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第三章ー3 アンノウン101・名無し

 それでも餅屋には敵わなかった。

 それも、当店ならば猶の事だ。


「包囲網は完全だな」

「警察で事故なら仕方ないですよね……」


 なんせそこに担当者がいるのだから対応までにかかる時間はほぼ無いに等しい。

 けど、担当したのはその警察署にいた人間では無いことは誰が見ても明らかだった。

 KEEPOUTテープに囲まれた小宮警察署は、大型のトラックが前方から減速無しで駐車したかのような状態で崩壊していた。その中にいた警察官が生きているとは思えなかった。恐らく、今周りにいる検察官たちは周辺の警察署から応援に来た者たちだろう。


「残念だったな。帰るぞ」

「えぇ……。せめて外の光景でも撮って、SNSに――」

「止めろ。検察官が睨んでるぞ」


 スマホで撮影を試みようとする涼花を、雅紀が止める。既に涼花みたいな野次馬が集まってきている上にTV局らしき人もちらほら見えるので、規制は更に強くなると雅紀は直感していた。警察は勿論だが、報道関係に絡まれるのもめんどくさいので、早々に立ち去ることを提案してその場から立ち去ろうとした。


「小宮警察署から何か連絡が途絶えたのは? トラックが衝突する前だったんだな?」

「はい。その際、先日起きた繁華街のホテルでの変死事件で死亡した葉山光の同行者と似た人物を保護したとのやり取りをしている最中でした」


 警察署内から僅かに漏れた情報に、雅紀と涼花はすぐに反応した。

 昨日のホテルの事件。

 それは、今日折川から新たに頼まれたアンノウン絡みでは無いかと疑っていた事件のことをさしていた。


「先輩。これある意味チャンスですよ? もし、ここでその少女の情報を引き抜ければ早く仕事が終わりますよ?」

「それなら後から警察に情報を提供してくれればいいんじゃないのか?」

「それまでまた缶詰にされるのは嫌ですから」


 言うことを聞かない涼花に呆れつつも、仕事を早く終わらせたいと言う話には魅力を感じた雅紀は、その案に乗ることにした。

 帰るように見せかけた雅紀と涼花は、建物の死角を取って警察たちの話を盗み聞ぎすることにした。


「で、その少女は一体どこにいるんだ?」

「分かりません。中尾警部によれば既に署内で保護していたようなんですが――それらしい人がどこにも見当たらないのです」

「この衝突事件の被害者は?」

「中尾警部とトラックに乗っていた運転手のみです。女性の被害者は一人も見つかっておりません」

「となると逃げた可能性が高いな……周辺に操作網を張るよう周辺警察に伝えろ。もしかしたら何らかの組織ぐるみの犯行かもしれん」


「アンノウン説が濃厚になってきたか」

「一人目は心臓発作。そして二人目は事故。哀れな運転手も含めると三人目。アンノウンの存在を知らない人にとっては組織ぐるみと考えるのが打倒かもしれませんね……」


 不可解な連続殺人。

 死因に共通点無しとなると、同一犯であったとしても一般的な殺人犯には到底出来ない特殊で、加えて足のつかない殺傷法を用いている所から今話題に上がっている組織性が疑われてもおかしくは無い。


「話の内容からするに、既に警察は被害者と同行していた人物の特定には成功しているようだな。それなら明日にでも警察に聞けば――おい、涼花。何をしてるんだ?」


 話の中から重要な点をまとめていた雅紀を尻目に、涼花は別のターゲットに目をつけていた。


「んっしょっと! よし、取れた!」

「取っていい物じゃねえだろ!」


 涼花がやっとの思いで得た物。それは監視カメラだった。

 元々警察署の入り口に設置されていた物だが、トラックの衝突の際に頑強なコンクリートごとぶち引き裂かれたようで、本来あったとしても何の役割も果たさない地面に転がっていた。


「これ見れば保護していた女性の姿も映ってるんじゃないかって?」

「証拠品だろ。勝手に取ったら問題になる」

「後で折川さんに頼めばどうとでもなるでしょう」


 国家機密どころか世界機密とも言えるアンノウンの存在だから使うことが出来る権限を私的に使っているようにしか見えないことに、雅紀は溜息を吐くしかなかった。


「と言うかそれだけで大丈夫なのか? 線切れてるぞ?」

「最近の監視カメラは何らかの衝撃でカメラや保存先が破損されても、最後の10分だけはカメラ内の頑丈な所に保存しておく機能が備わっているんです。ドライブレコーダーと一緒な原理ですよ」


 涼花の説明に納得されかかるが、雅紀は理性的に反論する。


「後でちゃんと説明しろよ」


 雅紀自身の理性がねじ曲がっているのは計算に入れないものとして。

 アンノウン192・ガラス片の怨恨 LV4


 調査報告

 アンノウン192は大小1センチ未満から20センチ以上のガラス片の集合体です。

 ガラス片は映し出した者の過ちが大きければ大きいほど大きく鋭いガラス片へと変化します。

 またガラス片を手に持った者が対象を刺す場合、その対象にどれだけ怨みを持っているかによってガラス片の大きさと殺傷力が変わります。

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