再びエレムの独白
私の名はエレメンタル。
王子トクヤーナ様の精神の一部より生まれた人造精霊である。
私は、トクヤーナ様をマスターとし、サポートを担う存在である。
この星でいう「じいや」のようなものだろうか。
マスターから恋愛のご相談を受けた時には、少々参りました。
私には「恋愛」という心理が理解できなかったもので…
ネットワークを駆使した情報アドバイスが役に立たのか無かったのか、無事にフェアリス様とのご成婚までこぎつけましたが。
私は制御回路への憑依能力を用い、あらゆる活動体を乗りこなしマスターのサポートを行ってきました。
…執事アンドロイド…宇宙船…脱出ポッド
初めての試みでしたが、この星の生命体に憑依できたことは誠に行幸でした。
マスターとの[時間遡行]に同行した際に初めて知ったのですが、この生命体は私の転生先としての運命を持っていました。
「もう一人の私」という存在だったのですね。
偶然?…いや、運命だったのでしょう。
運命と言っても状況で色々変わっていきます。
マスターとフェアリス様の転生先の運命も、あの時見えていた未来での交点が無くなる可能性があります。
私がここで降りるということで、ここでフェアリス様と私が接触することは確定しています。
後は、フェアリス様をマスターの元へ導くだけです。あの交点へ向かって。
「かわいい。ねぇおばちゃん。この子貰っていい?」
「いいのかい?この子だけ黒猫だよ?」
「魔女宅みて黒猫にあこがれてたんだ。ねえいいでしょ。」
「いいけど、お父さんの許可貰ったのかい?」
「絶対いいていうもん。お父さん私にダダ甘なんだから。絶対うちの子にする。」
「ったく。そうだね、あれも動物好きだからね。お父さんには私から話、付けとくよ。」
「やったー!そうすると名前は『ジジ』…とはちょっと違うか?……『エレム』?…うん。お前は今日から『エレム』よ。よろしく、エレム。」
「ニャー」




