そして、時を遡る
「警告!警告! 緊急事態によりコールドスリープの解凍を行う」
私は、突然の攻撃に警報を発した。
今、船内には誰もこの警報を聞くものはいないのだが仕様なので仕方がない。
現段階で事態解決の判断権限が私にはないので緊急にマスターの指示を仰ぐ必要がある。
全身解凍は時間がかかるが意識解凍のみならば数分で終わる。
私は、感応回路を準備し、マスターの覚醒を待った。
『エレム。なにがあった?』
{何者かの攻撃を受け、当船はγ星への墜落コースを取っています。軌道回復不能。さらに、当攻撃によりマスターのカプセル排出装置も破損。コールドスリープ解凍後の脱出艇への避難も時間的に不可能。}
私は絶望的な状況を告げた。
『フェアの意識解凍は?』
{フェア様のカプセルは意識解凍回路が破損しております。全身解凍は可能なのですが…}
『…』
少しの沈黙
《起きてますよ。》
{何故でしょう?ってそういうことですか。魂の融合による強制覚醒ですか。相変わらずフェア様は無茶をなさる}
『なるほど。俺はこの後、この者に転生するのか。よし、フェア、エレム、サポートを頼む。[時間遡行]開始だ。』
マスターの能力解放に合わせ、マスター=私=フェア様 へとパスをつなぐ
マスターの転生先より伸びる未来への道筋
その先にある交点から過去へ伸びる2本の線
その3つの線を、過去へ遡る。
途中1つの線が終端を迎える。
《エレムはここから私と同行するのね》
{私はここでしばしのお別れです。それではここからフェア様を守りつつ、マスターをお待ち申しております。}
『ああ、又な』