七人の王女 長女→ゴリ 次女→四角い 末女→かわいい
「王には七人の王女がいましたが、彼女たちはたびたび不幸に見舞われていました。危うく大事故になりかけた王女もいれば、実際にケガを負った王女、なかには命を落とした王女もいます。有力でもない地方の弱小領主に嫁いでいったり、遠方の修道院で修道女になったりと、不相応なかたちで城を出た王女もいます」
「姉妹の王女たちに降りかかる災難ねえ。呪いでもかけられてるんじゃないのか? 悪い魔女とかに」
デネブはいいえ、と首を振る。
「それら不運にあっていない王女が三人いました。長女のゴネル=ゴリル、次女のジ=エンガ、そして末女のコーネリア。彼女たちも危険な目にあったとされていますが、実質的にはみんなまぬがれています」
「んじゃ、そいつらがほかの四人に手出ししたのか。どういう理由で?」
「王都で黒い噂がささやかれたのは、このうち長女と次女のふたりです。長女のゴネル=ゴリルと次女のジ=エンガはたびたび、身近で働く男、庭師やコックなどに乱暴狼藉を受けたと主張し、彼らを処刑していますが、どうも事実でなかったようです」
狂言だったってことか、と尋ねるとデネブは、おおむね、とうなずいた。
「長女・ゴネル=ゴリルは、その、なんというか、容姿的な魅力にとぼしく、襲うようなもの好きの男はそうそういないかと。口さがない民は『ゴリルというよりゴリラ』『ドレスを着たゴリラ』と」
エネ◯リくんみたいな名前だな、と思ったら本当にゴリなのか。
「次女のジ=エンガも、どういえばいいのか、全体的にレンガみたいな角ばった体型で……」
どんな体型だよ。え、そいつゴーレムかなんか?
「民からは『四角い』『かたそう』『王都の入口警備によさそう』とこちらも不評でして」
だからゴーレムじゃねえかそれ。国民の王家に対する敬意とか全然ない感じ?
「上の王女ふたりは自作自演説が有力ですが、末のコーネリアは被害を受けてもおかしくないとされています。公式の場に姿を見せたことがなく一般には知られていませんが、王城に勤める者の話では、愛らしく美しい顔だちだったとのこと」
「なあ、よくわからないんだけど、どうして長女と次女はほかの王女を狙ったんだ? 仮にも実の姉妹だろ。ガチで殺しにかかるなんて」




