「たいへん!」「私たち」「宇宙で」「ふたりだけに」「なっちゃった!」「男の子がいないなら」「女の子同士で楽しめば」「いいじゃない!」「宇宙姉妹☆まりとみり」「毎週日曜深夜26時、OA!」
「し、知ってるんだ、デネブ。おまえも実はオタク――」
「じゃなくてもあれだけ炎上してれば誰でも知ってます!」
言ってるデネブ本人の火にも油がそそがれる。
『宇宙姉妹☆まりとみり』、通称『まりみり』は、変態ご用達ロリレズ深夜アニメで、きわどすぎるシーンが満載。BPOやPTAどころか某国営もとい公共放送のニュースでも報じられるほどで、そのうち国会でもとりあげられるんじゃないかとささやかれるほど問題視されている。
「違うんだ、確かに『まりみり』はエロシーンばかりが注目されているが、監督と脚本と作監と声優とスタッフに恵まれた近年まれに見る神作品で、さすがSFの東京都アニメーションズと古参の老害オタも納得の、毎週、頭おかしい枚数でぬるぬる動く作画は必見なんだが、シナリオがまた秀逸で、原作逆レイプと作者みずから称賛するほど換骨奪胎され練り込まれたストーリーを象徴するのが、四話のまりがみりと添い寝するシーンで、たたみかけるような一話の伏線回収は――」
「つまりオタクでロリコンなんですね?」
またオタ特有の早口でまくしたてる俺をデネブは冷ややかに一蹴した。世紀末級に消毒されそうな汚物でも見るかのような目で。
「こちらの世界でも死亡されたあと、もしもあの世でご家族にお会いになることがあればお伝えください。『お力になれず申しわけありませんでした』と。では」
くるり、再度、踵を反転させてデネブは歩きだした。ちょ、待てよ、とあのアイドルふうに手を伸ばしたがもちろん無視された。
 




