表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レッドデビル  作者: toyocat
13/18

第十三章 詩穂、就職する

私たちはやがて女子大を卒業した。

真由美は医学部なので卒業はまだだ。

それぞれ、商社や企業などに就職した。

私もレッドデビルだとばれないように、母とも相談して普通の商社に就職した。

配属された部署の課長は西垣課長で女性の課長だった。

上司が女性だから、世間でよく聞く上司のセクハラはなさそうね。と安心して仕事していた。

しばらくすれば、私の所属する部署には女子プロレスラー、特にレッドデビルのファンが多い事に社員たちの雑談から気付いた。

どうやら西垣課長がファンで、他の社員を巻き込んだようだ。

そんなある日、西垣課長から、「杉山さん、うちの部署には女子プロレスラー、特にレッドデビルのファンが多いのよ。明日はレッドデビルの試合があります。杉山さんもみんなと観戦に行きませんか?」と誘われた。

まさか、私が観戦するわけにもいかないので、「すみません、明日は私用がありますので遠慮させてください。」と断った。

他の社員が、「課長、杉山さんはいいところのお嬢様だと聞きました。箱入り娘の杉山さんは女子プロレスの試合なんか観戦しないでしょう。」と課長に進言した。

課長は、「いえ、私は親睦を深めるために誘ったのよ。共通の話題を作れば話も弾むでしょう?仕方ないわね。私たちだけでいきましょう。」とあきらめて帰った。

「それでしたら観戦しなくても、レッドデビルの事には詳しいので大丈夫ですよ。」と本人だから詳しいのは当たり前ね。と付け加えた。

他の社員たちは、「ほんとうに?課長が帰ってからそんな事を言うなんて怪しいわ。それでしたら、今度、レッドデビルの話をしましょう。課長は親睦を深めるのはいつもレッドデビルの観戦ね。レッドデビルの知り合いか何かなのかしら?詩穂さん、レッドデビルの事は詳しいのでしょう?何か知らない?」と私の事を疑っていた。

「知り合いでもなんでもないわよ。ただのファンよ。でも、課長はレッドデビルの事は知りませんが、レッドデビルは課長の事を知っているわよ。その証拠に、明日、レッドデビルに面会を求めればOKされるわよ。」

「そうなの?今日はもう課長は帰ったので、明日、試合会場で課長に聞くわ。それでレッドデビルに面会を求めるように頼むわ。」と課長が帰ってから、面会の話をするなんて本当かしら?と私を見て疑っていた。

私が表情一つ変えなかったので、試合当日、課長に進言する事にして今日のところは帰った。

    **********

試合当日、社員たちは試合会場に集まった。

西垣課長が、「今まで、何回かレッドデビルに面会を求めたが拒否されました。しかし、今回、試合終了後レッドデビルが面会してくれるそうよ。」と全員に伝えた。

その話を聞いた社員たちは、「杉山さんが言ったように、課長はレッドデビルの知り合いでもなさそうね。でも、本当に杉山さんが言ったように面会が許可されるとは思わなかったわ。なぜ杉山さんはこんなにもレッドデビルに詳しいのかしら?」と不思議そうでした。

「そうね。ただのファンのようだけれどもレッドデビルは何か知っているようね。」と雑談していると、やがて試合が開始された。

「しかし、レッドデビルって反則もして乱暴ね。倒れた相手レスラーを、止めに入ったレフリーを突き飛ばして更に攻撃しているわ。病院送りにされたレスラーが続出するのも当然ね。女性だとは思えないわ。誰なのかしら。」と雑談しながら試合を観戦していると、やがて試合が終わった。

レッドデビルがリングから降りると西垣課長に手招きした。

西垣課長は、「ちょっと、レッドデビルが呼んでいるわ。行くわよ。」と全員喜んでついていった。

控室で色々と雑談して、私は覆面を脱ぐかどうか迷ったが、結局覆面は脱がずにレッドデビルの正体は明かさなかった。

最後に西垣課長が、「あなたの声は、どこかで聞いた気がしますが、どこかでお会いした事がありますか?」と確認した。

他の社員たちも、同じく聞き覚えがあると訴えた。

「ええ、私は皆さんと、お会いした事がありますよ。私の正体に気付いたら声を掛けて下さい。」とお淑やかな私がレッドデビルだと気付くかしら?と感じた。

西垣課長は、レッドデビルと直接話ができて喜んで他の社員たちと帰った。

    **********

しばらくしたある日、職場から帰宅途中、先に帰った西垣課長が考え事をしながら歩いていた。

レッドデビルの声を、私以外に他の社員も聞き覚えがあるのは会社の関係者かしら?厨房の小母さん?掃除の小母さん?納入業者?それとも、社員?と考えながら歩いていると、注意散漫になり不良少年とぶつかった。

「おい!ババア!どこ見て歩いているんだ!」とからまれた。

胸倉をつかまれて締め上げられた。

「ごめんなさい、許してください。」と慌てた。

「謝ってすんだら警察はいらないんだ!」と突き飛ばされて転倒した。

不良たちは慰謝料を払えとカバンを調べていた。

その時に、こっちに歩いてくる女性に気付いた。

こっちに歩いてくる女性は杉山さん?現状に気付いて警察に通報してくれないかしら?と期待した。

しかし、電話する様子もなく、西垣課長が不良に絡まれているところまできた。

「杉山さん、倒れている私を見て何も感じないの?世間知らずの箱入り娘のあなたは何もわかってないのね。」と幻滅した。

「課長のほうが何もわかってないと思うわよ。そんな色っぽい座り方をして、こんな腰抜け相手に何をしているのよ。」と笑っていた。

不良少年たちは、「誰が腰抜けだ!俺たちをバカにしやがって、お前もこのババアの仲間か!」と切れた。

「女性に乱暴してカバンをあさっているのは腰抜けそのものね。」と笑っていた。

「黙れ!このクソガキ!」と私を襲った。

私は簡単に避けて、足を出すと、足を取られて転倒した。

「あらあら坊や、まだ、ちゃんと歩けないの?まだ伝い歩き、ちまちょうね。」と赤ちゃん言葉で笑った。

西垣課長は、「ちょっと杉山さん、先ほどからそんな事を言って不良たちを刺激しないで!」と焦った。

不良少年たちは、「もう、遅い!貴様、先ほどから俺たちをバカにしやがって!腰抜けかどうか見せてやる!」と切れて私を襲った。

私は、簡単に全員倒した。

不良たちは口々に、「あいたた~腕が動かない。」とか、「足が動かない。」と動けなくなった。

「数人集まらないと一人では何もできない腰抜けね。腰抜けが何人集まっても腰抜けよ。」と笑った。

    **********

西垣課長が、「嘘!強!」と驚いていると、そこへ会社の社員が来て、「課長!大丈夫ですか?警察に通報・・・あれっ不良たちを全員倒したのですか?」と驚いていた。

「いえ、私ではなく杉山さんが倒したのよ。杉山さん、何か格闘技の経験があるの?」と確認した。

「ええ、プロレスを少々。ところで課長、いつまで、そんなところに座っているの?お尻が冷えて痔になるわよ。」と雑談していると警察が到着した。

不良たちの人数は多かったが、母から、前後左右に何人いて、誰が武器を持っているか全体を把握しろと教えてもらった事が役に立った。

不良少年たちは、やばいと慌てて逃げようとした。

立ち上がろうとしたが、やはり、「あいたた~」と動けなかった。

刑事は覆面パトカーから降りた。

私の知っている刑事だった。

「あら、刑事さん、またあったわね。」

刑事は、私に右手を上げて挨拶して、警官隊に検挙するように指示した。

「こんな大人数を。また派手にやったな。お前ら相手を見てケンカしろよ。彼女が手加減してくれたからこれで済んだんだぞ。」と不良たちを検挙したが、人数的にパトカーに乗らないので護送車を呼んだ。

社員たちは、「手加減してこれなの?詩穂さん、そんなに強いの?」と信じられない様子でした。

護送車を待っている刑事は、「ああ、強いよ。レッドデビルが本気だせば、こいつら死ぬぞ。元女子プロレス世界チャンピオンを病院送りにして破った事は知っているだろう。生死の境をさ迷ったらしいぞ。本気だせば、女子プロレス世界チャンピオンでも死にかけるんだ。わかったら、もう二度とレッドデビルにケンカ売るような無謀な事はするな。署に連行する前に、警察病院で治療してからいくぞ。」と諭して、護送車も到着したので不良たちを連行した。

西垣課長や会社の同僚たちは、「えっ?杉山さんがレッドデビルだったの?そういえば声がそっくりね。だから、レッドデビルの試合は観戦できなかったのね。レッドデビルに詳しいのも当然ね。」と驚いて、これまでの私の言動を納得した。

    **********

「誰よ、詩穂さんがいいところのお嬢様だなんて言った人は?」

「私がいいところのお嬢様なのは、母であるピンクデビルが有名な財界人と結婚したからよ。私も総理大臣のお嬢様と知り合いなので、誰か紹介してもらおうかしら。」と笑った。

西垣課長が、「総理大臣のお嬢様って、まさか陽子さんなの?」と確認した。

「ええ、そうよ。私はたまに陽子さんとバイクでツーリングしたり、プールで泳いだりしているわよ。課長も陽子さんの事をご存じなのですか?」と世間は狭いなと確認した。

「ええ、陽子さんは、昔わが社の社員だった事があるのよ。私と陽子さんとは同じ部署だったのでよく知っているわ。」

会社の社員が、「えっ!?総理大臣のお嬢様が昔わが社の社員だったの?紹介して頂けませんか?」と信じられない様子でした。

「ええ、本当よ。当時は総理大臣ではなく官房長官だったわ。総理大臣に任命されてから、今まで、いろんな事で頼りにされていた陽子さんが、直属の秘書に任命されて退職したのよ。今のあなたの仕事は昔陽子さんの担当だったのよ。担当のあなたでしたら、昔の資料を持っているでしょう?秋山陽子のサインがあるから調べなさいよ。私は陽子さんが退職してからは連絡してないわよ。急に連絡するのもおかしいわ。取引先の津村あかりさんは、陽子さんとは女子大時代の同級生で親友らしいから、あかりさんに紹介してもらいなさいよ。」

「いや、あの堅物には頼みにくいわ。さすが、清廉潔白な総理大臣のお嬢様の親友らしいわね。」と陽子を紹介してもらうのは諦めた様子でした。


次回投稿予定日は、7月28日を予定しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ