘子は社長から、「吉川君、君、総理大臣直属の第四秘書と知り合いなのかね?」と確認された。
弘子は、「直接的には、第三秘書と親しくしていて、第四秘書を紹介されました。」と説明した。
社長は、「すごいね。君は、総理大臣直属の秘書を、何人知っているのだね?実は、第四秘書から連絡がありました。政治家は、色々とパーティーをよく開くらしいですが、自宅で個人的なパーティーを開く事もあるそうです。総理大臣にはお嬢様が二人いて、下のお嬢様の誕生パーティーを自宅で開くそうです。しかし、人数が少ないと、お嬢様に恥をかかせる事になるので、私と吉川君にも出席してほしいと依頼されました。」
弘子は、「ええ、その事は陽子さんから聞いたわ。陽子さんの知り合いと、その知り合いが所属する会社の社長に出席依頼したそうです。」と私も聞いていると伝えた。
社長は、「その陽子さんは第四秘書なのかね?」と陽子と言われても誰なのかわからない様子でした。
弘子は、「いいえ、陽子さんは総理大臣のお嬢様で、直属の第三秘書よ。陽子さんの顔は広いから、そのほかにもいろんな人がパーティーに呼ばれていると思います。私たちの仕事を広げるチャンスになるかもしれないわよ。社長次第ね。」とあとで言われないように、あらかじめ伝えておいた。
「そうか。それは頑張らないといけませんね。私は総理大臣やお嬢様とは面識がないので一人では入りにくいです。当日は総理大臣の自宅前で待ち合わせしましょう。」とこの機会に仕事の幅を広げようと考えていた。
その数日後、弘子は再び社長から呼び出された。
「吉川君、先日、総理大臣のお嬢様は顔が広いので、いろんな人がパーティーに来るといっていましたが、警察関係の人も来るのかね?」と確認された。
「ええ、陽子さんは警察関係者にも数人知り合いがいるようですが、何か事件に巻き込まれたのですか?」と確認した。
「実は、私の娘の香が京都旅行した時に、やくざに絡まれて東京に逃げ帰ってきました。しかし、そのやくざに身元を特定されて、東京まで追いかけてきました。秋葉原でそのやくざに追いかけられたそうだ。東京の地理は娘のほうが詳しいので、脇道や迷路のように入り組んでいる路地の中に、香の行きつけの店があり、そこに逃げたそうだ。娘がやくざに絡まれて困っています。」と相談した。
「わかりました。陽子さんに相談します。」と社長を安心させた。
弘子は陽子に相談した。
翌日、弘子は社長室に内線電話で、「吉川です。昨日の件ですが、陽子さんに相談すると誕生パーティーには京都府警捜査一課の係長も呼んでいるそうです。絡まれたのは京都なので、京都で絡まれる何かがあったのかもしれません。誕生パーティーで紹介して頂けるとの事です。相談すればどうですか?殺人事件や凶悪事件を担当している刑事さんなので頼りになるそうよ。」と助言した。
社長は、「そうですか。パーティーで相談します。いろいろとありがとう。」と感謝していた。
翌日弘子は再び、内線電話で社長に連絡した。
「吉川です。先日の件ですが、陽子さんが京都府警捜査一課の高木係長に連絡したそうです。本人から直接話を聞きたいそうですので、可能であれば、香さんもパーティーに参加して頂きたいとの事でした。立食パーティーなので、まだ、数人分余裕があるそうです。」と伝えた。
「吉川君、ありがとう。やくざに追いかけられたのがよほど怖かったようで、あれ以来娘は、やくざに見張られていると怖がって外出しようとしません。外に連れ出すいい機会なので、娘を連れて行きます。」と安心した様子でした。
弘子は、「そんなに怖がっているのですか?それでしたら、私の同級生のレッドデビルもパーティーに呼ばれています。念のために護衛を頼んでみましょうか?」と香さんが思った以上に怖がっていたので念のために手を打った。
「レッドデビルって、覆面女子プロレスラーのレッドデビルの事ですか?それは心強いですね。ぜひお願いします。」と安心していた。
パーティー当日、弘子は社長の自宅に電話して、詩穂とタクシーで向かった。
社長の自宅に到着すると、社長が娘と出てきた。
怖がっている香さんを後部座席の真ん中に乗せて、その両側に社長とレッドデビルが乗り、弘子は助手席に乗った。
総理大臣宅に向かっているタクシーの中で弘子は、「お嬢様、隣の女性は私の高校時代の同級生で杉山詩穂です。今日は覆面をしていませんが、覆面女子プロレスラーのレッドデビルです。刑事さんを紹介して頂くまで詩穂のそばを離れないでね。何かあれば詩穂が助けてくれるわよ。」と安心させた。
やがてタクシーは総理大臣宅に到着した。タクシーから降りると、香は詩穂にすがり、片時も離れなかった。
その様子を見て社長は、「父親をもっと頼りにしてほしいな・・・」と複雑な気持ちのようでした。
パーティー会場に到着した。
招待客が数人きていて、その後も招待客がきた。
やがて時間になり、総理大臣が挨拶した。
その後陽子が挨拶してパーティーが開始された。
陽子は政治家や財界人に挨拶して、その後、京都府警捜査一課の高木係長に挨拶した。
その後、高木係長を香と父親の社長に紹介した。
高木係長は警察手帳を提示して、「京都府警の高木です。先日聞いた話ですけれども、やくざがそこまでしつこいのは、何らかの犯罪を目撃したか、たまたまお嬢様が撮影した写真か動画に犯罪行為が映っている可能性があります。京都旅行したルートを教えて頂けませんか?」と絡まれている原因を探ろうとした。
香が思い出しながら説明した。
話を聞くと、そのルートで殺人事件があったために、仁和寺には何時ごろから何時ごろまでいたのか確認して捜査一課長に連絡した。
「一課長、高木です。先週の水曜日に仁和寺で発生した殺人事件の目撃者かもしれない人物がいます。死亡推定時刻を教えて頂けませんか?」と確認した。
その頃に香が仁和寺にいた事が判明した。
高木係長は事情を香に説明して、スマホで撮影した動画や静止画を確認すると、香が友達を撮影した動画の背景に殺人の瞬間らしき様子が映っていた。
香の許可をとり一課長に送信した。
担当の七係の小河係長に確認すると、殺人の瞬間の可能性が高いとの事でした。念のため、科捜研に分析依頼したので明日以降に結果がでますが、時間と場所と被害者の顔を考えると、ほぼ間違いないとの事でした。
動画には、殺人犯の顔は映っていませんでしたが、広美が事情を聞くと、犯行直前に香とすれ違っていて、その時、香のカバンが殺人犯に接触して、香が謝った時に顔をはっきりと見ていた。
香が京都旅行直後からやくざに狙われていて、先日けがした事など一課長に事情を説明して護衛の依頼をした。
高木係長が社長と香に説明した。
「先日、京都の仁和寺の裏門付近で殺人事件がありました。被害者の死亡推定時刻に、たまたまお嬢様がそこにいて、殺人の瞬間が、お嬢様が友達をスマホで撮影した動画の背景に映っていました。被害者がお嬢様に向いていて顔も映っていました。殺人犯はお嬢様に背中を向けていたために、殺人犯の顔は映っていませんでしたが、殺人の直前にお嬢様とすれ違っていて言葉もかわしています。その時、お嬢様が殺人犯の顔をはっきりと見ています。目撃者であるお嬢様の口をふさごうとしている可能性があります。殺人犯が逮捕されるまで、警察がお嬢様の護衛をします。婦人警察官二名と男性警察官一名の三人体制で護衛します。護衛の警察官が到着するまで、私が護衛します。それと明日の朝、警視庁で殺人犯のモンタージュ写真作成にご協力願います。お嬢様が移動するのは危険なので、覆面パトカーが迎えに行きます。」と説明した。
社長が、「護衛は、婦人警察官が二人に対して、男性警察官が一人だけですか?」と娘が襲われた時、大丈夫か心配していた。
「お嬢様が一人になった時に襲われる可能性があります。刺客は男性だとは限りません。女性の可能性もあります。女装している可能性もあります。女子トイレや女子更衣室などが危険です。男性が入れない、そのような場所にも入れる婦人警察官が中心となり護衛します。」と婦人警察官が護衛する理由を説明した。
詩穂が、「護衛は警察に任せますが、パーティーの間は私も気にかけます。」と協力を申し出た。
「先ほどから彼女が近くにいますが、警察関係者ですか?」と確認した。
弘子が、「いいえ違います。覆面はしていませんが、詩穂は覆面女子プロレスラーのレッドデビルです。お嬢様が予想以上に怖がっていたので護衛を頼んだのよ。」と説明した。
やがて、パーティーも無事終わり、招待客が順次帰った。
高木係長が、大人数の中にいれば暴漢が近づいても気付かない事があると忠告して、しばらく待って最後に高木係長と詩穂が両側に立ち、父親の社長が先頭を歩いた。
総理大臣宅をでたところで社長が突き飛ばされて、目出し帽の暴漢数名に襲われた。
高木係長一人では香を守るのは困難でしたが、詩穂が協力して暴漢数名を撃退した。
数名の暴漢は逃亡した。
詩穂が対応した暴漢は全員動けなくなったり気絶したりしていた。
高木係長は、「レッドデビルってこんなに強かったの?」と詩穂の強さに驚いていた。
「もう少し手加減しようとしましたが、暴漢が刃物を持っていて、その中の一人がお嬢様に投げようとしていたのでつい・・」と苦笑いした。
高木係長は、「ええ、それは私も気付きました。危ないと思った瞬間、詩穂さんがその暴漢を撃退したのでホッとしました。」と安心していた。
「ええ、その時、私は暴漢を投げられる位置にいませんでした。無理な体制で投げたので、暴漢の腕をねじるように投げたら、その暴漢の肩関節を外してしまいました。」と苦笑いしていた。
やがて、連絡を受けた警察が到着して、動けなくなった暴漢を、殺人未遂の現行犯で逮捕した。
到着した警視庁の刑事は高木係長の息子だった。
「隆一、彼女は京都で発生した殺人事件の殺人犯を目撃しているわ。今まで何度も暴漢に襲われてけがもしているわ。今も私たちがいなければ、彼女は間違いなく殺されていたわ。裁判までちゃんと守ってよ。」と肩を軽くたたいた。
隆一は、「ああ、先ほど陽子さんからも釘をさされたよ。」と彼女に何かあれば半殺しにされそうだなと感じていた。
この様子だと、帰宅途中も襲われる可能性があると判断して、タクシーではなく、覆面パトカーで送る事にした。
弘子が社長と香に、「帰りはタクシーではなく覆面パトカーで送ってくれるそうなので、私たちはここで失礼します。」と後の護衛は警察に任せて帰った。
翌日、覆面パトカーで刑事二名が香を迎えに来た。
刑事は警察手帳を提示し、モンタージュ写真作成の協力を依頼した。
警視庁で香が殺人犯のモンタージュ写真を作成して、その後、護衛の警察官を紹介されていっしょに帰った。
次回投稿予定日は、8月11日を予定しています。




