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Reversal!貞操逆転世界の男子学生  作者: 鷺城
逆転世界の日々 Ⅰ
10/16

Re:10 写生大会、日本語は難しい



写生大会、それは物や風景をありのままに描き、その出来を集団で競い合うという行事である。


一般的にこの写生大会、真面目に受けようとするものは極々一部だけであり。


大部分の生徒は仲間内で集まって適当に時間を潰し、出来の良い生徒の絵を模写し、教師の目を誤魔化すものであると思われる。


さて、以前にも説明したことがあるが、うちの学園の男女比は圧倒的に女子生徒が多い、ひとつのクラス約35名のなかで男子生徒が2から3人いれば良い方であり、残りはすべて女生徒である。


故に、今日のような行事ごとでどのような現象が起こるか、語るよりも見ろ、である。



「うおっしゃぁっ!新山獲ったど~!」

「うぇ~い!うちらマジ勝ち組っしょ~!」

「いまの後出し!後出しだよ!やりなおしだよ、やりなおし!」

「見苦しいよ委員長!」

「そうだそうだ~!」

「…俺の意思は?あ、ないの?マジで?」


「葛城はうちらと一緒だからね。」

「ほぅれ、ちゃっちゃと歩けぇい。」

「良、助けてくれっ。こいつら目が血走ってやがる…!尻を撫でるなっ!?伊織、伊織ィ!何とかしろ、頼む、何とかしてくれぇっ!」


「…ごめん、彰人、ごめん、良。ボクは、あまりにもっ、無力だった…!」

「藤宮ちゃん…じゃんけん弱すぎっしょ…。」

「うぁぁぁん!男の子ほしいよぉぉぉぉ!男子力が足りないよぉぉぉぉ!」


「トレード!トレード希望!加納ちゃんと新山君を1:1でトレードして!」

「ざっけんなこら!レート安すぎだろ!学食の食券一年分持ってこいやぁっ!」

「独占禁止法だよ!断固抗議するよ!」

「誰か法廷持ってきてー!」


「うぐっ、ひぐっ、負けちゃった…。」

「どんまいだよ、吉沢さん…。」

「結果としてボッチ集団が出来上がっちゃったねぇ。ま、よろしくぅ。」




こうなります。


グループ分けされた女生徒達による、男子争奪ジャンケントーナメントである。


俺は知らなかったが、行事の円滑な進行と公平性を保つという理由により、古くからの伝統とされているらしい。


あぁ…、今なら景品の気持ちが分かる。


まるで神輿のように担がれながら、澄み渡る青空を眺め、俺は物思いに耽るのだった。


耳元では仔牛が売られてゆく例のテーマ曲が繰り返し流れている。


あの仔牛って結局食べられちゃうのかな?


そうか、きっと俺も食べられちゃうんだ。


食べられちゃうんだ(意味深)


…いや、悪くないかもしれんぞ。













「よろしくねぇ新山ぁ。やばっめっちゃやばいっしょ~☆」



なにがやばいのでしょう?


こいつは桜川 さくら(おうかわ さくら)、派手なメイクに茶髪にピンクのメッシュを入れた、見て分かるとおりのギャルだ。


非常に奔放な女の子で、男関係の話では桜川の右に出るやつはいない、と言われるほど。


童貞百人斬りだの、48時間対抗セックスマラソンだの、男根ダービーだの、とにかく異次元の存在として女子たちからカリスマ的な人気を誇っている。


なんだよセックスマラソンって、男根ダービーってナニするの?


改造が施された制服のシャツの下からはヘソが覗き見え、スカートはギリギリのラインを保つ奇跡の絶対領域を維持している。


見えそうで見えない、ナイスエロスである。


じゃんけん大会の結果、俺は桜川を中心としたグループの一員として写生大会に参加することとなった。



「うぇ~い☆ほれほれ新山もっ☆」

「う、うぇ~い?」



助けてっ!テンションに押しつぶされちゃうぅ!


っていうか何なのこの娘っ!伊織以上にスキンシップがデンジャーなんですけどっ!?


俺の知ってる桜川は読書好きの地味な美人さんだった筈なのに、どうしてこんな娘に育って(?)しまったのか。


まったく正反対の陽の者にクラスチェンジされておられる。


これも世界がおかしくなった影響なのか、ほんっとに無茶苦茶だな!この世界は!



「ねぇ、新山。」

「なんだよ?」


「【しゃせー】大会、ガンバローね?」



なんで微妙に語尾を伸ばしたし、おいこら指で輪っか作って上下に振るんじゃありません。


お絵かきをするんですよ?


マスかきするんじゃないんですよ?


いかんぞ、これは非常にいかん。


だがしかし、あれだな、こう、桜川の見えそうで見えない胸元とか、腰のあたりとかを見ちゃうとだな…。


あれだ、熱くなるよな。


色々と、な。














「そっか~二年生は今日写生大会なんだね~。」

「そういえばそんな時期か。」



此処は屋上、授業を抜け出したあたしは紅茶片手に外を眺めている。


横で同じように外の様子を眺めているのは、友人の相馬そうま 梨花りか


付き合い自体は、この学園に入ってからの関係だけど、感覚的には長年つるんだ相方のように仲が良い。



「あ、じゃんけんしてる!あたしたちもやったよねアレ。」

「やったなぁ。結局男子と組めなくて、女連中で悲しくお絵かきすることになったけど。」


「そうそう、でもレイナってばまったくやる気なくって、もうすぐ終了っていうのに縦線一本だけ描いて『木』とか言っててさ。」

「しょうがねぇだろ、あぁいうのは昔から苦手なんだよ。」



絵を描いたり、編み物をしたり、洋服を縫ったり、という所謂芸術という分野にはあたしは向いていないと断言できる。


瓦割ったり、バット折ったりは得意なんだけどな。



「あはは、ねぇ見てよアレ!男の子が担がれてるよっ、神輿かっ!」

「あん?ぶはっ!なんだよありゃ、バカみてぇなことやってんなぁ。」



遠目からだから運ばれてるのが男の子ってことしか分からなかったが、テンション上がりすぎだろあいつら。


あぁいうふうにバカなことが出来るっつーのは良いことだ。



「うげっ、授業抜けたことバレたっぽいよ。」

「マジか。」


「どーしよっか?」

「あー…取り敢えず保健室行こうか。腹いてぇって呻いてりゃなんとかなるだろ。」


「奥義、女の子の日を使うんだね?」

「奥義ってほどのもんでもねぇだろ。」



後輩たちの喧騒を背に、あたしたちは屋上を後にした。


今日も今日とて、空は青く、風が心地良い。


友人と過ごす何気ない日々こそ、自分にとってはかけがえのない宝物なんだ。





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