異世界での覚醒、ついにきたか!?
再び向きなおったかわいらしい顔だちは、あのくりくりの目をぱっちりと、口はぽかんとそれぞれ開いて、俺を凝視している。メデューサの石化のやつかな。
「日本って……どうしてそのことを……。ということは、あれ、まさか勇者様も?」
「同じく。俺も転生してこの世界に放り込まれた」
「私だけじゃなかったんだ。あー、びっくり……。でもどうして私が転生者だとわかったんですか」
「会話の内容から、たぶんそうだろうなと薄々」
「ええー。こっちの人に変な顔されないように気をつけてたのに……」
デネブはがっくりとうなだれた。俺なんか全然気にせず吹聴してたが。
「で、どこ出身? 首都圏だろ」
「そうです、東京です、生まれも育ちも。それもわかるんですか」
「だってデネブ、全然なまってないじゃん。関西人とか標準語で喋っててもアクセントでわかるだろ?」
「あ、そうか。ですね。勇者様、意外と頭よかったりします?」
ナチュラルにディスるな、こいつ。知力が十倍ほど差があるのに、案外抜けてる?
「俺も都内住み。デネブはどこ?」
「えー、それはちょっと……」
「いいじゃん。どうせ俺ら、異世界にいるんだし。せめて何区とか何線の近くとかだけでも」
「んー、それじゃあ……西武池袋線」
「え、マジで? 俺んち保谷が最寄」
「うそっ、私もです! あ、言っちゃった」
「マジでマジでっ? すっごい奇遇じゃん。もしかして近所だったりして」
さっきから、俺じゃないみたいに言葉がついて出ていた。女の子相手にめっちゃ喋れてる。食いつけてる。異世界での覚醒、ついにきたかっ。俺は高揚感を追い風に、さらに踏み込む。




