HG = 光ってぎらぎらしているかた / ヘアースタイルに限度のあるかた / 頭髪の不自由にも負けず「は」りきり「げ」んきなかた
初めて目のあたりにする対人戦。モンスターとの戦いはもう日常の一部になってきたとはいえ、人同士での本気のやりあいはまだ見たことがなかった。せいぜい、たまに酒場で始まる酔っぱらい同士のケンカぐらいだ。そこで武器を手に取る奴はいない。冒険者・地元住民を問わず、実戦用の装備がどれほど殺傷力が高いかよくわかってるからだろう。
そんな文字どおりの真剣の勝負を臆さずしかけ、ためらいなく鋭い先端で突き刺すなんて。
もしソアラの手にしているものが剣などの刃だったら、さっき妄想したみたいな、腕があー、腕があーになってて、すでに二、三本、その辺に転がっているに違いない。そうなったときでもおそらく青ざめることはないであろうソアラに、俺のほうが青くなる。戦い慣れしているあいつは、かまうことなく同じようにまっすぐ相手を見つめ、どんな攻撃にも対処できるようにと身構えるんだろう。
「おめえらっ、エルフのガキひとりになにやってんだ!」
リーダー格らしきひときわガタイのいいおっさんが仲間をどやしつける。ソアラの手近にいた、あまりに頭部が寂しげで敵ながら励ましたくなるようなHGのBGが激しく斬りかかった。が、即座になまはげみたいなナタを弾き飛ばされ、同時に顔を斬り裂かれた。
へぁげぇーっ、との奇怪な絶叫も無理からぬ、耳から頬にかけての裂傷と血しぶきに、ぞくとする。異世界で最初の戦闘以来の刃傷沙汰。あのときの三、四人のおっさんの惨殺を思い出して吐き気をもよおした。




