異世界の魔法技術が、普通に現代テクノロジーをうわまわっていた件
道すがら、魔道士・デネブから事情を聞かされた。
俺が戻らないため、例の酒場で捜索クエストが発生して探していたとのこと。
約束を反故にした野郎は、とっ捕まえて示しをつけてやるってわけか。自然と足どりが重くなる。
どんなペナルティーを食らうんだろう。もし罰金払えって言われても、前金を返したら無一文だぞ、俺。
小言を食らい絞られると思うと憂鬱になるが、死にかけたのを助けられたんだ、バックレるのはさすがに気が引ける。覚悟を決めて叱責を受けよう。ガタイのいいおっさんが出てきてボッコボコにされるとかはちょっと勘弁してもらいたいけど。
それにしても、こんなだだっ広い草原でよく俺を発見できたな。二次遭難余裕、ゲームなら手抜きマップもいいとこの単調なフィールドで。
デネブによると、彼女の所持している地図は魔法アイテムのひとつなのだとか。酒場で登録した名前やレベルなどの情報をもとに、対象の居場所を特定できるらしい。ってそれ、GPS顔負けの超高機能じゃねえか。はえー、どうりで、なんの目印もない緑と青一色の大平原を迷いなく進んでるわけだ。
電波も衛星も発信機もいらねえって。アンティクトンの魔法技術、普通に現代テクノロジーをうわまわってた。異世界なめてたわ。
うかつに変態プレイの店とか出入りしたら
『ねえ、奥さん聞いた? そこの宿屋の二階に滞在している勇者様。SM専門のプレイルームのあるいかがわしい酒場に入りびたりなんですってよ』『んまー、信じられないわ。勇者様っていうからてっきりりっぱなお人なんだとばかり』『一回入ったら二時間は出てこないそうよ』『んまあ、二時間!』『隣の奥さんの話だと、HPが下がってるのに精神的なダメージはいっさい受けないどころか、むしろ回復するんだとか』『ぅんまぁー、いったいなかでナニをやってるのかしら』『いやらしいわねえ』『魔王討伐をなさるりっぱなおかたがSMクラブにねえ』『人は見かけによらないものねえ』
みたいな噂話がたちどころに広まるおそれもあるかもしれん。個人情報とかガン無視してそうだし、この世界。気をつけないと。
なお俺はそっちの趣味はない。念のため。
 




