街が壊されるとみんな困るし俺も早く帰ってアニメに追いつきたいしがんばって魔王倒そー
まあそっちは置いとくとして、この魔法少女のご機嫌とりをしないと。んー、つっても俺はなあ。
「まだここへ来て日が浅いし、デネブの言うような葛藤的なのはあんまないっつーか」
とりあえず正直な感想を述べてみたが、目に見えてご機嫌角度が傾斜、ななめっていく。
いかん、パーティーメンバーの忠誠度が下がると、戦闘で命令を無視するとかパーティーを離脱するとか攻略難度が上がってウッフ~ンなイベントが発生しなくなるとかのさまざまな不都合が生じる。
ここはリーダーシップを発揮してなだめすかそう。
「ま、まあ、街が?壊されると?住んでる人たちも?いろいろなんやかんや?困るし?よくないし? お、俺も早く日本に帰って見逃してるアニメに追いつきたいし、うん、みんなでがんばって魔王を倒そー、おー」
右腕をL字に掲げ、魔王討伐の意気込みを示すことでお茶を濁そうと試みた。が、第一使徒にはまあまあの勢いで不評。「なんですか、それ」
くせなのか、必要もないのに手探りで【まじかる☆ステッキ】を取ろうとする。物騒かよ。
アルくん女の子のあつかいへたすぎ、と耳長娘が酒飲みながら陽気に笑う。悪かったな、こちとらだてに二年の引きこもりと二十年の童貞やってないからな、年季が違うんだよ年季が。
ていうか、こいつに水さしたおまえに言われたくないわ。
「あの日」とデネブは、タクトの代わりに振るうにはだいぶ不穏当な杖へ伸ばした手を引っ込め、じとりと俺を見る。「リオの街でどんな惨劇が起こったか。知りもしない勇者様に軽々しく流されると、少し、不愉快です」
まずいぞ、まずまずのテンションでまじおこぷんぷん丸になりつつある。放置してると、この間のトンビみたく火の鳥-凰鳳編-な目にあって、酒のつまみにちょうどいい感じの丸焼きにされてしまいかねない。機嫌パラメーターを回復せねば。
 




