もう一つのパーソナリティ
ハデスのもう一つのパーソナリティが明かされます。
果たしてこの後出るかはわかりませんが……。
「ふっ!」
俺は光学迷彩を展開していたアクエリアスに刀を振り下ろす。
まさか見えているとは思っていなかったのか、反応が数瞬遅れる。身を引こうとするが、遅い。
アンカーを打ち込み、しばりつける。
ハンドガンを連射し、装甲を削ったところにロングソードを一閃。
一機撃破。
その間にも他の四機は動いていた。向かう先は、《カストル》がいる。
まさか、こいつら――《ジェメニ》のパーソナリティを手に入れるつもりか。
そうなれば厄介だ。
まあ正直、《ヴァルゴ》のと《ジェメニ》を混ぜ合わせてどうなるかはわからないが。
システムが作り上げているシステムは、あくまでも対ヴァルゴ用の兵装だけだ。さすがに常に変化していくアクエリアスにはあまり意味がないかもしれない。
まあ、やらないよりはましだろう。
とりあえずシステムの制御はそのままにしておいて、俺は加速した。
「《カストル》、《ポルックス》! そっちに《アクエリアス》が行った。警戒を」
「了解」
そして彼らは俺から送られたデータを利用し、散開。
アクエリアスを挟み撃つような位置取りをする。
「《ヴァイアラン》、援護してやってくれ。《ディーヴァ》は俺の援護を!」
「了解」「オーライ」
とりあえずアクエリアスは三機に任せ、ヴァルゴを攻撃することにした。
まだまだ敵は多いが、やらなければいけない。
俺は闘志を奮い立たせ、突撃した。
その頃アメリカ西海岸では。
「くそったれが! ここにもいるのか!?」
俺は日本に向かうアメリカの兵器群の進撃を拒むため、ここに来たがまさかパンドラがここまでいるとは。
スコーピオンを展開し、何とか防壁を築き上げるが、どうやらこの数に対応しきれていないらしい。
主武装のレイピア部を射出し、カプリコーネに突き刺す。
「hades personality open」
カプリコーネの制御を奪い、敵の中に突撃させる。だがそれも一瞬で破壊される。
ざっと見たところ、1000はいるか。ここまでパンドラが集結しているのはおかしい。
前々から送り込んでいなければ不可能な話だ。
もしこの推論が正しいのなら、日本にすらいる可能性もなくはないし、さらにはすでに世界中すべてにいる可能性がある。
とりあえず今は考えないことにした。
ヴァルゴをアックスで叩き潰し、パーソナリティで制御を奪う。
上空から狙撃しようとするドローンはサジタリウスに任せ、タウロスを撃破。
くそ、システムで制御しきれるパンドラの限界数に近づきつつある。
あとできて10機ってとこか。
安定性の問題で、《アクエリアス》はだめだ。
《ヴァルゴ》は攻撃力はそこまでないし、《サジタリウス》か《スコーピオン》以外の選択肢はない。
が、見当たらない。
やはり《オリジン》は予想していたのか。俺がここに来ることも。
やってくれるじゃねえか。
俺が作ったんだけどな。
正直ここまでの構想を作り上げるのはちと予想外だ。
あまり戦略系の方に思考回路を傾けた記憶はないんだが、まあそこはAIだしな。それも、最高レベルの。
まあいい。
もう一つのパーソナリティを展開するか。
「使いたくはなかったんだけどな、これ。――パーソナリティ、オープン」
ハデスのもう一つのパーソナリティ。
それは、「ナノマシンの生成を完全に停止させる」ものだ。
敵のパンドラはあらかた傷はつけてある。
もちろん俺も生成は止まるわけだから、リスクはあるがこれしかない。
俺は武装を持たないパンドラに向かって突撃する。スラスターは吹かさず、単純に地上を走って、だが。