小さな世界。
兄との夢を見た朝は何故かいつも身体が軽い。
兄には言えないけれど。
朝のメニューは焼き鮭と玉子焼きだった。
お味噌汁の具は豆腐とわかめ。
「行ってきます」
「おう。誕生日おめでとう。行ってらっしゃい」
「お兄ちゃん、寝癖ついてる」
そう言ってわたしが頭を撫でると兄は照れくさそうにありがとうと言った。
今日で16歳。
わたしは今日が来たら実行しようとしている事があった。
それは校内1モテる小柴慶人に告白する事。
彼には今付き合っている人がいる。
それでも関係ないと思った。
自信なんてない。
でも絶対にうまくいかせなきゃならない。
だってわたしは1年後に死ぬから。
17歳の誕生日にわたしは手首を切って死ぬ。
そう決めたのは伯父にレイプされた時か、
両親の死体を見た時か、
この世に生まれた時か……。
とにかく決めたんだ。
こんな世界、生きていたってしょうがないから。
いい事もあれば悪い事もある。
それは分かる。
だけどわたしにはこの先も悪い事しかない。
そう決められているんだ。
兄を残して逝くのは可哀想だからまずは兄を包丁で刺し殺してから私も死ぬ。
それがわたしの、わたしと兄の人生の最後。
そう決められていた。
わたしたちが生まれる前から。