小柴慶人。
「ごめん、遅くなって。今、部活抜け出してきた。同じクラスの奥つばささんだよね?話って何?」
遅れた理由と名前の確認までして、律義な人だな。
30分は待った。
もう来ないかと思った。
わたしは大きく息を吸った。
「貴方が好きです。わたしと付き合って下さい」
「……ごめん。俺、付き合ってる子がいるから」
「知ってるよ。それでも好きなの。友達からでもいい。お願いします」
わたしは頭を下げた。
「頭、上げて。分かった。友達ならいいよ」
「ありがとう」
正直、友達というのが不服だったが一応礼を言った。
「あ、でも1つお願いがあってさ」
「何?」
「俺、今コンビニでアルバイトしてるんだけど、そこ人手が足りないんだ。つばささん、手伝ってくれない?」
「わたし、バイトなんてした事ない」
「大丈夫。俺が責任持って教えるから」
待てよ、これは所謂仲良くなるチャンスだ。
「分かった、やる」
「よし、決まりね。じゃ、明後日からトレーニング始めるよ」
「いいよ。何時から?」
「13時から」
「OK」
「よろしく。じゃあね」
「うん」
わたしたちは手を振り合った。
何だかこそばゆい感じがした。
その日の夜は慶人君と寝た夢を見た。
変なの。
だけど身体は重かった。