そして戦線は動き始める
少し話の展開を予定より早めてみました。いやまあずっとバトルシーンだけ書いててもしょうがないので。別に主人公が無双し続ける話にする気はないので(ほんとか?)、リズムよくいきたいなと(ショートカットしすぎないように気を付けます)。
「ヨーロッパで交戦状態、か……」
向こうも始まったのかと思いつつロングソードを振るう。
さすがにカプリコーネが何機いようとあまり変わらない。
「ふっ!」
刃を振るうたびにパンドラが一機ずつ減っていく。
戦闘開始から、何時間経ったのだろう? だいぶ体力は消費した気がするが、まだまだ戦える。
システムは兵装を開発できていないようだ。
とはいえ、ナノマシンの残量は6割ほど。まだまだ戦える。だがやはり気になるのは、こうも短期間で人間がいなくなったことよりも、どうしてこれだけの数がいるのか、という問題だ。
絶対に、おかしい。
ある一つの可能性が頭をよぎった。だがそれは、少年にとっては考えたくもない選択肢だった。
だが。状況はそれを完全に肯定している。
「まさか、一般市民を、パンドラに変えたってのか……!」
そんなことが、許されるはずもない。だがオリジンは言うのであろう。
――死にたくないと願ったのはどこの誰?
と。確かに人類は不死を願った。だが、けしてこんな形ではないだろう。
彼らの意識は恐らくオリジンが完全に支配している。つまり、もはや人間ではない。
「ふざけんなよ……! 人の命を、何だと思っている!」
怒りのまま俺は刃を振るう。いや違うな。怒りに任せ刃は振るうが、自分はもはや第三者として戦場を俯瞰していた。
冷静な自分と、怒りに満ちた自分。それが完全に分かれているのが分かる。
怒りと、冷静。相反するはずの感情が胸を占める。
俺は、何のために戦っているのか?
この質問に、今俺が答えるとするならば。
人類のためなんかではなく、自分と、彼女と義父さんのために戦っていると即答できる。なぜなら、もう、人類は滅びるからだ。けして、利己的な考えではない。
アメリカで義父さんは戦っているが、そもそも市街地からパンドラが出現してくる以上、もう人間はいないと考えていい。
そして日本でさえも侵入されつつある。
だからもう、進化がどうとかそういう次元ではない。
もし、オリジンを倒すことでパンドラが人間になるのだとすれば。
もう俺たちに残された道は一つだけ。
――オリジンを倒す。
そしてそう決意したとき。
「evolve system open:gungnir」
「遅いってんだよ、まったく」
しかし、「グングニル」か。随分と大層な名前だ。
一瞬で武装が形成される。対多数長時間戦闘兵装「グングニル」。
右腕には愛用のロングソード。
左腕にはアンカーとハデスの能力を応用したジャック機能をもつフィシアを。
半面装備が重くなった分、もともと薄かった装甲はさらに薄くなる。
まあ、食らわなければいい話だ。
俺はスラスターを吹かし、距離を詰め、フィシアを放つ。
タウロスが一瞬動きを止め、そして俺の仲間のように動き始める。
しかしこれはハデスとは違い、俺の意識ではなく、相手側のプログラムにすべて任せ、最終的に自壊させるように設定されている。
さて、と。一休みできそうだ。俺は敵の数がだいぶ減ってきたのを見てそう思った。
まあ、どうせまだ終わりではないのだろう。
気を引き締め、敵の中に突貫した。
―――
その頃マスターは。
「イヴァルヴが新兵装を開発したのね……! とはいえこれだけじゃ全然足りない」
策は、もうない。
完全に世界はパンドラのものとなった。既に分かりきっていたことだった。
オーストラリアの時点でオリジンを叩けなければ、基本的にそれまでだったのだから。
でも、やれることはやる。
少女はそう決意し、コンソールを叩いた。
―――
アメリカにようやく到着したカストル、ポルックスはと言えば。
多数のパンドラの残骸と、そしてそこに埋もれている一人の男を見つけた。
「おい、これって……」
「間違いねえ。こいつは、ハデス、だ」
アヴァランチとマスターが義父さんと呼び親しくしていたその男は、既に死んでいた。
しかし、そこには一機もパンドラはいなかった。
さて主人公たちはこの後どうなるのか?
ご注目ください。