俺の知ってる異世界だと女の子たちが主人公を取りあうのが相場
表へ出ると辺りはすっかり日暮れどきだった。
宿屋の面している大通りは閑散として人はまばらだ。建物が低いため茜色の断片が見える。東京ならもう乱立するビルの向こうに消えているだろう。街灯がないからまだ宵の口にもかかわらずやたら薄暗い。
昔、一回だけ行ったことがある、おふくろの出身地を思い出す。さすがに街灯はあったが、百メートル間隔ぐらいとありえないほど離れてて、あれ、ここだけ昭和かな?俺タイムリープしてね?レベルの田舎だった。
この異世界はそれ以下。現代社会みたいに道なんて整備されてないから、馬車の轍やらなんやらで足を引っかけそうになる。これで大きめの都市なんだもんな。日本の中枢(のちょい端(のさらにもうちょびっとだけ端っこ))から来た身としてはこの感覚の違いにいまいちなじめない。
こっちのほうにおいしいお店があるんだって、と夕闇迫る街角を先ゆく妖精娘と、後方からまだ紫色のなにかを発しているコスプレ魔道士。ふたりの使徒に前後を挟まれて歓楽街に向かう。両手に花で酒場へ繰り出すってのにテンション上がらないのはどうなんだ。
新規加入したエルフ耳は、愛想こそ振りまいているものの、どうも俺をイチャコラの対象としてみる気はなさげだ。年下然とした立ちふるまいをしているようでいて、実年齢相応の視点から鼻にもかけてない感じっていうのか。
一方のレイヤー。こっちも、俺に対する風あたりがだんだんきつくなってて、やりづらい。
当初は従順で俺に全幅の信頼を寄せていたのに、いつの間にか不信感をにじませるようになってる。親父が買う株よろしくきれいな右肩下がりだ。そのうちオタサーの姫みたいにご機嫌とりが必要になりそうで気がめいる。
俺の知ってる異世界だと、主人公をめぐってそろそろ女の子が取りあいのひとつも始めるのが相場なんだが。今んとこキャッキャウフフのキの字も見えてこない。
俺は俺であいかわらず戦闘でも見せ場がないどころの話じゃないザコさだし。放り込まれたこの世界、業界の潮流ガン無視にもほどがあるだろ。これが◯ャンプ作品だったら、魔王より先に編集部に世界を終わらされるぞ。




