ヨーロッパにて
あらすじにオリジンが主人公と書いてあるのは間違いじゃないです。
あまり出番は今のところはありませんが、後半から一気にぐいっと来ます(ネタバレにもならない)。
序盤はヴァイアランとディーヴァの活躍が書けるのでうれしい限りです。
アヴァランチとハデスが戦っている最中、ヨーロッパでは新たな動きがあった。
それは言うまでもなく、ヴァイアランとディーヴァによるものだ。
彼らは例の事件にかかわることになる。
ヨーロッパにはまだパンドラはいない。ので、彼らは一般人に紛れて活動することになる。
「しっかしアヴァランチの奴、大丈夫なのか?」
「さあな。だが奴なら大丈夫だろう」
念のためフィシアを送っておいてもよかったのだが、なぜかあいつから断った。
なんでもより早い「進化」を求めているんだとか。それがどうなるかはわからないがな。
彼らは空き家を借り、そこを本拠地としている。そして、その日の夜のことだった。
深夜2時。彼らは目を覚ました。
「なによ、あんた!」
正確に言えばここはイギリスなので英語だが、自動翻訳を掛けているためこう聞こえた。
そして彼らは跳ね起き、そしてシステムを展開した。
「行くぞ」
「おうよ」
スラスターを吹かすわけにはいかないので、生身の――と言っても多少の強化は入れているが――走る。
そして、その悲鳴の下に駆け付けた時にはすでに遅かった。しかしそこには霧ではなく――
「ヴァルゴか! やはり……!」
「俺が行く、援護を」
「了解」
ディーヴァが対光学迷彩用バイザーを掛け、バスターソードを片手に突撃する。
俺はフィシアを展開し、弾丸が市街地に命中しないように配慮する。
まあ、きっと無駄だろうがな。
とはいえやっておくにこしたことはない。
しかしそのパンドラは特に抵抗せず、やられるだけだった。
それに、違和感を感じた。絶対に、何かがある。
「ディーヴァ、気をつけろ。おそらく囲まれている」
「らしいな」
しかしどうやって?
いや、まさか――
その予感は的中した。
殺されたはずの婦人がむくりと体を起き上がらせる。
それは十分恐怖に値するものだったが、さすがに彼らはその程度には動揺もしない。
しかし。その婦人がパンドラへと変形(生まれ変わったというべきか)していくのには動揺を禁じ得ない。
「なっ!?」
「これは――! してやられた。罠か――ディーヴァ。このあたりの市民はもう、パンドラになっている!」
「そんなバカな話があるか!?」
そう言いながらも彼は警戒を続ける。いやしかし、これは――もう遅いのではないか? 一瞬そう思う。しかし、弱気は禁物である。たとえこの感情が偽物でも、戦場に弱気は必要ないのだ。
俺は、見えない敵に向かって、フィシアを多数展開した。
やるしか、ないのだ。もう。市街地を破壊しようが。
後戻りはできない。
ここにきてしまった以上、オリジンは絶対に俺たちを逃がさないだろう。
ならできる限り抵抗するまでだ。
「行くぞ、ディーヴァ」
「おう」
二人の戦いが幕を開けた。