「わかりやすく言うと……」 俺「なるほど、さっぱりわからん」
けれど、ここまでの話だと、王国の継承問題であって、魔王に滅ぼされたこととは関係ないような。
俺の疑問を察したように、デネブが「少し前置きが長くなりましたが、ここからが本題です」と真剣味を新たにした。
「私がアンティクトンに来たことを自覚した半年前、ちょうどリオは滅亡に向かいはじめていました。そのころ、クルセイダーが遠方の各地へ派遣されだしていたんです」
デネブはやけに力を込めてクルセイダーの箇所を強調した。話しぶりからしてなにやらいちだいじのようだが、俺にはぴんとこない。第一使徒は、まるでリアルタイムで進行していることのように、少しの緊張感を交えて説明する。
「クルセイダーおよび彼らが統率する部隊は、王国軍内で特別な地位にあり、国王直属の戦士とされています。王族と王都の警備が彼らに与えられた絶対の使命で、リオを離れるのは王の外遊に随行する場合に限られます。そのクルセイダーと隊が遠征に出る――。わかりやすく言うと、ちょうど、九十年代に初めて自衛隊が海外派遣されたのと同じぐらいのインパクトがありました」
ごめん、ちっとも伝わんない。
俺、ニュースとか全然興味ないから、と笑う俺に、デネブは「だから九十年代、私たちが生まれる前の話ですってば。授業で習ってませんか?」とあきれ顔だ。うん、まあだいたい寝てて聞いてなかったからよく知らん。
日本じゃまじめに勉強してたっぽい魔道士は、はあ~と長いため息をついて、もういいです、とゆるく首を振った。
あーこれ、ステータスには特に見当たらないけど、忠誠度とか好感度とか気力とかいろんなパラメーターがまとめて一気に下がるやつだ、やっべ。
とりあえずこういうときはセーブしたところからやりなおすのが常道だが、うん、そうだね、俺が来た世界にそういう都合のいいシステムやサポートはいっさいないよね、うん、知ってるから。




