表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さぃょゎゅぅしゃ  作者: みさわみかさ
【朗報】勇者の使徒・デネブが文字どおりのエンジェル
77/148

女の子と会話がはずんで調子こいて玉砕、非モテあるある

「私はアンティクトンでの役割を演じあうほうがいいなと思ってます」曖昧な笑みで、何歩か先を見やりながらデネブは語る。「お互いに実際の名前を知ってしまったら、今の関係が壊れちゃう気がするんです。【勇者】や【魔道士】って記号じゃなくなって、むき出しすぎる生身になるような。それはちょっと怖いです」


 (おれ)じゃないほうの(そら)を見上げる。「私は勇者様にお仕えする使徒のポジションに収まっているのが一番、居心地がいいです」


 とつとつと理由を述べて、すみません、と魔道士はわびた。要は「ネトゲで名前聞くな」って言われたようなものか。ぐさりと胸にくる。俺は破滅的に空気読めないからなあ。


 別の話題で空気の入れ換えを図ろうとしたが、それも選択をマズってしまう。


「なあ、立ち入ったこと聞くようで気が引けるんだけど、転生したってことは、デネブも元の世界で死んじまったんだよな。死因はなんだった?」


 デネブは上げた目線を再び土の上に落とす。少しの間、口をつぐんで「ちょっと人に話せるような内容じゃないので……。ごめんなさい」ともう一度わびた。


 別にいいよ、変なこと聞いて俺こそごめん、と俺は笑ってみせた。――俺のどアホウ。

 


 しかし、人に話せないような原因か。普通の病死とか事故死って感じじゃなさそうだ。

 まさかとは思うが、男に襲われて、とかじゃないよな。俺が死ぬ前辺りにニュースサイトを見ていた限りでは、都内でそういった事件は発生していなかった、はず。もしかして、陵辱を受けて、バラバラにされて、人知れず遺棄されたとしたら――。そんなのむごすぎる。不用意に尋ねるなんて軽率だった。


「もし――東京に戻れないとしたら」俺の後悔とはよそに、デネブは、案外あっさりした様子で言った。「お母さんに、死んじゃってごめん、って謝りたいかな。そんなに仲がよかったわけじゃないんですけど、母子家庭だったし」


 少し寂しそうに微笑する。


「逆に聞いてもいいですか。勇者様はなにが原因で亡くなられたんでしょうか」

「俺? 俺は――」言いかけた言葉を飲み込む。「いや、俺もないしょ。これでおあいこ」


 にやりとした俺にデネブもくすりと笑ってくれた。

 勇者が腰抜かしてショック死したとか口が裂けても言えない。あと、さっきちょっと漏らしたことも(まだ乾いてなくて必死に盾で隠していた)。このことは墓場まで持っていく。

 ――つーか、もう死んでるか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ