九州戦線、突入
九州に降り立った時にはすでに遅かった。
「くそ、数が多い!」
カストルがライフルから展開した刃でヴァルゴを切り裂く間にもポルックスは二機のヴァルゴを撃破している。
やはりこいつらの連携はすごい。
いやまあ、そういうように作られたギアであり、パンドラだが、よくもまあそんなにデータを処理できるもんだ。俺はそこまで連携に特化したギアじゃねえしな。
対多数用兵装、なんてものがあればいいんだが、そんなのは今はない。
イヴァルヴにシステムを半分ほど回してはいるが、さすがにすぐに出来上がるものではないだろう。
「はあっ!」
ヴァルゴにロングソードを振るい、撃破。
ナノマシンが空中に散る。
その時だった。
「アヴァランチ、その他各機に通達。ユーラシアが日本に宣戦布告しました。これからユーラシアの本隊が到着する予測です」
――!
まあ、予想していなかったといえば嘘になるが、予想よりかは速かった。
しかしどうして今だ? こんな混乱している状況で何を――いや。可能性はある。
――オリジンが、「不死の技術」は日本にあると言ったならば。
ユーラシアが、いや世界中が求めるだろう。
どんなに平均寿命が三ケタになろうが、それでも人類は長寿を望んでいる。
傲慢だ、と俺は思う。もし自分がこんな力を手にしていなくても、俺は不死なんて望まない。
死があるから今が美しい。俺は心からそう思う。
そんなことはどうでもいい。
とにかく今は、ユーラシアの襲撃に備えなければならない。
――こいつらを、全員倒して。
「パーソナリティ、展開」
「avalanche system auto personality open」
一気に加速し、距離を詰める。そのままの勢いで殴り飛ばし、アンカーを打ち込み機能を停止させる。
背後に迫っていた奴にはロングソードを投げつけ、ひるんだところを切り飛ばす。
「アヴァランチ。俺たちはユーラシアの襲撃に備え、目標地点へ向かう」
「わかった」
ジュリア曰く、奴らは北海道を目指しているらしい。
普通なら、占領しやすい沖縄やその付近から攻めそうなものだが、恐らくオリジンの展開したヴァルゴとの挟撃を図るつもりなのだろう。
なら一層、ここを死守する必要がある。
最悪なことに、九州全域にヴァルゴがいる上、その一部は住民を取り込み、ギアのようにしているものもある。
俺たちをオーストラリアに誘導したってわけか畜生。
だが今はそんなことを気にしている場合じゃない。
俺とふたご座の二人でこいつらを殲滅するしかない。
「アヴァランチ。俺はこれからアメリカへ向かう」
義父さんからの通信が来た。しかし、アメリカ? 今は特に――いや、ユーラシアが協力を求めるってことか?
「了解」
「ミズキ、くれぐれも《イヴァルヴ》の力を使いすぎるなよ」
「わかった」
確か、開発者である義父さん曰くは、イヴァルヴの力が暴走すると、あるパーソナリティが自動で発動するらしい。それが危険らしいが、詳しいことは教えてもらっていないからわからない。
通信を終え、ヴァルゴに向かって俺は突撃した。