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ハル04


一頻りシエルと遊んだルノはそろそろ帰ると言い出した。



「俺の家バラすなよ?」

「失礼ね! 大丈夫よ。 ……あ! なんなら送って行ってくれてもいいのよ?」

「ざけんな、お前も大概目立つしな」

「ふふッ、私が美人だって認めてるのね」

「いいから帰れよ」

「はーい、じゃあまたね。 シエルちゃんもまたね」

「にゃ〜ん」



はぁー、やっと落ち着ける。 と思いきやシエルが首から下げていたボードに字を書き始めた。



”おなかすいた”



ああ、そっか。 昼飯食べてなかったもんな。



シエルの餌を用意して差し出すとまたボードにまた何やら書き出した。



”ハルってなまえ?”



今更かよ…… まぁ猫に名乗るつもりはなかったから名乗らなかったけどルノが俺の事そう言ってたし気になったのか。



「そうだ。 猫なのに人間の名前なんて気になるか? まぁお前はなんかその辺違うしな」


”しえるってなまえうれしい”


「ん?」


”ちゃんといきてるってかんじ”


「なんだそれ? 自分の証明的な何かか? ますます人間臭い奴だなぁ」



そんなこんなで次の日になり俺は曽根崎組の事務所にルノと向かう事になる。



終わるまで帰ってこれないと思うしシエルの世話どうしようかと玄関前で考えているとシエルがボードに書き始めた。



”いくの?”


「ああ、だけどお前の世話どうしようかなって考えてるとこ」


”わたしもいきたい”



行きたいって言ってもなぁ…… 猫同伴とかって。



”さみしい”



…… そうは言われても。 まぁ俺と一緒だと危険かもしれないけどその分見てはやれる、仕方ない。



俺は曽根崎組へ向かう前にシエルを連れてペットショップへ行き猫用のケージを買いに行った。



「狭いけどこれに入ってろ、持ち運びも出来るしな」



そう言うとシエルはケージの中へと入った。 ここで大人しくしてろよな?



事務所があるビルの前に着くとルノが待っていた。



「時間前だけど遅い! 遅刻するんじゃないかと冷や冷やしたわ! ってそれ……」

「悪い、ケージ買いに行ってたらさ」

「シエルちゃんも連れてく気?」

「仕方ねぇだろ、他に頼るもんもないし俺が見てる方が安全だろ?」

「まぁそれはそうね。 頼るもんないって私の事は頼ってくれていいのに。 信用されてないのかしら私」

「そんなんじゃねぇよ。 遅れて悪かったな」

「ふぅー、もういいわ。 シエルちゃん私も何かあったら守ってあげるからね」


”ありがとう”


「素直でよろしい! どっかのバカもこれくらい素直なら可愛げがあるのにねぇー?」

「誰の事だよ? ほら行くぞ」



事務所に入ると襲名の直前で尚且つ狙われているという事からかピリピリとした雰囲気になっていた。



「おうおう、来てくれたか!」



こいつが山石か。 いかにもな感じで強面のヤクザだな、ただ組長に推されるだけの貫禄はあるな。



「来てくれたも何も厄介人みたいに今まで遠ざけていてその前に殺されてたらどうする気だったんですか?」

「てめぇ! 伯父貴向かってなんて口聞きやがる!? 猫なんぞ連れて偉そうに」

「ま、まぁまぁ! このバカの非礼は詫びます、すみません。 ハル! 依頼人に失礼でしょ!」

「まぁいい。 腕が確かならな」



ルノが俺の頭を掴んで下げさせる。 元はお前の依頼人だろが。 って俺もなんかイライラしてるな、いかんいかん。



「すみませんでした、それで状況の方はどうなっていますか?」

「お前達を今まで呼ばなかったのは幹部会がある間は向こうも手出しは出来ないからだ、それを逆手に取って俺を殺せばそれこそ俺と争っている蛇沼が真っ先に疑いを掛けられるしな。 とまぁもう奴が俺を殺したいのは誰にとっても周知の事実だ、そこで動かないのもあくまで親父の肩を持っただけだ。 ここからは奴は好きに動くだろう」



ヤクザのルールってのは組によっていろいろあるが面倒な連中だ。 



「そこでだ、ワシも狙われるだけで済ますつもりはない、奴を奇襲したいと思う」

「お言葉ですがあちらもそのつもりかもしれません」

「お嬢ちゃん、それくらい俺にもわかっている。 そこを突くのだ、奇襲はするがあちらに出向くつもりはない。 奴は俺のスケジュールを把握しているだろうし。 こちらは準備万端にしここに敢えて奇襲させ奇襲を奇襲で迎え撃つ。 とくれば攻め入った奴を殺す大義名分も出来るというもの」

「なるほど。 もうそちらで算段をたてていましたか、ならばここが戦場になりますがよろしでしょうか?」

「構わんよ、奴の雇ったと言われる海神兄弟を始末し奴の首さえとれれば」



襲名まであと3日、勝負は今日か明日だろう。



「ひとついいですか? 籠城するとなれば狙撃などの危険もあります。 ここで迎え撃つと申されましたがわざわざ危険を犯して乗り込んで来るとも限りません、ですので……」

「心配はいらん、海神兄弟とやらは俺を殺すとなればここに攻め入ってくる他ない、奴は知らんだろうがここにはパニックルームがあるんでな。 俺はそこへ避難するつもりだ」



用意がいい事で。 そんなものがあるのを知らないとなれば業を煮やした海神兄弟はここに攻め入って来る可能性は高いがな。



ともあれ俺達は今日から泊まり込みで山石の護衛をする事になった。






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