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リジェクター・バトル   作者: 平菊鈴士
6/7

壊滅日本戦闘記 第伍部

  オープニング

『ジェイムズ兄弟』

 西部のアウトローとして『ビリー・ザ・キッド』、『コール・ヤンガー』等と並んで代表される兄弟。

 兄は『フランク・ジェイムズ』、弟は『ジェシー・ジェイムズ』であり、一般的に弟の方が知名度がある。

 二人は強盗団『ジェイムズ=ヤンガー・ギャング』を結成して強盗や殺人を繰り返していたが、ミズーリ州政府がジェシーに一万ドルの懸賞首を掛けると、ジェシーは強盗団に所属していたフォード兄弟に射殺された。

 一方フランクは自ら州知事に自首し、以降は平穏な生活を送った為に、ジェシーの悲劇が殊更際立った。

 アウトローでありながら、義賊としても有名であり、『ロビン・フッド』と重ねられる事もあって伝説化した。


 彼等は初の列車強盗をした人物としても知られている。1873年7月、アイオワ州のシカゴ・ロックアイランド太平洋鉄道を襲撃し、乗客と金庫から合計2,000ドルを奪ったが、その奪う乗客を手を見て選んだ。

 乗客の手を見て、労働者と女性からは金を奪わなかった事から、当時の新聞に「奪うのは労働者と貴婦人からではなく、シルクハットの紳士から」と言う記事が出された。



  第十三戦

「だから狙うのは男性のみって事か………。」

 和哉(かずや)さんは納得したとばかりに頷き、ゲイ・ボルグを握り締めた。

「それは希望的観測ってところですがね………。」

 眉間に狙いを定められている俺は、下手に動けなかった。せめての救いと言うならば、女性陣は狙われる可能性が低いと言う事だけ。

 それも可能性の域を出ない。


「兄貴、どうするよ」

「何がだ?」

「俺達の正体、一目で見破る奴だぜ。放っておいたらとんでも無ぇ障害になるだろうなぁ。」

 二人してニヤニヤと笑みを浮かべている。ふざけている様だが、眼光は鋭いまま。

 力に振り回されている素人では無い。むしろコントロールしている玄人だろう。この調子だともしかしたら………。

「おっと安心しなよ、妙に冴えてるガキ。」

「………どう言う意味だ。」

女子供(おんなこども)は狙えないからな。そう言う制限が掛けられてる。後ろの奴等は撃つ事が出来ん。だが………、」

 弟らしき男は銃口を上にして、発砲。その先には………。

「直接じゃ無きゃ、問題無ぇんだよ!!」


 不釣り合いの様に大きなシャンデリアがあった。


美南(みなみ)、上だ!!」

「分かった!!」

 まさに阿吽の呼吸。悟った美南はシャンデリアに向かって、『月光虚盾』を展開した。

 盾に当たったシャンデリアの破片は、煌びやかに散る。その中にいた美南達は、破片を浴びる事無く持ち堪えた。


「へぇ、こりゃ本当に驚いた。あれを防ぐとは………、なっ!?」

 感心している弟に俺は『縮地』で肉薄し、鳩尾を蹴りつけた。

「かはっ………。」

「テメェ!!」

 兄が俺に銃口を向ける気配を察した。拳銃を蹴り上げるモーションを取ったその時、

「らあっ!!」

 和哉さんがゲイ・ボルグを投擲して、拳銃を穿った。

「坊主!そっちは頼んだ!!」

「了解!!」

 一瞬の隙を突き、一対一の状況を作り上げた。


「………テメェ、不意打ちたぁ卑怯な真似するじゃ無ぇか。」

「ジェシー・ジェイムズの制限を、都合良く解釈してるお前に言われたか無ぇよ。」

 右手に倶利伽羅剣、左手に羂索(けんさく)を持ち、弟に相対した。

「ハッ、いくら神性の武器があろうが、拳銃と剣じゃ射程が違うんだっ!!」

 そう言うや弟は、後ろに跳びながら拳銃を構えて発砲した。

 軌道さえ読められれば、対処はさほど難しくない。今度は『震脚』を踏みながら弾丸を切り落とし、『活歩』で接近した。

「チッ。」

 舌打ちするや、今度は左手にナイフを取り出して投擲した。これを躱そうと半身を返した瞬間、ナイフが変化して()()()()()

「何!?」

 間一髪の所で羂索でナイフを巻き付け、剣で薙いだ。

 ナイフは、小型のコブラになっていた。しかし、ただのコブラでは無い。

「『ナーガ』か………。しかも呪符を()()()()な?」

「その通り、道本さん手製の呪符は便利だぜ。」


 ナーガ。インドの蛇神であり、仏教における八大竜王(など)の元となった蛇。コブラ特有の猛毒を持っているとされる蛇神であり、召喚させられる呪符を体内に取り込んでるならば、手足から瞬時に召喚が可能になる。

 呪符を飲む方法は、魔術等の適性が無い者が召喚魔法等を使える様にする方法の一つである。

 一見便利であるが、効果は長くて一日。使用頻度が高ければ一時間も経たずに効果がきれる、使い捨ての魔術。


 本来ならば、非常に厄介な魔術であるが………、

「相性が悪過ぎたな。」

「何だと?」

 そう、俺にとっては全く()()()()()()()魔術である。

 倶利伽羅剣を片手に構え、刀身に迦楼羅炎を纏わせた。

「不動明王の迦楼羅炎、迦楼羅の語源はガルーダ。そしてそのガルーダは、ナーガを()()。」

 刀身が一瞬赤く発光すると同時に、地面を蹴った。重突進の攻撃に紙一重で躱した弟は、二発発砲した。それを見越して左手の羂索を拳に巻き付け、ジャブで弾丸を打ち落とす。

「んな馬鹿な………、テメェ本当に人間か………?」

「随分な言い草だな。リジェクターならやってもおかしくは無いだろ。」

 左手に巻いた羂索を、今度は弟に目掛けて投げつける。羂索は淡く(あか)に発光し、意思を持つかの様にうねりながら襲い掛かる。

「うぜってぇんだよ!!」

 左足で自分の影を踏み鳴らした。すると影から、無数の小型のナーガが飛び出した。羂索目掛けて突進するナーガは、触れた途端に蒸発するかの様に消えた。

「数打ちゃ当たるもんじゃ無ぇよ。対魔の炎の上、ナーガ相手なら無い物も同然だ。」

「………くそったれが!!」

 弟は羂索の先端を撃ち抜いた。正確なる射撃に羂索は弾き返される。

「ハッ、弾丸は対象外なんだな!!」

「だからどうした。戦局は変わらんが?」


 弟は腰のホルスターから、もう一丁拳銃を取り出した。

「褒めてやるぜ。この俺、沢木(さわき)颯治(そうじ)に二丁使わせた実力をよ!!」


 弟、(いな)颯治は両手の拳銃を俺に向ける。本来であれば、素人の悪足掻きとも思える使い方だ。確かに弾数は増えるが、照準は定まり難く、かつ弾丸の速やかな再装填(リロード)が出来なくなる。

 しかし相手はガンマンのリジェクター。酔狂では無い事は容易に想像出来る。


 俺は羂索を振り消し、倶利伽羅剣を肩に担ぐ型を取る。そして、


「A red flame indicates a victory, and a blue flame indicates undefeated.」


『言霊』を唱えながら、()()左足を上げる。刃は迦楼羅炎を纏う。そして、


「………!!」


 刹那に無言の気迫を放ち左足を下ろすと、轟音と共に床が砕け、滑る様に肉薄する。

『震脚』からの『活歩』。


「なっ!?」


 颯治は目を剥いた。その直前、俺は再び『震脚』をして、身体を空中で回転させた。

 慌てる颯治の拳銃は乱発されているものの、狙いが全く定まっておらず、全て外れた。当たらないと悟った颯治は、拳銃を頭の上で重ね合わせ、防御姿勢をとった。

 迦楼羅炎は尾を引き、咄嗟の防御姿勢をとった颯治の拳銃に容赦無く刃を叩きつけた。


 拮抗は無かった。


 あっさり拳銃を二丁とも断ち切った倶利伽羅剣は、颯治の身体を袈裟懸けに斬る。

「ガアアアァァァ!!!」

 容赦無く颯治の身体を斬り裂いた刃は、威力そのままに床に斬撃の跡を激しく刻んだ。


火焔(かえん) 不要ニ斬(にのたちいらず)


 炎の爆発力による突進力、自身の体重、倶利伽羅剣の質量、回転による遠心力等が乗った刃は、即興のギロチンとなった。

 斬撃跡から発火し、たちまち颯治の身体を炎が無慈悲に包み込む。

「………。」

 悲鳴が切れた颯治の身体は崩れ落ちた。その時、颯治の口が僅かに動いた。

 声にならないそれは、俺にははっきりと分かった。


「………この………人………殺し………が………。」


 ………悟った。

 守る為とは言え俺は、魔物でも魔人でも無い『人間』を、手に掛けたんだ………。

 しかし………、


「俺の大切なものに手を出したんだ………。人殺しの覚悟なんて、とっくに出来ている………。」


 発想がおかしいのかもしれない。俺は初めて人を殺しても、罪悪感に苛まれなかった。



  第十四戦-和哉-

「テメェの相手は俺だ。」

 俺は戻って来た槍を掴み構えた。

「ハッ、俺に勝てると本気で思ってんのか?………馬鹿にするのも大概にしやがれ!」

 懐から瞬間的に抜き出した拳銃で、殆ど狙いを定めずに発砲した。それが眉間を完全に狙っている訳は、やはりリジェクターとしての力だろう。だが、


「………。」

 槍を一振り、それだけで弾丸は弾き落とされた。


「はぁ!?」

 当然だろう。今までこの一発だけで仕留めたのなら、この展開は予想出来なかった筈だ。

「………クソッ!!」

 後方に跳びながら三発、全て眉間に狙って発砲した。それすらも俺は槍で振り払い、弾き落とされる。

「申し訳無ぇが、俺には飛び道具の(たぐい)は通用しないぜ。」


『矢止めのルーン』。

 嫁のスカアハには及ばないが、俺のクー・フーリンもルーン魔術は使える。俺はこのルーンを、首に掛けてある家族写真を入れたロケットに刻んでいた。


 滑る様に接敵する。音の無い高速の移動に、兄は目を剥いた。

 本能の様に動いた拳銃を払い、逆に斬り上げる。

「クッ………!」

 僅かに踏み込み甘く、槍の切っ先は兄の身体を掠めた。

「行け!!」

 後ろ足で自身の影を踏むと、そこからコブラが飛び出した。

 噛まれる寸前で俺は、槍を回転させて薙ぎ払った。

 奴の影からコブラが立て続けに飛び出し、その全てを俺は薙ぎ払う。

「クソッ、何でだよ!?」

 一切当たらず、焦りだした。照準も正確性を失い始めている。

 (好機!)

 俺は更なる連撃を加えようと瞬時に槍を構え、突進して貫こうとした………その刹那。


「なっ!?」

 真横から剣が飛んで来た。


 間一髪俺は剣を弾き返すと、剣の飛んで来た方向へ向いた。


「ほう、流石はケルトの大英雄『クー・フーリン』を司るだけありますね。」


 呑気な声と共に、影から三十路(みそじ)頃の着流しの男性が近づいて来た。目を細めているが、眼光ははっきりと分かる程にギラついていた。


(とどろき)の旦那………。」

颯馬(そうま)君、ここは君には荷が重い。私が出よう。」

「いや、俺が………」

 その時、


「ガアアアァァァ!!!」


 坊主と敵対していた弟の断末魔が響いた。

「な、颯治!?」

 駆け寄りかけた颯馬の行く手を、轟と言う男が手で遮った。

「轟の旦那!そこ退いてくれ!!」

「待ちなさい。今行っては颯治君と同じ目になります。恨みは分かりますが、今は抑えて下さい。」

「くっ………。」

 颯馬に対してもこの発言力、この轟と言う男は只者じゃ無い。


「にしてもあの者、颯治君とまともに殺り合って傷一つ無いとは、中々の実力者ですね………。」

 顎に手をやる轟。その眼光は研ぎ澄まされながら、坊主を観察している。

「龍を纏う直剣にナーガを葬る炎、やはり『不動明王』ですか。」

「!?」

 アイツ、坊主の能力を一目で見抜きやがった!

 直感でこの男は危険だと悟った。俺は槍を構えた途端、

「なっ!?」

 またしても剣が飛んで来た。轟は俺には一切目もくれずに、剣を的確に飛ばした。剣である為なのか、『矢止めのルーン』が効果を発揮していない。

「そこで大人しくしてなさい。私は、貴方と敵対したくてここに来たのではありませんから。」

「なら、要件はその颯馬って奴の救出か?」

 漸く轟は、俺に目を向けた。

「それはあくまで「ついで」です。要件なんて、貴方には分かっているのでしょう?」

「………坊主か。」

 轟の口端が、僅かに上がる。


「彼と、同い年位の彼女ですよ。」

「彼女………嬢ちゃんの事か。」

「ええ。共に中国拳法を極め、身体能力は目を見張るものがあります。その上、同族の匂いがするんですよ。」


 同族?どう言う事だ?

 坊主と嬢ちゃんと同じく、この男と同じ点は………。


「その男、俺達と同じく神仏を司っているリジェクターですよ。」


 はっと目を向けると、坊主が既に轟と対峙していた。


「ほう、なら君にも私の神仏の見当は付いているんだね?」

「ああ。深淵を覗く者は、」

「「深淵に覗かれている。」」


 共にニヤリと口角を上げた。その対峙は、最早俺とは次元の違うものに感じられた。


「………解答は如何(いか)に?」

「古風な日本の直剣から察するに、刀剣の神『経津主神(フツヌシノカミ)』。」


 その解に答えるように、轟は右手を(あらわ)にした。すると右手は銀色に変色し、形を変え、直剣となった。


「正解だよ。私、『剣聖(けんせい)』こと轟 光留(みつる)は経津主神を司っている。」


 その声に呼応する様に、轟の背後から直剣が無数に現れた。

 それと同じくして、坊主の背後にも青炎の剣が現れる。

 確か『蒼炎剣界(そうえんけんかい)』と言った筈だ。


「へぇ、君も似た技を持っていたのかい?」

「材質は全く違うが、相殺は出来るだろうさ。」

 刹那、二人の目が見開かれた。同時に互いの背後の剣が、銀と青の軌跡を描きながら発射された。

 全ての剣先が衝突し、爆散した。

 最後の剣が衝突した瞬間、坊主は地面にひびを入れ、轟は右手を振り、同時に突進した。

 坊主と轟の剣が衝突した途端、かつて嫁との対決を遥かに上回る衝撃波と爆音が空間を揺るがした。

 その威力、建物自体が崩壊するかの如き。


 ………俺は、初めて神仏同士の本気の「殺し合い」を目の当たりにした。



  第十五戦

『経津主神』。

 日本神話の剣神・『武甕槌命(タケミカヅチノミコト)』と共に国譲りを行った剣神である。

 その元は、石上神宮(いそのかみじんぐう)の神剣・布都御魂(フツノミタマ)の神格化とされている。布都御魂は天皇の生命を増幅させたり、熊野上陸後に失神してしまった神武天皇を復活させたりしたと伝説が多い。

 一説によると経津主神の「フツ」とは、刀剣が物を斬る際の擬音語とされる。その威力を神格化したものが経津主神とされる事もある。故に経津主神は、剣神であると同時に軍神と言う存在でもある。

 また、香取神宮の守護神でもあり、境内に住み込んで木刀を振り続けた飯篠長威斎家直(いいさざちょういさいいえなお)は千日後、経津主神の霊験によって剣法の奥義を開眼したとされる。こうして完成された剣法が天真正伝香取神道流(てんしんしょうでんかとりしんとうりゅう)である。


「実に素晴らしい。私の『乱れ剣(みだれつるぎ)』を完全相殺させるとは、いやお見事ですよ。」

 光留は鍔迫り合いのまま褒め讃えた。

「全く、何言ってやがる。」

「ん?」

「あんなもの、ただの様子見に過ぎないだろうが。」

 分かっている。神を司るリジェクターの攻撃力は、()()()()では無い事を、何より自分自身が良く理解している。

「フフ………、やはり貴方は他の人とは見ているものも、リジェクターとしての格も違いますねぇ。実に楽しいですよ。」

「それは、過大評価し過ぎだっ!」

 剣を切り払う。逆袈裟を狙うと光留は、左手も剣にして迎え撃った。

 一撃、二撃、三撃と流れる様に剣を振り、その度に互いの剣がぶつかって火花が散る。その速度も徐々に増して、最早一秒に何撃振るっているのかも分からない。


 ただ、炎の剣と鋼の剣が流星となって衝突を繰り返していた。


「ハハハ、実に楽しい!これ程までとはね!!」

 光留は左右の剣を振り被って、俺を剣ごと吹き飛ばした。

 思わぬ力技に、俺はノックバックを喰らった。

「決して過大評価ではありません。貴方を倒すには、相討ち覚悟でないと不可能ですね。」

「なら、決死の攻撃をするか?」

「フフフ、何を言ってるのです?」

 細目を僅かに開き、俺を核心まで覗くかの様に見た。


「………貴方はまだ全力を、否、()()()()を出していませんよね?」


 息を呑みかけた。それを隠しながら問い返す。

「何故そう思う?」

「………貴方程の実力者ならば、不動明王の上の神仏を司る事も可能でしょう。例えば、破壊神とかね?」

「!?」

 まさかと思った。

 ここまで核心を突かれるとは。

 誰にも話したくない秘密。俺が、…()()()()()()破滅の秘密。

「………何故知っている?」


 背後がざわめき出した。

「お、おい坊主。破壊神って何だ?」

 (………止めろ。)

「どう言う事なの、直ちゃん?」

 (………話すなっ。)

「おや、もしや誰にも話してないのですか?彼の不動明王、派生すればあの………」


「黙れっ!!!」


 思わず逆上し、鞘に収めない抜刀の構えをとる。その倶利伽羅剣から火柱を上げると、そのまま光留に振るった。

 刃から、ホールの端まで届きそうな程巨大な炎の斬撃が放たれる。


『極奥義・天空断(あめのからたち)


 神力を極限まで刀身に溜め 、斬撃を飛ばすと同時に迦楼羅炎に合成させて放つ一撃。魔物は勿論、神すらもただでは済まないであろう正真正銘、破壊の斬撃である。

 特大の炎の斬撃は、俺の怒りに呼応する様に唸りながら光留に襲い掛かる。

「!?………クッ!!」

「なっぎゃああああ!?」

 まともに喰らうも、光留は剣を振り回して自分に迫る炎をかき消し、大火傷だけは免れた。しかしその後ろにいた颯馬は為す術なく、炎の中に消えた。

 斬撃はそのまま建物の玄関側を文字通り、消し炭にした。


「はぁ………はぁ………はぁ………。」

 生き残った光留は片膝をつき、肩で息をしながら辛うじて意識を保っている様だった。大火傷は無いものの小さな火傷はあり、炎の熱気を受け、剣を全力で振り回した事で疲労が更に蓄積している様だった。しかし、そんな事はどうでもいい。

「黙れ黙れ黙れっ!!!俺の秘密に勝手に触れんじゃ無ぇよ!!!」

 底から湧き上がる様な怒り、それを感じた。


「ふむ、これは考えを改める必要がありそうですね。」

「何!?」

「貴方の危険度を、ですよ。」

 光留はゆらりと立ち上がる。

「私よりも上の実力者は、まだまだいます。最たる人は、執行者の(つじ)さんだね。」

「………何を司る?」

「それは答えられません。けど、ヒントなら出しても良いでしょう。貴方なら意味の無い事ですが、ね。」

 所々に出来た傷や火傷をものともしない様に直立する。

「行うのは、『七殺(ななさつ)』ですよ。」

 そう言うや否や、


「オン!!!」


 真言の式句を唱えて、その場から消えた。


「何だと!?………逃げられたか。」



  エンディング

 桃源館内のとある廊下にて………。


「はぁ………はぁ………。」

 壁に肩を着き、息を切らせながら轟は長い廊下を歩く。その先に、

「あら、『剣聖(けんせい)』とは思えない程の惨敗っぷりじゃないの?」

 彼よりも十歳程年若い女性が、悠然と腕を組みながら立っていた。

「………これはこれは、………宗像(むなかた)さんでは………ないですか。」

 疲れ果てた顔に薄く無理矢理笑みを浮かべ、相手を見た。

「貴方程の人がここまでやられるなんて、相手は相当の強者なのね。」

「………ええ、………彼の力は………反則級ですよ。………沢木兄弟も………完敗です。」

「彼等なんて、貴方からすれば素人同然じゃない。たかがガンマン風情、勝てて当然よ。私は、貴方程の実力者がそれ程までにやられている結果に驚いているのよ。どんな能力だったのかしら?」

「………これはまた、………彼等には手厳しい………ですね。」

 沢木兄弟に同情する口振りではあるが、轟自身にも彼等を悔やむ様子は無い。

「………彼の能力は………『不動明王』。………迦楼羅炎を扱い、………『魔』の定義を………持つものに対しては………絶大な力を………放ちます。」

「成程。道本さんのナーガが通用しなかったのは、それが理由ね?」

「………その通り………ですね。………それでは………次は貴女が………行かれるのですか?」

「ええ、そのつもりよ。貴方が負かされた相手、どんな坊や達か気になるわ。」

 カフェにでも行くかの様な軽い足取りで、彼女は轟の横を通り過ぎて行った。

「………想像以上ですよ。………貴女も………気に入る筈です。」

 彼女の背に投げ掛けると、轟はその場に座り込んだ。

「フフッ………実に楽しい。………敗北が楽しい。」

 今度は自然と笑みが込み上げた。

「………さぁ、どうする?………彼女の能力は、………厄介ですからね。」


 暗い廊下、轟は今後が楽しみとでも言うかの様に、声を押し殺しながら笑った。

 さてさて、漸く話を投稿出来ました。怒涛の日常に、休日は完全にだらけてしまい、遅れに遅れました。

 今回は日本神話において、多少なり知識がある人からすればすぐに分かる神、「経津主神(フツヌシノカミ)」を登場させました。

 刀剣の神として知られており、今回新たな刺客として考えた時に真っ先に「剣」要素のあるこの神を思い浮かびました。

 ただ、これって結構不敬な事かもしれませんね………。


 そして直輝の新技登場!!

 奥義二連発は、書きながらわくわくしてました!

 ………年甲斐もなくはしゃぐとは、我ながら何やってんだか。


 そしてそして初登場の宗像(むなかた)

 彼女の能力は、(とどろき)も一目置くものです。その能力は如何に……!?


 最後に、ここまで投稿に時間がかかってしまい、大変申し訳ございませんでした。

 次も遅くなるかもしれませんが、気長にお待ち下さい。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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