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新編 レクイエム・オブ・ギアーズ  作者: 舞原涼、へーがたくちくかん
第二章 Spreading and Spreading
16/30

日常パート戦線、異常あり

今回は割とライトなはずです。多分。フィリピンの暑さに慣れ、なぜかクーラーが効きすぎているせいで長袖生活している北海道人です。絶対におかしいのや。

なんでや。クーラーいらないだろ。どうにかしてくれ。

今日の夕食がおいしかったので良かったということにします。

避難シェルターはもちろん非常食が備わっている。そして、もちろん外部からの救助が可能になっている。ということはつまり、外部から自由に出入りできるということだ。

そう。


「ひっ……!? な、何よこれ……!」

怯え、後ずさる女性。しかし、音もなくそいつは――《ヴァルゴ》は彼女の腕を取り、そしてかねてから用意されていた注射針で突き刺す。

独特の金属光沢をもつナノマシンが彼女の体に注入され、そして気を失った。


それは、《オリジン》の計画していた人類の「ディストピア化」の第一段階だった。

それがどういう効能を持つかを知らないまま、《ヴァルゴ》は避難シェルターの内部にいる人間にナノマシンを注入していった。


そしてもちろん、その内部から人間がいなくなるまで、半日もかからなかった。




一方、ブリーフィングルームに集まった彼と彼女は、作戦会議をしていた。

どうやって九州を奪還するか?

そこは大事な拠点となるはずだった。

九州はなぜか日本の中で最も避難シェルターが設置されていた。

そしてそれは戦闘時に市民が避難するはずの場所だった。

ところが、今はもはや《パンドラ》に支配されている。

《マスター》のレーダーは九州を真っ赤に染めていた。

つまりまあ、完全に支配されているということだ。


「さて、今や九州は壊滅し、恐らく次は中国・四国地方を狙ってくるでしょう」

一日では誰も異変に気づけないだろう。そもそも人間はいなくなったのだし、通信も不能になっていた。

奪還作戦と言っても、そもそも数の差がありすぎる。一度には不可能だろう。


ハデスは今アメリカにいる。とはいえ上がってきた情報を見る限り、だいぶ苦戦しているようだ。

「残弾」もだいぶ減っているみたいだ。

「なあジュリア。俺は九州に一人で乗り込んで、対多数兵装を生み出す。そしてほかの奴らをハデスの救援に向かわせるってのはどうだ?」

これくらいしか考え付かない。まあ正直危険な案だが、これ以外の策が思いつかない。


彼女は考え込んでいる。俺が死ぬかどうかを計算しているのか?

「ジュリア。俺のことは気にしなくても――」

「私は、ね。ミズキ。あなたに死んでほしくないの。もし仮にあなたが死んでこの世界が丸く収まるって言われても、私は納得しない。絶対に、絶対にあなたは死なせたくないの」

彼女はいつになく真面目な表情をしている。

彼女はバイザーを外し、彼女の本当の両目が俺を見つめている。

「わかった。だけどこれだけは言わせてくれ。――俺は絶対に死なない。大丈夫だ」

いやまあそういう話じゃないっていうのは重々承知している。

だが、言わなければならないと俺は思った。

それに、俺はここでは死なないという確信すらあった。

だから俺はそう言い放ち。

彼女の体を抱きしめた。

「ミズ、キ……? 本当に、大丈夫なの?」

「ああ」

俺は彼女がそうすれば落ち着くということを知っていた。ずるいやり方かもしれない。

だが、作戦を成功させなければ、確実に人類は滅びる。

「ほんと? 生きて、帰ってくる?」

「当然だ」

抱きしめてしまっているので彼女の体は見えない。

ただ、彼女の鼓動は落ち着いてきている。

「わかった。――でも、一つ、約束して。この作戦が成功したら、私の願い事を、聞いてくれる?」

珍しいことをいうなと思った。だけどまあ、そういうことを言いたくなる瞬間は誰にでもあるだろう。


「――わかった。必ず、帰ってくるさ」


俺はそう彼女に言い、唇を重ねた。

驚いたのか、彼女は眼を白黒させている(器用なことにちゃんと色を変えて)。

「ばかぁ」

顔を赤くした彼女が俺の体をぽかすか殴る(というか叩く?)。

「でもまあ、私は君の、そういうところが好きなんだよ?」

そういった彼女の笑顔を俺は忘れないだろう。

死んだって、データとして残してやるさ。


俺は彼女から体を離し、部屋から出た。

俺の背中の後ろで

「キスしといてそれだけ……?」

と一瞬聞こえたのは聞かなかったことにする。

さすがにキス以上のことをして明日まともに顔を見れる気がしなかった。

いや、キスですら明日顔を見れないかもしれない。


まあ、いい。

明日からは長丁場だ。俺は気合を入れるべく、両ほほを強くたたいた。

いい音がしたのと、ついでにめちゃくちゃ痛かった。

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