入学式
誰も読んでないと思いますが、お久しぶりです。
他の奴もちょくちょく書いてはいるんですが、何となく忙しいという理由に逃げます。
飽きたわけじゃないですよ、頭には物語が作られていくんですけど、文字にするのがめんど…
さて、入学式ということでようやくこの作品もスタートします。よろしければお付き合いください。
私立アームヴァンデ大附属高等学校。1年C組に彼女は居た。
「さぁ、今日は入学式・・・・私の楽しみな日」
私のここ最近の趣味は写真に写る事。卒業写真はもちろん新入生の集合写真に行事の写真。可能な限り写るようにしている。
そのかいあってか、この学校では心霊写真がよく撮れると噂になっている。
今日は、新入生の集合写真を取る日、全クラスの写真に入り込む予定だ。
心霊写真がよく撮れる噂が広まって数年になるが、この学校の入学希望者は減らない。なぜなら、有名な進学校だからだ。
進学率が高ければ、多少の悪い噂も気にならなくなってしまうのが不思議だ。
先生達も最初は不気味に思ってたみたいだけど、害がないと分かると放置し始めた。
いじめと同じだ。隠せるものは隠す。知っていても知らないふり。自分に害が及ばなければ人間はそれでいいのだ。
では、当人は?必死に訴えても取り合ってもらえない。何か問題があってからしか、学校は動いてくれない。
私も同じだ。私が必死に写りこんでも誰も何も騒がない。むしろ楽しみにしている生徒もいる。
私が、事故で死んだ時も話題になったのは、1年位だ。それからは、事故現場に手を合わせる人すら居なくなった。
バスの転落事故。よくある話だ。幸いなのか知らないけど、乗客は私一人だった。そのせいで、話題性も低かった。
「はぁ~、そろそろ、入学式が始まる。体育館へ行かなきゃ」
一人で思い出に浸っていると、廊下には新入生が並び始めていた。
そして、並び終えると全員で、体育館へ向かう。
私が皆を上から眺めていても誰も気付かない。
しかし、私は一人の生徒に気付いた。一際目立っていた。
「綺麗な銀髪・・・・」
明るい性格なのだろうか、その男の子は、既に周囲の男子と笑いながら話していた。
「その髪、かっこいいね」
その男の子は、自分の髪を一束つまむと、少し嫌そうな顔をしていた。
「ああ、これ?生まれつきなんだ。両親共に黒髪なのに俺だけ白髪なんだ」
「先生に何も言われなかったのか?」
「言われたさ。生まれつきだから黒にすると逆に染髪になるって説明したら、それで終わった」
「へぇ、まあ、そっちの方がかっこいいもんな」
「あんま、気にしなかったなぁ」
「そこ!私語をやめなさい」
先生の注意でその男の子と周囲の男子は喋るのをやめ前を向いた。
「そろそろか、私も移動しよう」
私は、校舎をすり抜け、体育館へ向かい飛んでいった。
「ん?今なにか・・・」
「どうした?」
「いや、なんでもない」
「入学式、毎年出てるけど、ちゃんと保護者の写真に写れてるのかなぁ」
体育館へ着くと保護者がカメラを片手に待っていた。
有名な進学校の体育館とはいえ、他の学校の体育館とは大差なかった。違うのはキャパシティの広さだけだった。
「くぅ~このちょっとした緊張感がたまんないんだよねぇ」
私は身悶えしながら、今か今かと待ち構えていた。
「新入生入場!」
先生の言葉で新入生が正面入り口から入ってきた。
「来た来たぁ、私の出番」
私は、正面入り口に行き新入生の先頭を飛び、閃光を浴びた。
「確認しようがないけど、写れてたらいいなぁ」
そう呟き新入生が入場しきるまで飛び回るのが私の入学式の楽しみ。
それが終わると退屈な話ばかり、教室で待つのが一番。
「あ、新入生代表だけ見ておこう」
「新入生答辞、新入生代表、御縁 大成」
「はい」
先生に呼ばれて立ち上がった生徒を見てみると先程見かけた銀髪の少年だった。
「へぇ、あの子が成績トップなんだ」
その後もくるくると体育館内を回ったが、つまらない挨拶ばかりに飽きて教室へ戻ろうとした時にふとした違和感に気付いた。
「あれ?校長が変わってる。まあ、私には関係ないか」
私はそう呟き振り返ろうとした時、不意に校長と視線が合った。
「ん?気のせい?」
その後少し、校長の様子を観察したが、生徒全体を見渡すように首を動かしていた。
「気のせいだよね」
今年こそ見える人に会えるかと思ったけど、今年もだめかなぁ
「っとっとと、教室に帰る前に集合写真だった。外で待ってなきゃ」
そういえば、よく耳にする夜になるとお化けが出るって噂は、デマだった。
現に私は昼だろうが朝だろうがもちろん夜も出歩ける。眠る必要もない。人と関わりが持てない以外は自由に暮らしてる。
楽しいときもある。でも、寂しい時のほうが多い。
喜び、悲しみ、怒り、楽しみ。感情を分かち合えない。これほど寂しいことがあるだろうか。
これが、私の人間ではなくなった未練なのだろうか
「そもそも、なんで成仏できないんだろうか」
その時の私は恋をしたいという事を忘れていた。
入学式が終わると、1クラスずつ体育館から出て、カメラマンの待つ撮影会場へ向かっていった。
「これこれぇ」
私は、楽しみにしていた集合写真に写りこむために、クラスの皆と一緒に会場へ向かった。
その道中で私語を喋っていた。女生徒数人が居た。
「この学校出るんだって」
「心霊写真が撮れるんでしょ?知ってる。私達のクラスも写るのかなぁ」
「噂によると全クラスに写りこむんだって」
「ちょっと楽しみだよねぇ」
女生徒の話を聞きながら楽しみにしていると、横から声が聞こえてきた。
「不謹慎だぞ!」
その話を聞いていた男子が割って入った。
「なんでよぉ」
「心霊写真の霊の噂は聞いたことが無いのか?」
割って入った男子生徒の言葉に身体がピクリと反応し、耳を傾けた。
「霊の噂?」
「数年前この学校の学生を乗せたバスが転落事故を起こしたんだ。そのときに犠牲になった生徒って言う噂聞いたこと無いか?」
私は、そんな小さな事故の事を覚えてくれていた事に少し嬉しくなった。
「そんな事故があったんだ」
「知らないの?犠牲者は1人だって話だけど、かわいそうだよねぇ。まだ1年生だったっけ」
「そうらしい。小さな事件だったせいだったし、オレ達も5歳くらいだったから忘れててもしょうがないが」
「さすがに、そんな小さい頃の事件なんて覚えてないよ」
「ふふ、私の噂をしてますねぇ。ここにいる居るんですけどねぇ。当人が」
私は、そんな噂話を聞きつつ撮影会場へ入ると、立ち位置に悩んだ。
「最初はやっぱり中央ですかねぇ。でも、それだと面白みが・・・」
私は、ブツブツ呟きつつ良さそうな位置を探して、うろうろしていると、最初のクラスが並び終えた。
クラスの全員が並ぶとカメラマンがレンズを覗き込んだ。
「やばい、場所・・・中央でいいか」
私は、慌ててクラスの中央で最前列に座っている2人の間に位置取ると満面の笑みで待った。
A組の写真撮影が終了しB組の撮影も滞りなく終了すると、いよいよC組の順番が回ってきた。
私は毎年同じ様に写ってはいるが、誰一人として撮影時には反応がない事に若干飽きてきていた。
そんなとき、例の銀髪の少年が歩いてくるのが見えた。
「あ、そっか。このクラスだったっけ」
私は思い出したようにクラスの皆が並ぶのを待ち配置についた事を確認すると大成の隣にこっそりと陣取った。
すると、隣から小さな囁き声が聞こえた気がした。
「憑りつかないでね」
その言葉が気になって私は御縁くんの顔を見てみると御縁くんの顔は青ざめていた。
「どうしたの?大丈夫?」
届くはずのない言葉で言うと同時に御縁くんの反対側に居た女子から同じ様に声が掛けられた。
「大丈夫大丈夫、ちょっと答辞の挨拶の緊張が今来ただけだから」
御縁くんは隣に居た女子にそう説明すると青ざめた顔に赤みが差しキリッっとした表情を作り上げ正面のカメラの方を向いた。
そして、C組の撮影も終了しD,E,F組の撮影も終了し生徒達は各クラスへと戻っていった。
私も全クラスの写真撮影が終わるとどのクラス所属というわけではないがC組へ戻っていった。
私がC組に戻ってきた主な理由としては御縁くんなら私の事を見つけてもらえると思ったからだ
しかし、クラスに戻ってきてからというもの、クラス内を飛び回っても誰一人気にする気配がなかった。
それもそのはず。皆出席番号順に並んで座っている為、前後左右の人と談笑をしていた。それは御縁くんも例外ではなかった。後ろの席の男の子や両サイドの女の子と楽しそうに話していた。
そうやって、皆が談笑していると突然教室のドアが開き先生が入ってきた。
先生が入ってきたのを合図にしたかのように談笑は終わり、教室に静けさが降ってきた。
先生が入ってきてまず始まったのが、クラスメート一人一人の自己紹介だった。
何年経っても新年度の始まりは変わらないものだ。大体1年の初日に全員が自己紹介をしても覚えられるはずがない。
私は特に人の顔と名前を覚えるのが苦手だ。なぜなら、人とコミュニケーションをとることができなから。まあ、とる必要もないのだけれど。
教室内では次々と生徒がその場で立ち上がり名前、出身中学校等を喋っていった。喋り終わるとクラス内から拍手が起こる、それの繰り返しだ。
今の所興味の惹かれる人物はいない。なぜなら誰も私を認識できないから。これまでも、自然と名前と顔を覚える事が出来てはいたが卒業したらそれで終わり。人の記憶、幽霊でも同じ関わりがなくなるとすぐに記憶からなくなってしまう。
そんな事を考えながらクラスの空中をぐるぐると回転しながら浮遊しているとふと視線を感じた。
視線の持ち主を探すとその持ち主は意外なところに居た。教室の外ドアの窓から覗いていた。
最初、見慣れない人物に不審人物かと思ったが、よく見ると入学式で壇上に立っていた校長の姿がそこにあった。
とりあえず、動きを止めて校長の方を見ると明らかにこちらを凝視していた。そして、目が合うと優しく微笑んで手を振り私を呼んでいた。
しかし、それに気付いた先生が扉に近付き、扉を開けると校長先生と数言言葉を交わすと扉を閉めて自己紹介の続けさせていた。
私は、校長先生のことが気になり教室を飛び出してみると案の定校長は教室からの死角で待っていた。
「やあ、待っていたよ・・・いや、出てくると思ったよ」
校長の意外な言葉に私は驚きが隠せなかった。
「私が見えてるんですね」
これまで誰も見えなかった私を認識できる人物にようやく出会う事ができた。
「まあ、ここで話すのものなんだ。ついて来たまえ」
校長先生はそう言うと歩き出し行ってしまった。
校長先生についていくとその先には校長室があり、校長先生は校長室へ入っていった。
「入りたまえ」
私は言われるがまま校長室へ入ると部屋の中は豪華な作りになっていた。
校長が普段座っているデスクに革張りの椅子、背後には大きな窓があり、中庭が一望できる。
そして部屋の中央には応接に使われると思われる、革張りのソファが2対、対面しあっていてその中心には机がおいてあった。
「失礼します」
私はその豪華な作りに気圧され恐る恐る入室の挨拶をすると、校長は部屋に似合わないくらい気さくに話しかけて来た。
「まあまあ、そう硬くならずに、なにも除霊しようってわけじゃないしとって食うつもりもないよ。ちょっと君と話がしたかっただけなんだ。私も校長と言う立場上気を抜いて話す相手が欲しいんだ。君だって会話できる相手が欲しかっただろう?」
校長がそう言うと私は少し嬉しい気持ちになった。
(やっと・・・やっと、私が見える人、会話できる人をみつけた)
「おっと、先に言っておこう、今この学校で君の事が見えている人間は私だけではないからね。まあ、これは順を追って話していこうか」
校長はそう言うと腕を組み考え事をするように目を閉じて語り始めた。
「まずは、私の事からだね。私は今年からこの学校に赴任してきた。九重大和と言う。ここに赴任してきた理由は君の噂を聞いたからだ」
校長の九重がそこまで言うと私はふと疑問を持った。
「私の噂?私何かしましたっけ?」
私が尋ねると九重校長は少し申し訳なさそうな顔をし、口を開いた。
「ごめんごめん、言い方が悪かったね。この学校の噂を聞いたんだ。幽霊が出るという学校の噂を…しかし、その幽霊は悪さをするわけでもなく出るとしか噂の域を出なかったんだ。だから私自ら確認しに来たってわけ」
「しかし、実際に話してみると実にいい子そうじゃないか。っと、その前に念の為に名前を教えてくれるかな」
九重校長はそう言うと私の顔をまっすぐ見つめた。
「私の名前は…叶…叶玲那です」
私は少し躊躇いながら自分の名前を告げた。
私の名前を聞いて九重校長は少し安心したような顔を浮かべた。
「よかった。間違ってなかったようだ」
「君のことを少し調べていたんだ。10年前に不幸にも事故で亡くなった我が校の生徒…幽霊の正体が彼女である確信がなかったからね。本当に君だったんだね」
九重校長がそういうと、私は少し嬉くなり2回頷いた。
「10年か…長かったろう、寂しかったろう、不安だったろう、悲しかったろう」
九重校長が悲しそうにそう言うと私はゆっくりと首を振った。
「先生…確かに私は10年間孤独でした。寂しくなかったと言えば嘘になりますが、私は幽霊であるという事実を受け止めてこの10年間を過ごしてきました。そして、待っていたんです。見える人達を…心待ちにしていたんです」
私が力強くそう言うと九重校長の目から涙が頬を伝っていた。
「頑張ったんだねぇ。ぞれじゃあ、本題に入ろうか」
九重校長は涙を拭い真剣な顔に戻ると私は少し身構えた。
「君には選んで貰いたいんだ。今ここで私が祓うか…それともあと3年幽霊としての人生(?)を楽しむか」
そう言い切ると九重校長は立ち上がり背後の大きな窓から中庭を眺め私の返答を待っていた。
「ちょ…ちょっと待ってください。3年ってなんですか?」
私の口からは九重校長の予想通りの答えが返ってきたようだ。
「最初に言ったよね。君の事を見えるのは私だけではないと…その子は3年経ってしまえばいなくなってしまう」
その言葉で私は全てを悟った。
「つまり、その人は今年の新入生の1人そして3年経てば卒業してしまう…その3年間で彼と親交を深め、もう1度高校生活を最初から楽しんでから成仏するか、今ここで先生自らの手で成仏させてくれるということですか」
私がそういうと、九重校長は大きく頷いた。
「分かりました。その挑戦受けましょう…ただ、それで未練が残れば私は意地でもこの世に留まり続けます」
私の言葉を聞いて九重校長は意外そうな顔をした。私はその顔を見た後振り返り校長室を出ようとした所で再度校長の方を向いた。
「あ、一応確認したいんですけど、私の事を見える人はおおよそ検討ついていますが確認させてください」
九重校長は私の言葉を聞くと笑顔で一人の人物の名前を告げた。
「御縁 大成。困った事があったら彼か私の元にきたまえ。彼の家は陰陽師の家系だからね。見えるし、話せるし、触れもする。もちろん祓う事も」
「分かりました。それでは失礼します」
そう言い残し心に少しの不安を残し私は校長室を出て行った。
校長にああ言ったものの私は悩んでいた。
どうやって親密になろう、そもそも仲良くなったらいいことあるんだろうか…確かにちょっとかっこいい子だったけどなんだか避けられてた気がしたしなぁ。
そんなことを考えながらふよふよと浮かびながら教室に戻っていくとちょうどチャイムが鳴り最初のHRが終了し教室からはぞろぞろと生徒たちが出てき始めた。
同じ中学から来たのか、それとも早速友達になったのかいくつかのグループを見かけた。それは廊下でも教室の中でも同じだった。
私はこの光景を何度も見てきたが、憧れる気持ちは何年経っても消えずに寂しい気持ちになり教室に入ると教室の一部に集団が出来ている事に気づき、その中心を上から覗いてみると
例の奇麗な銀髪が目に入ってきた。御縁大成、彼を囲む様に男女関わらず群がっていた。
その様子を見ているとどうやら、見た目通り目立つ存在の様で、質問攻めにあっていた。そして、当の本人は少し困った顔をしていた。
耳を傾けてみると質問の内容はどうもくだらない内容だった。髪の色の事やどこら辺に住んでいるのとかシャンプーは何を使っている等…
「くだらない…どんな神経してたら本人だって言いたくない事を質問できるんだろう」
私は人とコミュニケーションが取れなくなったせいで、人間観察が趣味になりほんの少しの表情の変化からその人の気持ちが何となく感じ取れるようになっていた。
「ちょっと、助け舟を出しますか…いや、これが原因で祓われたら困るから…ごめんね。御縁くん」
私は手を出しそうになったが、思いとどまり、見守ることにした。
そして、思い返していた。死んでからの10年を4回目の高校生活のスタート、1年目は絶望しかなかった。2年目で少し前向きになれた。3年目で別れの悲しさと再度訪れる絶望。
4年目で2回目の高校生活がスタートこの姿になっての楽しみ方を少し見出せてきた。5年目自分の事を見える人を探すようになり始めた。6年目家に帰る頻度が減った。家族の悲しむ顔を見るのが辛くなってきた。
7年目3回目の高校生活リスタート、そろそろ同じ授業内容を聞くのも辛くなってきた。8年目違和感を感じた1年だった。9年目可能であれば、もう一度恋愛をしたいと思うようになっていた。
10年目現在に至る。
「もう10年か…」
思い返して私の瞳からは大粒の涙があふれ出ていた。
すると思いがけない所から声が聞こえてきた。
「だ、大丈夫?」
私は視点を移動させ下を見るとそこには、御縁大成の姿があった。
少し怯えた表情を浮かべる彼を見て私は慌てて涙を拭うと笑顔を作り大丈夫と答えると大成は少し息を吐き安心したような顔をして廊下に出て行った。
「心配してくれた…?でも、あの表情…あの時もしてた…もしかして…」
私は集合写真の時の事を思い出していた。憑りつかないでね…たしかそう言ってた気がする…
「もしかして、私怖がられてる?」
そんな予感が過り私は少しショックを受けていた。
そうこうしているうちに、廊下に出ていた生徒達が戻ってき始めた。時計を確認するとそろそろチャイムが鳴る時間が迫っていた。
少し遅れて御縁くんも戻ってきて自分の席へとついた。
今日の残りの予定は…教科書配布と終礼か…やっぱり入学式は1日が終わるのが早いね。
その後の流れは滞りなく進み生徒全員は大量の教科書を受け取り、終礼での明日よりの通常授業の開始の説明が始まり再び退屈な時間が訪れた。
私は空中で横になると天井を見上げ思考をするのをやめた。
気が付くとHRも終わったようだ、生徒達が荷物を纏めて、ぞろぞろと教室から出て行く様子が目に入った。
「そっか、もう終わったのか、皆また明日ね」
また明日ね…私はこの言葉を届くはずないのに毎日口に出していた。皆がまた明日と教室を出て行くことで自分に返事してくれていると思えたので寂しい気持ちを和らげていた。
帰る場所もなく教室の窓から家へと帰っていく生徒達を見ているとため息が自然と口から出て行った。
寂しい気持ちになり、窓を背にして教室内へ視線を戻すと教室の出入り口に一人の生徒が立ちこちらを見ていた。
「また…明日」
その男子生徒はそう言うと鞄を担ぎなおし帰っていった。
初めて返ってきたまた、明日という言葉に私は嬉しさよりも驚きの方が強かった。
教室を見渡しても生徒は誰も残っていなかった。つまり私に向けられた「また明日」そう自覚したとたん私の瞳から一筋の涙が頬を伝った。
今日はいい気分で過ごせそうな一言を胸に抱きしめると一人教室で泣いていた。しかし、これは今まで流した涙とは明らかに違った意味を持つ涙だった。
書いてみた感想なんですけど、地の文章が主人公視点だとこうも難しくなるのかと思いました。
本を読んで勉強したいとも思っているんですけど、やはりめんどくさい。
なので、これからも好きなように好き勝手にやっていきます。よろしくお願いします。