異世界のモンスターは、倒したらちゃんと点滅して消えるべき
そうこうしているうち、あれよあれよという間に人さらい軍団の軍勢は残り三人までに激減していた。
さっきまでおっかなびっくりソアラをつついていた西遊記トリオは、ぶっ刺されて血まみれの肩を押さえて転げまわり全身は土まみれのカッパ、もしかして死んだのかというぐらいブタのようにぶっ倒れ突っ伏している八戒、あとは気でも高めているのか来週まで動きのなさそうな悟空になりはてている。
戦えそうなのはほかにリーダー格とその他モブのブタ、モブタ一名のみ。パツキンロリフは、さすがに少し息は切らしているもののほぼノーダメ。強え。そして怖え。
負傷した奴らが散らす血の色と匂いで、通りはわりと凄惨な雰囲気だ。見物に集まった連中も俺も顔をこわばらせている。よくここまで遠慮なしにザクザクいけるもんだ。
最強チート能力よこせよこせ言ってるけど、いざレベル百とか千とかバカみたいに強くなってもたぶん俺、無理だわ。万能ナイフのあの小さくてクッソ切れ味の悪いやつですら、人なんて刺したくねえもん。モンスターだって実はまだ抵抗感あるぐらいだ。倒してもゲームみたく消えてくれねーし。
別世界の住人にげんなりぎみに感心する俺のほかに、おどけた調子で感服してみせる奴がいた。
「さすが森の番人の異名は伊達じゃねえようだな」
ひとまわり体つきの大きい、いかにもボスキャラ然としたおっさんが、余裕ありげに含み笑う。




