ソレはまずい、落ち着こう、ソレはまずい
「ちょっと話が脱線してるけど、要はデネブちゃんはヤキモチの方便として、私が怪しい人――まあ、人というかエルフだけど――だから近づけたくない、てことなのよね?」
「ヤキモチとかじゃなくて私は……」
「はいはい。でも残念なことに、その方便は使えなくしちゃいます」
ソアラは軽くほほえむと、両手を自身の首筋にまわした。かけていたネックレスを外し、食べ終わった食器の間、テーブルの上へと置く。
親指の先ほどの宝石がエメラルドグリーンに輝いていた。
【星屑のささやき/装備者は危険が迫ると察知できる】
これ、結構高いやつだ。道具屋で十万イェン以上で売ってるのを見たぞ。
「こんな高価なものをいいのか?」
「私に敵意がないことを示すのにうってつけでしょ」
なるほど。危害を加えるつもりがあれば、こんなものを相手に渡すことはできない。値打ち的にも、アイテムの効果的にも、差し出すには最適の品ってわけか。
「ソアラの気持ちはわかった。ありがたく使わせてもらうよ」
俺はさっそく装備してみた。ネックレスなんてつけたことないけど、似合ってるかな。
さっきまでソアラたんのわがままおっぱいの上に乗っていた宝石……うへへへへ。
なでなでしていると、突然、差し迫った危険が脳内に告げられた。
いきなりアラートだと? まさかこんな街なかにモンスターが……!
顔を上げると、デネブが食器を振りかざしていた。
「勇者様ともあろうおかたが、公衆の面前で締まりのないお顔をされるのはいかがなものかと」
「フォークはまずい、落ち着こう、フォークはまずいっ」
満席の客たちの視線を独占する俺たちに、そろそろ店主の怒声が飛んできそうだった。




