Re:07 譲れない真理、変わらない想い
この世界に来て、いろいろなことに驚かされた。
そのなかのひとつが【学園のトイレ】である。
先ず、トイレの手洗い場だが…、アニメティグッズの豊富さだ。
爪楊枝は分かる、前の世界でも置いてあるところは置いてあったからね。
口臭ケア用品、ハンドケア用品、衣類消臭スプレー、汗拭きシート…等々。
俺が直接見たわけではないが、レストランとかホテルには化粧水なんかも置いてあるらしい。
ちなみに鏡は小型な物ではなく、縦長タイプの鏡だ。
信じられるか…?ここ…男子トイレなんだぜ…?
そして、利用中に聞こえてくる男子達の会話内容。
どこのクラスの女子がキモい、まぁ分かる。
ひどいと思われるが人にも好みがあるからね。
でもね、理由が『胸をジロジロ見てくる』『笑い声がキモい』『やけに絡んでくる』『汗くらい拭け』『臭いが嫌』『存在が無理』
一部なんとなく分かるのはある、でもどれも女子が言ってたようなものばかりだ。
次、放課後どこ行く系の話。
ゲーセン、カラオケ、駅前、まぁ分かる。
『ケーキの美味しいカフェがあってさぁ。』『可愛いピアス売ってるとこあったんだぜー。』…うん。
女子か!?
おまえらホントにチ○コついてんのか!?
甘党、良いだろう。
好みの問題だ。
でもカフェて!?カフェでケーキ!?モンブラン!?男同士で!?ボーイズデイってなんだよ!?
おまえらホントにチ○コついてんのか!?
ピアスを買いに行く。
うん、校則的に褒められたものではないが分かるぞ。お洒落は大事だもんな。
でも可愛いて!?ワンポイントでハート!?ピンクでキラキラ!?クマさんのかたちってなんだよ!?
おまえらホントにチry
と、これだけでも頭が痛くなるが細かい部分をあげればキリが無いので割愛。
ほんと、この世界の男子は乙女か!?
日本男児はどうした!?
大和魂は、漢と書いてオトコとは読まんのか!?
乙女と書いてオトコと読みそうな気がする。乙男とか?
なんか字面で見たらしょうもねぇな、「乙男wwwwww」とかネットで煽られてそうだわ。
草を生やすな。
チ○コ生やせやおまえらは。
上手いこと言った!…そうじゃねぇだろアホか俺は。
まったく、今になってもこういう部分は頭が痛くなる。
エロ本の話で下校時間まで熱く語り合ったあの頃が、懐かしいぜ。
そうエロについてだが、この世界の女子はオープンエロな娘が多い。
『おまえ、濡れてんじゃね?』『へいへーい乳首へーい!』『っべぇわ男子の胸板っべぇわ、埋もれてぇわ。』『男子もオナ○ーとかするんかな?』『うなじ舐めたい。』『…ちくわ大明神。』
どれも男子のいる場所で聞いた言葉である。っていうか最後のはワケがわからん。
なんだよ、ちくわ大明神ってどこの神様だよ。
…俺ら男子は向こうの世界で思われてたんだろうなぁ、キモいわ!?最初は興奮しry…が、今となっては怖いまである。俺らのいないところで盛り上がって頂きたい。
一方の男子はムッツリが多いわかる、わかるが、話の内容がエグい。
『あいつ愛撫くっそ下手でさぁ。』『しごくだけじゃ濡れねぇっての』『胸とかぶっちゃけ感じなくない?』『自分だけイって仕事した感だすなっつーの』『…ちく』
直接的過ぎる。
女子とは逆で、男子はこういう部分を一切女子に見せないのだ。
普段は『エロ話とか最低だよな』とか言ってるやつが、裏では『あいつチ○コ被っててさぁ』とか抜かしてやがるのだ。
確かに向こうの世界でも男子はエロかった、寧ろエロこそパワーだった。
だが、こちらの男子はそれとは違う。
説明するのが難しいが、とにかくお下品お下劣である。
違うんだよ!俺は、俺はもっとカラッとしたエロ話がしたいんだよ!ヌメッとしたエロ話はしたくないんだよっ…!
エロとは爽快でなくてはならない。
これは真理である。
▼
『…彰人、伊織、俺は…吉沢と友達になりたいんだ。おまえらみたいな、女とか男とか関係なく、心から打ち解けられる関係を築きたいと思ってる。』
驚いた。
良は、そんなことを言葉として誰かに伝えるようなタイプではないと思っていたから。
誰とでも直ぐに仲良くなって、気づけば良を中心にコミュニティが出来ている、そんなタイプだと思っていた。
実際にボクら古い付き合いの場合もそうだったし、最近つるむようになった人たちもそうだった筈だ。
きっと、それほどに吉沢さんを思って、何かしらの事情があって『友達になりたい。』とボクらに打ち明けるまで至ったのだろう。
真剣な彼の言葉に、ボクと彰人は、ひとつ深く頷く。
ボクは、良の力になりたい。
今までもそうだったように、これからもずっと。
これだけは彼との関係が続く限り変わらない。
だってボクにとって彼は、新山 良は…。
幼馴染みで、親友で、そして…。
「吉沢さん、ちょっと良いかな?」
教室を出てきた女の子、吉沢 まどかを呼び止めた。
少し驚いたような表情。
それもそうだ、だって今まで彼女とは挨拶をする程度の仲だったから。
こうして話しかけることなど、滅多にないからね。
不思議そうな表情を浮かべる彼女に、ボクはにこやかに言葉を続けた。
「吉沢さん、陸上部だよね?こんどうちの部活で備品を借りることになってて、良ければ事前に見ておきたいんだけど。」
胸のなかでモヤモヤするなにかを押さえつけながら、ボクは人受けの良い笑顔を作った。