愛理須の愚痴
「エレムぅ~私、昔っからおかしな夢見るんだぁ~」
私はエレムに愚痴る。
私の名は小沢愛理須。高校3年生よ。
で、この子は黒猫のエレム、今7歳だっけ?
エレムは、私の愚痴や悩みを黙って聞いてくれる。
時にはトントンと手をあてたり、尻尾でなでなでしてくれたりして慰めてくれる。
《そういうこともあります。》《明日は頑張りましょう。》
ってね。
「変な夢だよ~。
中世の町かな。
私は町娘として生まれたんだけど、ある時、恋に落ちちゃたんだぁ。
私の働く料理屋の常連さん。
見た目、遊び人なんだけど、チャラ男じゃなくて、芯があるっていうか…
たまに町に現れては、人助けや喧嘩の仲裁なんてやってる。
『本職は何』って目で追っているうちにその人を好きになったってた。
思い切って告白したら実は彼、私に一目ぼれしていてそれでこの店に通い詰めてたんだって。
下手したらストーカーだけども、両想いだからOK。だよね。
で彼の本職。『王子様』だった。
街で桃侍みたいなことしてたんだって。
『王子様』って女の子の憧れではあるけれど、いざ結婚ってなると…平民娘に王妃生活は無理。
それに王妃になるには特別な資格が必要なんだって。
彼の事、あきらめようと思ったら彼。『王位なんて弟に押し付ける。お前の方が大事。』なんて言ってくれて。
『王子様』辞めて生活大丈夫かなと思ったら、再就職のためのリサーチとコネづくりのためもあって街に下りて来てたんだって。
それに、紹介された部下たちが優秀過ぎる。
コレなら大商会、立ち上げられるぞ。
そうそう、エレメンタルって名の執事もいたよ。
エレムが人間だったらこんな感じかなって人だった。
弟さんにも会ったけどこちらは文字どうり『王子様』でした。
『兄上をよろしくお願いします。』って頼まれちゃった。
で、すったもんだの末、結婚と相成った訳。
でもぴっくりしたなぁ。式の最中、いきなり女神様が表れて
『貴女にはこの印を授けます。』
なんて…
胸に薔薇のタトゥー貰ったけど、ナニコレって感じ。
こんなのいらないよ。温泉入れなくなる。
王妃になるための資格の印らしいんだけど。
神父様には見なかったことにしてもらって、馬車で新婚旅行。
馬車で寝て、起きたら現代に戻ってた。
『夢から覚めた』って思ってたら彼がいた。
姿は違うけど私の王子様だ。うん、絶対にそう。
でもそこにSPみたいな刺客が表れて、お姫様抱っこの逃走劇。
結局最後は、刺客にズドン。
ね。おかしな夢でしょう。
夢なんだからハッピーエンドにしてくれたらいいのにね。」
「ニャーオ。」《そうですね》
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ある夜、私は流れ星を見た。
《あー。あれにマスター、フェア様、そして『私』が乗っているのですね。》