【悲報】俺氏、ここから3回連続でマジ泣きする。なお、4回目もある模様
「申しわけありませんでした!」
俺は九十度の角度で頭を下げた。
真っ昼間でがらがらの酒場、クエストの受付カウンターの前で。お姉さんは怒りもせず、顔を上げるようにと笑顔でうながす。脇に立っているデネブに「はい、今回の報酬よ」と数枚の銀貨を差し出しながら、俺に教えてくれた。
「この捜索クエストはね、パイの配達の依頼主が発注したものなの」
えっ、と俺は、目を広げた。
お姉さんは、モンスター討伐の証拠品とおぼしき、見たことのない柄や形のしっぽ、指ぐらいの大きさはある牙などを机上で整頓するかたわら、薄い笑みを向ける。
「夕方前には戻ってくるはずのあなたが日が沈んでも帰ってこなくて、依頼主は心配してたわ」青みがかった鉱石を等間隔に並べる手作業を再開し、さらりと言う。「報酬額は何万イェンでもかまわないから、すぐに捜索隊を募ってほしい、と」
頭をぶん殴られた気がした。
お姉さんの、簡単な案件だったから一万イェンもかからなかったんだけど、との話も耳に届いていなかった。
報酬と荷物を持ち逃げした俺を捕まえるためなんかじゃなかった――。見ず知らずの俺なんかのために。
呆然と右から左に話が抜けていく俺の頬に、つと涙が伝った。
人からこんな優しさを受けたことなんていつ以来だか思い出せもしない。
そうだ、金、返さないと……。
目もとを拭って懐を探る俺を、お姉さんは手で制した。
「返さなくていいわよ。初クエストのお祝いとして取っておいて。お金、困ってるんでしょ?」でも、とぼろ泣きで言葉を返す俺に、お姉さんが尋ねた。「そのかご、依頼主が取りにくるから預かっておきましょうか? それとも自分で返しにいく?」
そんなの、決まっている。




