※ただしイケメンに限る
あらかた食い終わって腹を叩いていると、デネブがもじもじしていることに気づいた。ん、トイレか?
「つかぬことをうかがいますが、勇者様は何人ぐらいの女性とおつきあいされたことがあるのでしょうか」藪から棒の質問に面食らった。「レベルはともかく、とてもモテそうなかただなあって」
ひとこと多い子だな。三次元の女なんて、取って食う化け物としか認識していない俺に、彼女がいるわけがない。しかしここで正直に答えると
『あらいやだ。この人、彼女いない歴=年齢=童貞なのかしら。勇者っていうのも怪しいし関わるのやめよっと。さよーならー』
てなことになりかねん。俺ひとりじゃ魔王討伐なんか無理ゲーだ。
ひとまず質問に質問を返して時間を稼ごう。
「デネブはどうなの、彼氏いるの?」
「私は……男の人とおつきあいしたことがないんです」=処女確定!
そう、そうだよ。異世界で仲間になる子が非処女であろうはずがない。これはもはや不文律、様式美といえよう。
同じ土俵に立ったからには臆することなくカミングアウトできる。「俺も今まで彼女を作ったことはないよ」とさわやかにほほえんでみせた。※なお、これが許されるのはイケメンに限る。
「意外です。かっこいいし、まじめそうなのに。アンティクトンでは強い男性がモテるんでしょうかね」弱くて悪うございましたね。加えて全然まじめじゃないしゲス野郎だし。
デネブだってかわいくて男に言い寄られそうだけど、と返すと、そんなことないです、と困ったように顔を伏せた。自覚、あるいは自信がないんだろうか。
 




