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8 友人たち

 評価、ブックマークありがとうございます。

 この物語は皆様の優しさに支えられております。


 視点戻ってエメラルドです。


 人間関係引っ掻き回し隊のメンバーふたりの紹介です。


 ルビーのお茶会に行ってからお出かけも仕事も気分が乗らず、ほぼ全てをキャンセルしてゴロゴロしていた時だった。


「エメラルド様、エレスチャル様とサルファー様がいらっしゃってます」

「え? エレス様はともかくサルファーも?」

「はい。突然の訪問で申し訳ないとおっしゃっていますが、いかがいたしますか?」

「別に隠れているわけじゃないからいいわよ。そうね、天気がいいしテラスにご案内して」


 エレスチャルは隣国の第三王子でゲームで選択できる人物だ。金髪に赤茶の目。背は私より低くて歳下。可愛くて元気のいい、いわゆるショタ枠。いつもフリルやレースの多い服を着ている。

 この国には留学中ということになっているが実際は同盟を結んだ際の人質だ。エレスチャルがこちらに来る代わりに王弟のひとりが隣国に「留学」している。

 ゲームでは留学中としか出てこないけれど。


 サルファーはエメラルドの幼馴染でエメラルドの兄と同じ歳。父親が急逝したのですでに爵位を継いでいる辺境伯だ。普段は王都から離れた領地に住んでいるのでほぼ会うことはない。もちろんゲームで選択できる人物だ。

 黒髪に金の目、目つきが悪いいわゆる俺様枠。なぜかエレスチャルと仲が良い。

 サルファーは子供の頃は王都に住んでいた。年齢は多少違うけれどサルファーとエメラルドとエメラルドの兄とジャスパーの四人が幼馴染だ。


 ゲームでサルファーを選択すると城内でルビーと偶然会って、強引に自分の領地に連れて行っちゃうのよね。正直、いい迷惑よね。

 今はジャスパーを選択した展開になっているからそんなことは起きないんだけど。


 ……自分の幼馴染が誘拐犯にならなくて良かった。


 身なりを整えてテラスに行くと、男二人はすでに軽食を取っていた。

「よう、傷心の姫君」

「エメちゃん久しぶり!」

 サルファー、エレスチャルの順に声をかけられる。

 公爵令嬢らしく礼をしてから席に着く。


「ごきげんよう、エレス様。サルファーは久しぶりね。傷心の姫君って何?」

「王太子の婚約者様は王太子の浮気に大変傷つき気鬱の病にかかったらしい、という噂を聞いてきたんだが?」

「何それ?」

「元気そうで何より」

 サルファーは鼻で笑って紅茶を飲む。

 サルファーとはしばらく会わなかったけれど、違和感なくいつも通りに会話できるのは少し嬉しい。


「エメちゃん元気出して? このサンドウィッチ美味しいよー。ベーコンかりかりだよ!」

「エレス様、お気遣いありがとうございます。お気に召したのであればお持ち帰り用に包ませますわ」

「わーい!」

 エレスチャルは万事こんな感じだ。語尾を伸ばす癖があり、私の事を「エメちゃん」と呼ぶ。しかしゲームでは腹黒なところがあった。幸い私は今の所その部分を見たことはない。ルビーに対してだけなのかもしれない。


「つまり二人とも、私がジャスパー様の浮気に傷ついて引きこもってると思って来たの? まだ引きこもって一週間なのに?」

「今まで毎日どこかしらに出掛けてた奴が突然引きこもったら噂になるだろ」

「お城でもすんごい噂になってたよー? 王太子殿下も真っ青になってたって聞いたー」

「一週間前に例の伯爵令嬢とジャスパーが密会しているのを見てショックで寝込んだんだろ?」

「ふたりが駆け落ちの話をしているのを聞いちゃったってー?」

「扇を投げつけて泣いて帰ろうとしたところをジャスパーに言いくるめられたんだろ?」

「ルビーちゃんとは次のお茶会で決闘するんでしょ?」

「なんなのその話……」

 次々と上げられるふたりの話に私は頭を抱えた。何一つ真実がない!


「噂の出どころはどこなのかしら。ルビーさんはどうしているの?」

 今の所私は彼女は無害だと思っている。あの様子だと無理やりジャスパーを奪おうとはしないだろう。

「伯爵令嬢もぱったりと外出しなくなってる。決闘の準備だろ?」

「何一つ真実入ってないから!」

「そなのー?」

 エレスチャルはこてんと首を傾げる。この子は何を考えているのかよく分からないけれども、サルファーは面白がっているみたいね。そうよね、辺境伯にとってはとても面白い余興だわ。


 私は紅茶を一口飲んでから考える。

 今聞いた噂は全て真実ではないけれども、多分、一部分を見た誰かが勝手に妄想を広めたのだ。

 その人物は私たちが別れる部分だけを見たんだろう。「扇を投げつけて」という部分、多分マリウスが私に扇を返すのを見……


「あら? マリウスが登場してない」

『マリウス?』

 男ふたりがハモった。

「密会していたのは私とルビーさんで、ジャスパー様が迎えに来て帰ったのが真実なのだけれど、コントルシー家のご嫡男もその場にいらっしゃったのよ。彼が私の扇を拾って返してくれたのだから、その噂の中に彼も登場していいと思うのだけれど」

「エメちゃんルビーちゃんと付き合ってるの!?」

「ジャスパーが邪魔者だったのか」

「私の言い方が悪かったけど今の話で注目がそこ!?」

「だってその嫡男知らねーし」

「貴族全員のお名前なんて覚えてなーい」

 マリウス、一般的にはそんな知名度なのね……

 単純に知名度のせいでマリウスが登場しなかったのかしら。


「はいはーい! ぼく分かっちゃったー!」

 エレスチャルが手を挙げて立ち上がった。

「そのコンポルシー嫡男が王太子殿下とエメちゃんを別れさせるために噂を流したのでしたー!」

「コントルシーな。そんなんあからさまに疑ってくれって言ってるようなもんじゃねーか」

「彼が私とジャスパー様を別れさせる理由がないわ」

 マリウスはルビーが好きなんだもの。私とジャスパーを別れさせるのはおかしい。


「大体こういうミステリーの犯人は必ず自分に得があるから犯行に及ぶんだ」

「サルファー? 小説の読みすぎじゃない?」

 ミステリー勧めたのは私だけれども。

「得してる人って誰ー?」

「コントルシーが登場しないのはあからさまに疑ってくれって言っているようなものだ。そういうのはミスリードで犯人じゃない。コントルシーが疑われて得する人物は誰だ」

「え?」

 ちょっと何を言っているのか分からない。

「つまり犯人はジャスパーだな」

「王太子殿下腹黒ー!」

「お前に言われたくないだろ」

「でも殿下真っ青って聞いたー」

「演技演技。犯人ってのは演技が上手いもんだ」

「さすが至宝の王太子ー!」

 ふたりとも楽しそうで何よりである。

 でもそんな噂が流れているなんて知らなかったわ。


「でもエメちゃんと王太子殿下が別れて喜ぶのは伯爵令嬢なんじゃないのー?」

「ジャスパーが令嬢に惚れたって噂も有名だな。つまりジャスパーと令嬢の共謀か」

「ねえその茶番、まだ続けるの?」

 ちょっとため息をついてしまう。


 噂を整理すると根本的なものはひとつだ。

 ジャスパーがルビーに惚れていて私とは破局しそうってことよね。

 今後その通りになりそうだから複雑な気分だわ。

 ふたりが来てくれたことに浮上した気分もまたちょっと下がってしまった。


 私はもう一口紅茶を飲んで、ため息をついた。



 人間関係引っ掻き回し隊のメンバーはあとふたりいます。


 個人的なことですが「攻略対象」という言葉があまり好きではないので別の言い方をしています。

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