表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幽霊の恋愛事情  作者: 雪
3/3

理不尽~協力

前回の続きからなんですが、前回いい気分で過ごせそうだった。気持ちのいい涙を流して終わってますが、何故このサブタイトルになってしまったのでしょうか?

その日の夜屋上で星を眺めていると夜なのに校長が校門の所で怪しげな格好をした人と会話をしてから、怪しい格好をした人は校門の地面に何かを置くとその場に立ち止りしばらくすると校長と共に後者の中に入って行った。

2人が見えなくなってから1~2時間経過したころだろうか、私は突然体に力が入らなく無くなったように深い眠りに入った。


その夜から私は学校の敷地内で飛ぶ事と物をすり抜ける事が出来なくなった。霊感の無い人はすり抜けるが、気持ち悪くさせてしまうのは変わらないようだった。


次の日の朝飛ぶ事が出来ないので、昇降口の近くの廊下を歩いていると後ろから声がかけられた。私はこの時点で誰か分かってしまった。きっと声をかけた方は気付いてないだろうけど。

「おはよう、早いね。俺が一番だと思ったんだけど先越されちゃった」

爽やかに挨拶をされたが、ここで無視をするわけにもいかなかった。昨日、声をかけてくれたし…それに気のせいかもしれないけどあの髪を私は、どこかで見た気がする。そんな事を考えつつも出来る限りの笑顔で、振り返り挨拶を返すことにした。

「おはよう。御縁君も早いね。部活見学か何か?」

外では部活動の朝練の声が聞こえてきていたが、御縁君が挨拶をした相手が私だと気付くと先程の笑顔が消えていきどんどんと青ざめていくのを見ると流石に私もショックを受ける。逃げられる前にこっちから姿を消す方がまだ精神衛生上いい。

「あ、ああ、そうだったね。ごめんね。すぐにどこか行くから、あ、あれ?あ、そうか、なんでか飛ぶ事もすり抜ける事も出来なくなったんだ。アハハ…ごめん。今日は1日屋上にいるから、これなら怖くないでしょ?それじゃ」

私は冷静に退散しようとしたが、パニックになっていた。急いで振り返って階段を目指して走り出すころには、私は涙を流していた。後ろから御縁君の声が少し聞こえたが、何を言っていたのか分からないくらいに急いで屋上を目指した。


屋上に到着すると落下防止のフェンスに手をつき息を乱しながらいまだに流れ続ける涙を拭っていた。

「なんで、飛べないの?なんで、すり抜けないの?せっかく挨拶してくれたのに、そんなに私って怖いの?せっかく話が出来る人と出会えたと思ったのに…こんな思いするくらいなら……もう……祓ってよ。成仏させてよ……」

その時、私の脳裏に昨夜の事が過った。校長と怪しい格好をした人物と地面に何かを置いていた光景。心当たりはそれ以外何もなかった。校長に話を聞くしかなかったが今はそんな気分にはならなかった。ショックが大きすぎて…


それから落ち着くまでどれくらい経っただろうか、グラウンドやテニスコートの方向からは変わらず朝練の声が聞こえてきていたが、登校してくる生徒が増えていたから20~30分以上は経過しているようだった。いつもならこのフェンスをすり抜けて飛んで校舎の時計を確認できるのにそれが今は出来なくなった。

「不便だなぁ。そういえば、普通の人には私は見えるんだろうか…それなら嬉しいかな、たくさんの人と話して友達になってやっと高校生活を送れる。でも、違ったら……辛いだけだなぁ。見えない触れられない上に気分を悪くさせてしまうだけ」

色んな事を考えてみるが、考えれば考えるほどその思考はネガティブな方向へ向かって行く、私は余計な事を考えないように頭を振ると空を見上げて大きく息を吸い込み、数秒溜めてから吐き出すと真っ直ぐ前を向くと振り返ると屋上の出入り口の所に校長と御縁君の2人が立っていた。

御縁君がいる理由は分からなかったが、校長には聞きたい事があった。ちょうどよかった。私は校長と御縁君の側に歩いて行くと御縁君の顔がいつもの様に変化しない事に気が付いた。いや、正確には最初から何か申し訳なさそうな居心地の悪そうな顔をしていた。

「校長先生、少し聞きたい事があるのですが、よろしいでしょうか?」

私が少し強い口調で言うと校長は全く動じずにさも当然の様に喋り始めた。

「我々は君が私達に用事があるはずだと思って、ここにいるのだがね。聞きたい事というのは、飛べなくなった事とすり抜けなくなった事かな?それとも、別の事かな?」

校長がそう口にした瞬間に私は違和感に気が付いた。

「我々?私達?え?……まさか、嘘だよね?御縁君も関係してるの?」

私は少し混乱しながらも視線を御縁君に向けると御縁君は一瞬目を合わせると小さく頷き視線を外した。

「それで、何から聞きたいのかね?彼がここにいる事かな?答えられる事ならすべて答えよう。一応、君には黙ってやってしまったからね。申し訳ないとは思っている分、説明はしよう」

その校長の一言で私は冷静さを取り戻した。恐らく1つ聞けばすべてが繋がるはず。

「先生。私は、1つ質問して、その答えを聞ければ全てが繋がると思っています。聞くべき事は…」私は少し間を空け「昨日の夜校長先生は、誰を校内に招き入れたんですか?あの怪しい格好をした人は誰ですか?正門の所に何かを置いて何かしてましたが……いえ、もう誰ではなく確認です。御縁君ですね?」

私が校長先生にそう尋ねると先生は不敵な笑みを浮かべ、ゆっくりと手を鳴らし拍手をし始めた。

「なんだ、理解できているのではないか、なら、話は早い。私は御縁家に依頼をし大成君は仕事で夜中にここに来たのだよ。置いたのはお札だ。学校の敷地の東西南北の端と中央に札を配置してもらったのだよ。君が飛べずすり抜ける事も出来なくなったのは、これが原因だ。というよりも、そうさせてもらった。普通の女の子として慣れてもらうためにね」

「申し訳ないとは思っています。ですが、これは貴女の為と俺の為でもあるんです。突然こんな理不尽な事をしてしまったのです。恨まれても文句は言いません、ですが、俺…いえ、僕はあなたを全力で支えます。僕と協力してもらえませんか?」

校長が詳細を説明してくれた後に御縁君が出会ってから面を向かって初めて、しっかりとした声で礼儀正しく喋った。だけど、なぜか視線をずっと合わせてくれはしない。やっぱり、少し怯えたような…悲しそうな表情を見せる。それが妙に引っ掛かった。

「御縁君を恨んだりはしませんが、校長は少し恨みます。冗談ですが。あ、1つ聞かせてください。私は、他の人に…普通の人にも見えるようになってるんですか?話したり触ったりできるんですか?」

2人に向かって、少し冗談を言った後に一番気になった事を聞いてみたら2人は揃って首を横に振った。

「そうですか、なら、霊感の無い人とすれ違う時は気を付けないといけないんですね。わかりました。少し、時間をください。今日は、この屋上に居ます。御縁君、先ほど君の為と私の為と言いましたね?私の事を全力で支えると…その上で協力して欲しいと……でしたら、休憩時間いつでもいいです。放課後でもいいです。1人で私の所に来てみてください」

私は納得した後に少し悲しくなった思いを飲み込むと御縁君を見据えると話しかけ要件を伝えると御縁君は少し体を強張らせた。その反応で大体わかってしまった。なぜ、今は平気で普段はあんなに表情が変化するのか、協力の意味も…支えるの意味は分からなかったけど。

「因みに今のところ飛んだり出来ないのはこの敷地内だけだ。飛びたくなったら敷地から出ればいい、後は札は見えなくなっている探しても無駄だし、仮に見つけても触ってはいけないよ。これは玲那れいな君の為に言っているのだよ」

「わかりました。ご忠告ありがとうございます。それでは、私はこれで」

2人にお辞儀をしてきびすを返し歩き出すとその目は自分でもわかるくらいに冷たい目をしていたはずだった。でも、突然納得しろと言われても無理な事もある。御縁君が何か言いたかったのか声がしたけど、その後にドアの音がしたあたり校長が止めたのかな。


その後、私は屋上のベンチに座って空を眺めてボーっと過ごしてた。何度目のチャイムが鳴り響いただろうか、因みに確認してみたかった事があったので、それだけは、試した。高い所から落ちたらどうなるかという点だったけど、さすがに屋上から地面に落ちるのは怖かった。私がやったのは屋上の更に梯子で登れる高台と給水塔のメンテナンス用の足場から飛び降りてみた。

結果としては、死んでる時点で痛みはないという事と私には重さがないという事だった。でも、重さがないのに風の影響を受けないのが不思議だった。今思うとずっとそうだった。飛んでる時も強く風が吹いても平気だった。考えても分からないから考えないようにこうやってボーっと時間が過ぎるのを待っている状態だった。


雲がゆっくりと流れて行き鳥達が飛び交う穏やかな午前が過ぎていきチャイムが鳴り響くと急に校内が騒がしくなってきた。屋上に人がお弁当を片手にぞろぞろと現れ始めてようやくお昼休憩になった事を私は気付いた。後ろからパタパタという足音と共に女の子の声が聞こえてきた。

「ねー、あそこのベンチ空いてるよ。早く行こうよ。取られる前にさぁ、早く、早く」

「走ると危ないよー。あんたそそっかしいんだから、今行くから」

周囲を確認するまでもなく声の方角からして、ベンチは私が座ってるこのベンチしかなかった。そんな事を考えている間に先に走っていた女子生徒は私の目の前に立っていた。そして、今にも腰を下ろそうとしていた。そう私に重なるように…それはまずい、非常にまずい。咄嗟にベンチをすり抜けようとしたが、何度やっても無理だった。その時にすり抜けられない不便さを思い知った。

そんな時に後ろから男の子の声が聞こえてきた。

「あ、ちょっとそこに座るの待ってもらっていい?」

「え?誰?私達が先に取ったんだけど?って、御縁君?」

「あ、うん。場所はいいんだけど」御縁君は耳元で小さく「今です」と呟くとベンチの背もたれに止まっていたてんとう虫を逃がすと「ごめんね。てんとう虫がいてあのままだったらかわいそうだったから」

私はそのやり取りの間にベンチから急いで離れると御縁君の表情と仕草を確認した後に御縁君のすぐ後ろに、彼より少し大きい男の子がいる事に気付いた……気のせいじゃなければ、目が完全に合った。そして、どこか御縁君と似ていた。黒髪だったけど、雰囲気や顔立ちが似ていた。違うとしたら堂々としている感じがした。

その後、少し離れた所から観察したけどやっぱり2人で来たようだ。つまり、私との約束である。1人で来るという目的ではなく、ただ単に友達とお昼を食べに来たという事だろうか…でも、さっきは助けれらたけど、偶然なのかな?あれが、全力で支えるうちの1つなのかなぁ。ちょっと弱いような気がするけど。


お昼休みが終わり、午後の授業も終わって、部活に入ってる人は部活を始め、帰る人は次々へ正門へ向かって歩いて行っていた。私は屋上からその様子を眺めていると屋上のドアが勢いよく開いた。そして、息を切らした御縁君が1人で姿を見せた。

「来ましたか、今度は1人のようですね。とりあえずは、呼吸を整えて落ち着いてください」

「は、はい」

御縁君は深呼吸を数回繰り替えすと真っ直ぐこちらを見たが、その表情は、どこか頼りなく、落ち着かずに何かに怯えているようだった。

「………………………」

何か喋るのか待ってみたけど、喋ろうとはするものの、後1歩なにか出ない様子だった。

「怖いんですね?おばけや幽霊や怪異それに属するモノが1人だと、2人や複数人だと平気みたいですけど、家の仕事柄それに関する仕事をしなければならない。しかし、1人では怖くて私の様な幽霊でも怯えてしまう。と言ったところですか?」

私が喋りかけると御縁君は視線を外してカクカクと頷いた。

「人が喋ってるんです!相手の目を見なさい!それでも、男の子ですか!頷くのではなく、ちゃんと声に出して返事をしなさい!」

「は、はい!ごめんなさい」

あまりの頼りなさに少し大きな声を出して叱ってしまった。でも、背筋が伸びでちゃんと視線も合った。なぜか、過去に似たような事があった気がする…デジャヴュ?

「だいたい、話は見えてきました。校長先生が3年間と言った意味も急に飛べ無くしたりすり抜けられなくしたり、御縁君と私を協力させるという意味も。御縁君は、幽霊等の恐怖感を克服する為、更にぱっと見で幽霊と分かりにくくする為、私に制限を掛け、それをサポートする事でより克服の近道をすると。私は幽霊の見える人の近くに居れるというわけね…。私のメリット少ないね」

「あ、いえ、俺の成長度合いで、色々準備させてもらっています。今は言えませんが、俺も本気ですので損は絶対にさせません」

私なりに頭の中で整理した内容を話した後にため息をつくと御縁君は1人の時で初めて真っ直ぐ私を見据えて堂々と私に言い放った。まるで告白をするかのように。

「そう、じゃあ楽しみにしてようかな。なら、私も明日から普通に教室に居たりするよ?廊下に出たりするし、中庭にも行くよ?お手洗いは行かないけど」

御縁君の発言に私は少し意地悪な笑顔で答えると気のせいか、夕焼けのせいか御縁君の顔が赤くなっているように見えた。

「は、はい。で、では、俺はこれで、失礼します」

その言葉を残して御縁君は逃げるように屋上を後にした。


それから、私達は危なっかしくも何とか週末まで乗り切った。そして、休みが明けた。

はい、というわけで、急展開かもしれませんが、ようやく物語がスタートラインに立ちそうかな?という感じになってきました。立ったのかな?いや、次で立てるかな?という感じです。校内の敷地の構図が頭の中でよく変わります。絵が描けない弱点です。ではまた次回

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ