「結構毛だらけ猫灰だらけ」の「灰だらけ」は「かまど猫」、火を消したあとの暖かいかまどに入り込んだ猫が灰まみれになるさまを指す
ぎゃああぁぁーっ、との悲鳴があがった。
なんちゃってオークのおっさんが、さっきの俺TUEEEEな妄想よろしく、手があー、手があー、と叫んでいる。手毛だらけの醜い手がけっこう血だらけ猫剥いだら血だらけだ。
俺の代わりにTUEEEEしたのは、先ほどに続いて文字どおり空から舞い降りた使徒――「ソアラ!」
よっ、と第二使徒はレイピアを振って血を払い「デネブちゃん、ケガはない? そこの子も大丈夫?」と声がけしつつ、ハーフなオークと対峙する。
女の子は、大丈夫っ、とけなげに答え、デネブは詠唱のあいまに、来るなら早く来てよと文句。ちなみに俺には特に確認なし。いや俺、リーダー……。世界の命運しょってる、ベリーインポータントなパーソン……。
俺のことは視界に入っていないがごとく、ソアラは、抜剣し「野郎っ」と襲いかかるブタ&ゴリラたちに得物の突先を向ける。
二匹の、もといふたりのB&Gが頭上に鉄剣を振り上げるが、俊敏なソアラには隙だらけ。斬りつける間を与えず、それぞれの腕にザクザクッと正確に刺突を入れる。また、ぎゃああという叫び声と血が、白昼の通りを物騒に染める。俺たちを取り囲むようにしだいに集まってきたやじ馬の悲鳴とともに俺も、ひっと息を飲んだ。
やられたおっさんたちは剣や斧を落として腕を押さえ、片方は土の上でもんどり打ってわめき、片方は目をむいて痛みをこらえた。どちらも赤いすじが腕毛のなかを伝い、ぽたぽた地面へしたたっている。
きりっと口をむすび、フェンシングのようにレイピアを突き出し構えるソアラ。普通に人ぶっ刺すのな、ってドン引きだ。




