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オッサン(36)がアイドルになる話  作者: もちだもちこ


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65、困った実羽千の打診。

夜の更新です…m(_ _)m


大崎ミハチは、今日も今日とて仕事に追われている。

一時の混乱はあれど、ミロクの姉であるミハチは持ち前の『自分をコントロールする力』を駆使し、なんとか通常運転にまで持ち直した。

彼女の鉄の意志は、ヨイチと会っている時も崩さずにいられる。ただし、二人っきりにならなければ……だが。

所詮は鉄だ。ミスリル(ヨイチ)には敵わないのである。


「大崎さん、ちょっといいかい?」


部長……といっても直属の上司ではなく、商品事業部部長の相川に呼ばれて首を傾げる。どちらかというと開発部門とのやり取りが多いミハチの部署とは、ほとんど関わらないはずだ。

パーテーションで区切られた打ち合わせスペースで、相川が少し焦って座るよう促す。


「何かありましたか?大分焦っているようですが……」


ミハチが苦笑して言うと、相川はスマンと言って頭を掻く。


「大崎さんが、如月事務所にスキンケアの商品サンプルを持って行っていると聞いてね」


「……ええと、モデルやタレントといった方からの購入や、SNSでの紹介をしてもらっていたようなので……問題でしたでしょうか?許可は得てましたが」


「いやいや、それがどうとかじゃないんだよ。うちで進めている新商品のことなんだ」













「「「CM!?」」」


「まだ打診という段階なんだけどね」


いつものように事務所の会議室に集まったメンバーは、思わず驚きの声を上げた。

ヨイチが少し困ったように微笑んでいる。その笑顔にキラキラが混ざっているのは、隣にミハチがいるからだろう。シジュは小声で「爆ぜろ」と言っている。


「普通なら私から持ちかける話でもなかったんだけど、その部長さんが私の身内がいるのならって、色々情報を教えてくれたの。ちょっと面倒な事になってて……」


ミハチが聞いた所によると、スキンケアの新商品で春頃に売り出す予定らしい。CMに誰を起用するのか揉めていたが、一部のお偉方の奥さんや娘さんが、今夢中になっているアイドルがいるという。


「まさかそれが俺らとか言わねぇよな」


「まさか違うとは思ってないでしょ?ここまで言ってるんだから」


「おぅふ……」


皆が不安になっているのは「誰を起用するのか揉めていた」のと「お偉方の家族が344(ミヨシ)のファン」という所だ。数ヶ月ほど地道に進めていた企画に、お偉方の横槍ほど面倒で厄介な事はない。口出しの内容が、CMに起用する芸能人の事だけなのが不幸中の幸いだ。

ミハチに情報をくれた部長さんは、344の資料集めに奔走しているらしい。


「姉さん、まだ決定じゃないでしょ?」


「その部長……相川さんには都度連絡をもらうようにしているけど……何とも言えないわね」


「これって、プロデューサーさんが絡んでたりするのでしょうか……」


フミが不安そうにミハチを見る。視線を受けた彼女はその整った顔を思いっきり顰めさせた。


「どうかしらね。絡みたかった……ってところじゃないかしら。この件だけじゃなくCMの話は持って来るんじゃない?」


「それなら、今回の話は前向きに進めていこう。ミハチさんは相川部長さんに喜んで受けますと伝えて。あと僕達の資料とか宣伝媒体も渡しておくから」


「いいの?」


「こちらとしては願ったり叶ったりだよ。プロデューサーにも伝えておこう。基本的にどうやって売っていくのかは任せられている所もあるからね」


ヨイチのキラキラな笑顔を向けられたミハチは、少しだけ頬を染めて「じゃ、早速資料受け取ってくりゅ!」と最後少々噛みながら、会議室をバタバタと慌ただしく出て行った。

無言で肩を揺らすヨイチと、舌打ちしているシジュ。ミロクはフミに対して、真剣な顔を向ける。


「フミちゃん分かっただろう。これが『公私混同』ってヤツだよ」


「こ、これが『公私混同』!?そんな……叔父さんはそんな事するわけ……」


「目を背けちゃいけない。俺の姉さんを見ただろう?ああなったらもう手遅れだ」


「ごめんなさいミロクさん!」


「いいんだ!フミちゃんの所為じゃない!」


「はいカットー」


妙に息の合ったミロクとフミの小芝居にシジュは棒読みでつっこむ。

ヨイチは苦笑いでスマホを操作すると、尾根江とCM出演について話し合いをするスケジュールを組むのであった。






お読みいただき、ありがとうございます!


ミハチさんは有能なのです。

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