019:ダスキール
ー???町ー
石の扉は重く開いた。
「お前ら誰だ?見かけねぇ顔だなぁ」
そこからは一人の男が出てきた。
あごに髭をはやしており、口にはタバコを咥えていた。
「まぁ入れや。久しぶりの客人だ!おもてなしぐらいはするぜ?」
俺たちは男に進められるまま石の家の中に入っていた。
◆◇◆◇◆◇◆
ー石の家ー
俺は壁に木の槍を置くと椅子に座った。
家の中は木でできていた。
「ほら、これでも飲みな」
男はカップの中に濁った液体が入ったものをこちらに渡してきた。
「これは何ですか?」
「これか?名前は知らねぇけど、あいつはたしか、ココアとか言ってたな…」
「ココア?」
「とにかく飲んでみな、お嬢ちゃん。」
マイは一口飲んだ。
「アマ〜イ〜!」
俺も飲んでみた。
確かに甘い。
今まではコーヒーと水ぐらいしか飲んだことないから、これは初めての味だ。
「これはどこで?」
男はあごをぽりぽりとかきながら言った。
「あぁ…それはな、なんと言うか…まぁ…ここをたまたま通りがかった旅人がよ、これをくれたんだよ。確か名前は…クロリンとか…クロだったと思うな…」
なんていうアバウトな発言。
「そういえばおじ様のお名前は何ですか?」
マイはおもむろに聞きだした。
「俺か?俺はだな、ダスキールだ。よろしく!お前らは?」
「マイです。」
「ソラです。」
ちょっと和んだ。
「へぇ〜この辺りじゃ珍しい名前だな。」
今思えばこの”ヒト”は最初にあった男とは違う、最初の男は狂っていた。
でもこのダスキールさんは、優しい…
俺たちが住む町にもこんな”ヒト”がいれば、楽しく過ごせたような気がする。
「それよりおまえらどっから来たんだ?」
「大きな壁に覆われた南の方の町からジャングルを通ってここに」
「あそこから出てきたのか…お前らが何考えてるかわかんねぇーな。
俺だったら、逃げださねぇーけどな……
それに、あそこのジャングル危険なのに、よく生きて出られたな!」
その後もいろいろと話した。
そして一晩そこで過ごした。
「ほら起きろ、朝だぞ!」
俺たちは起きるとダスキールさんが用意してくれた朝食を食べた。
「じゃあ俺たちはそろそろ…」
「もぉ行くのか?ならこれを持ってけ!」
ダスキールさんは俺に長刀を投げ渡した。
「えっ…!でもこれじゃあダスキールさんの武器が…」
「いいんだよ。俺は普通にいろいろ持ってるし、その刀は使わねーし。
それに…それもあいつからの貰いもんだし。お前は何も考えなくていいんだよ。」
長刀はよく手入れがされてあるようで、手にしっくりなじんだ。
「忘れてた…マイちゃんにはこれを。」
ダスキールさんはマイに弓矢を渡した。
「ありがとうございます!」
そして俺たちはダスキールさんと別れ、また北に向かって歩きだした。