第五章ー1 アンノウン12・真実のペテン
雅紀はパトカーの追跡をしていたが、早々に見失うこととなった。高速に乗られてしまっては例え裏世界の人外エージェントであったとしても一般歩行者扱いとなってしまう。今警察関係はエンブレムと政府と言う大きな組織の元、秘密裏に動かされているが一般人の目は流石に掻い潜れない。
「あいつは何処から夢を持ち逃げする気だ? こっちからじゃ陸路しかない。羽田まで行く気か?」
安全かつ迅速に運搬するとなれば飛行機が一番だろう。
でも、フィリップス商会は敢えてその手を使わずに船、それもアンノウンを使ってまでの運搬を考えていた。非ずの扱いに対する弊害が原因であるのは間違いない。そうなればバウルクドは国外へ逃げることがかなり厳しくなるはずだ。
問題は、あいつがどこにいるか。の一点となるが、これが実に大きな問題でもある。
「ん? 着信、メールか?」
雅紀のスマホは既にマナーモードのバイブレーション機能に設定してある。
着信は相手が切るまで振動し続けるが、今回は二回でそれも区切りよく切れた。雅紀はメール以外の機能(ラインも含めて)は電話しかない、携帯電話でいいだろうとツッコミたくなるスマホを持っている。
そのスマホ型旧携帯電話ですら忘れていくことが多いのだから、携帯と言う意味を辞書で調べろと毎回佳澄に怒鳴られる始末である。
「相手は涼花か、何⁉」
メールのアプリを開くと題名と冒頭の部分だけが表示された未開封メール(開けるのが面倒だから放置した物が大半)の一番上に糸峯涼花の名前でメールが送られてきていた。
そこには題名『密告者』本文に『バウルクドの着信履歴』と書かれてあった。
すぐさまメールを開いたが、先程の冒頭部分『バウルクドの着信履歴』以外のことは何も書かれていなかった。
雅紀はすぐさまメールを閉じて電話帳から涼花に電話をかけた。その後のことを聞き出すためだ。
つい先ほどメールを打ったのだから絶対にスマホの前にいるはずなのに、3コール経っても出る気配は無い。
4コール目でようやく発信音が消えると同時に雅紀が涼花の返事を待たずに問いかける。
「密告者ってどういうことだ⁉ バウルクドって例の欧米野郎の着信履歴にハッキングしたのは分かるが、その中に知っている人物がいたのか⁉ どういう会話をしていたんだ⁉ 何が目的でそいつはあいつとコンタクトを取ったんだ⁉」
怒涛の雅紀の質問攻めは涼花のスマホからボリュームを下げても漏れだし、辺りの社員にさえ聞こえるほどの物だった。順を追って説明すべき所なのだが、まずはどれから説明すべきなのか、どの答えを求めているのかが分からない涼花は返答に困る。
「あ、あっ、えっ、えぇっ……と」
だが、答える前にまともに返事すら出来ていなかった。
涼花の不審な返事と、その間にも夢が何処かへ連れ去られていることに苛立ちを感じながら待っていた。メールではしっかりと伝えていたのに一体どういうことだ。
(…………あぁそういう事か)
「切る。メールで伝えろ」
そう言って雅紀は電話を勝手に閉じた。どうせ返事はほとんど帰ってこないのだから仕方ない。こんな時に珍しい人格が出てくるもんだ。
少し待っていると涼花からのメールが送られてくる。
題名『ゴート指示』本文『湾岸に行くこと』と書かれていた。文章を打つ時までシャイなのか。こいつは。
雅紀はすぐさま『会話相手は誰だ』と、メールを送り返した。メールを打たなければならないのは面倒ではあるが、普段よりも口数が少ないので要点だけを求めることが出来るのはいいことだと雅紀は思っていた。
返信してから一分くらいで返信が返ってきた。
そこには題名だけが記載されていて文章は一切書かれていなかった。
それでも、雅紀にとっては充分な成果であった。
と、同時に目を疑わざるを得ない返答でもあった。
題名『真壁 明』
それはつまり、明さんがフィリップス商会に情報を渡していた張本人だと言う事になる。
何故彼女が。何故エンブレムのTOP3に位置する人が。
何より――人型であり、過去のあるアンノウンにあれだけ親身になってくれた人が、このような行為に及んだのか。
雅紀は困惑していた。
だが、そうしている場合では無い。
「明さんに直接聞きだすか」
雅紀は直接的な解決策を思いつく。
もし、何らかの事情があれば素直に「はい」とは言わないだろう。けども、雅紀はそこまで頭が回るほどの理性を保ってはいなかった。
メールで涼花に『真壁の居場所は?』とだけ打って返信を待った。
待ち時間すら雅紀にとっては無駄に出来ず、当てもない道路を突っ走る。
15分ほどして涼花のメールが返ってきた。そのうち2分が真壁明の居場所の特定に使われ、残り13分がメールを打つことに使われた。
「なるほど。あそこか」
雅紀は特定された場所に身に覚えがあった。
つい先日行った場所だから先回りすることは出来る。雅紀は最短のルートを駆けていった。
アンノウン129・奪われた密輸船 危険LV3
調査報告
アンノウン129は全長20メートル。船底から帆の先までは40メートルもある巨大な木造船です。製作された時期は不明だが、内容物から、西暦400年頃には既に存在していたと考えられる。
アンノウン129には船内に入る扉が一つある。そこには数多くの遺物が残されている。
絵画、壁画、アンティーク時計、年代物ワイン。
腐ったかぼちゃ、発酵が進み過ぎたチーズ。そして、あらゆる時代の人種。
人間たちは全員生気を失っているが、動くことは出来る。食事を取ることも何かを話すことも睡眠をとることも無い。
ただ唯一行う行動がある。アンノウン129に敵意を見せる存在に攻撃をすること。
それは人間のみならず、密輸船内にある物であれば、どんな物でも身を投げ出してまで密輸船を守ろうとする。その結果、密輸船の船内で見つかった物、または者はアンノウン129の所有物として扱われていると結論付けられ、密輸船内部に存在する人間含めあらゆる物を、アンノウン129-2と名付けることにした。
現在アンノウン129は日本におけるとある事件により消失。1年以内に同型、同種のアンノウンが現れない場合当該等ナンバーをロスト(消失)とする。




