愚痴⇒散歩
「ねぇねぇエレム、聞いてよ~。今日もねあの夢見たんだけど、なんか違うんだよ。
ストーリーはほぼ一緒だよ。でもねでもね、舞台が未来都市になってた。
私は町娘じゃなくって街娘だよ。
日本語じゃわからないか。
タウンガールからシティギャルに変わってた。
で、私のお相手は、国の王子様、じゃなくて星の王子様になってた。
新婚旅行は馬車じゃなくって宇宙船よ。
で寝るのはコールドスリープカプセル。ハイテクだね~。
ただ、そこから目が覚めた後は一緒だったな。
現代に戻っての逃走劇。
でもね今日のは刺客にやられた後にもストーリーがあったんだ。
刺客にズドン、の後目覚めたのは宇宙船の中。ただし墜落中。
そこには、彼がいて、エレムもいた。
脱出不可能な中、彼は
『なるほど。俺はこの後、この者に転生するのか。よし、フェア、エレム、サポートを頼む。[時間遡行]開始だ。』
なんて訳の分からない事言ってるんだけど、私、その言葉に疑問もなく従っちゃてるわけ。
そこで、私たちは別の空間に飛んでいたの。
いくつもの布ひもが一定方向に張られている空間に。
その布ひもを辿っていき、途中、エレムと別れ、その後、彼と別れた。
そこで夢は終わり。
一体何なんだろうね?」
「ニャーニュ」《その夢。まだ続きがあるのかもしれませんねえ。》
エレムがちょっと窓の外を見て、
「ニャー」《朝早いですが、散歩に出てはいかがでしょう。》
「そうだね。散歩行こうか。」
「ニャー」《お供いたします。》
ある時から、エレムの鳴き声が副音声で聞こえている。いや、最初からだっけ?
子猫のくせに執事然と言った渋い声だ。
最初は、不思議に思ってなかったけど、ふと思ってしまった。
「なんで?」
私は妄想少女でも厨二病でもない。
至って普通の女の子…のはずだ。
ちなみにほかの猫に関しては副音声は聞こえない。
エレム限定だ。
気にはなったが、
「ニャーニューニョー」《私は、私です。何の不都合がありますか?》
と言われて、考えるのをやめた。
そう。エレムはエレムなのだ。
副音声が聞こえようとなんの不都合もない。いや、そのおかげで慰められているんだ。むしろメリットだ。
最近は渋い声に合った風貌になってきた。
首のあたりの白い模様が蝶ネクタイに見えるよ。
私の小さな執事さんだ。
朝なんかは
「ニャナ。ニャン」《朝でございます。起きてください。》
なんて起こしてくれる。
流石にモーニングティーは入れてくれないが。
「ニャフ?」《愛理須様?》
「そうそう、散歩だったね。準備もできたし。しゅっぱーつ!」