正妻戦争勃発かっ?
「あっ、俺なーんか今、無性にそのリオデジャネイロ?の街とか、クルセイダーズとかの話が聞きたい気分になってきたなあー。あー、すっげー聞きてー。かつてないほど超知りたくなってる。そぉーだー、デネブ、この機会にちょっとそのジャネイロとクルセイダーズについて詳しく教えてもらえないかなあー」
俺は、語尾に(棒)とつきそうなあからさまな棒読み口調でめいっぱいのごまをすり、話の水を向ける。アルくん、超うっとーしー、とソアラが明るく笑った。うるさい、自分でもちょっと思ったわ。デネブはほどほどにどん引きしている。
「王都・LeoとブラジルのRioはスペルが別ものですからっ。あと、クルセイダー『ズ』じゃありませんから」
ぶつぶつ不満げな口ぶりではあったが、ステータスに表示されない機嫌の値はどうやら若干、回復した様子だった。
デネブは「リオは、周囲一帯を治める王が、代々、継承する名で――」と語りはじめる。
やれやれ、とほっとするも――
「リオ壊滅のことならだいたい知ってるからいいよー」
すぐに邪魔が入った。ほかでもない、天真にして爛漫の妖精娘だ。「そんな辛気くさいのより冒険の話しようよ」
ソアラは「逆方向だけど、少し近いところにあるエリースって街の付近で『SSS』っていう超レアなモンスターが」と空気を読まない発言で、俺の努力をひっくり返しにかかる。てかそれ、あのスーパースペシャルなやつだろ。著作権的にNGなアレ。
青い巨塊に追いまわされた記憶に俺はげんなりし、デネブの機嫌度はまた下がった。
強硬な仕草で八つ当たり気味に、デザートの強固な果実を不機嫌そうにかじって言う。「聞きたくないならあんたひとりで宿屋に帰れば?」
むだに棘のある魔法少女の態度に「うん、そうだね」と金髪ロングのエルフは立ち上がる。




