初めての二日酔いは異世界の街角で
風呂場でお袋が倒れてることを告げ、助けをあおぎに行った親父の部屋。そこで目にしたモノは、まったく予想しえないななめ上の事態だった。
この世で最も見たくない光景が、そこにはあった。
背を丸めて横向きに寝そべっている親父。開かれた目と口が、もはや生を失っていることを物語っていた。
いや、それはいい(よくないが)。問題は腰から下のほうだ。
この状況を悲惨なものたらしめる要因は下半身にあった。
膝まで下がったズボン。握られた(俺じゃないほうの)ムスコ。床に垂れた白濁色のアレ。信じたくなかったが、尻にはピンク色のバイブまで突き刺さっている。そいつが鈍いうなり声を漏らしていた。
俺はドアをそっと閉じた。これは見なかったことにしよう。
*
朝日と小鳥のさえずりが、スマホのアラームに使ってるハイテンションのアニソンよりもずっと穏やかに俺を起こした。
はえ…………ここ、どこだ?
目に入るのは、早朝の無人の街角。俺は建物の壁にもたれて座り込んでいた。
なんで外で寝てんだ、俺?
つーかこの妙な建物はなんなんだ。あと、さっきからなんかくせーな、っておわっ!?
自分の真横にゲロがぶちまけられていて飛びのいた。きったねー。誰だよ人の横に……って、俺だわ、吐いたの。
糸をたぐり寄せるように記憶が戻ってくる。
昨日、ガンガンに飲んで、気持ち悪くなって戻して、そのまま眠りこけたんだった。
ててて、頭がずっきずき痛みやがる。これが二日酔いってやつかよ。
俺は立ち上がり、まぶしい太陽に目を細めて伸びをした。
そっか。夢オチってわけにはいかず、俺は本当に異世界に迷い込んじまったんだな。




