38、突然のデート?弥勒と芙美。
砂糖注意です。苦手な方は薄目で読んでください。
ゆったりと風呂を楽しんだミロクは、スポーツジムの入り口に見慣れた茶色のポワポワ頭を見つける。
「あれ?フミちゃん?」
「ミロクさん!叔父さんからここにいるって聞いて……オフなのにトレーニングしてるのはどうかと……休むのもお仕事ですって……あの、だから……」
わずかに頬を赤らめながら、なぜか緊張して辿々しく話すフミ。
今日はマネージャーであるフミも344(ミヨシ)と合わせてオフだと聞いていたが、かっちりしたジャケットを羽織っているのを見ると、どうやら彼女はヨイチと仕事をしていたようだ。
(って事は、シジュさんを呼び出したのはヨイチさんかな……)
ミロクは考え事をしていたため上にあった目線を下げると、茶色のトイプードルのようなポワポワした髪が揺れていた。
思わず手を伸ばしナデナデする。
「ほえぁ!?」
「フミちゃん、付き合ってくれない?」
「え……ええええええええ!?」
「ご飯食べに行こう。一人だと色々トレーニングしたくなるから休めないんだ。一緒にいてくれたら嬉しいな」
「あ……はぁ……分かりました……」
がっくりと膝をつくフミ。
「ど、どうしたのフミちゃん!?」
「……ナンデモナイデス」
視線を感じたミロクが後ろを振り返ると、ジムのトレーナーさんや他の会員さん達まで床に膝をついていた。
一体何なんだと思ったが、今重要なのはフミだからオーディエンスは放っておく。
ミロクはしゃがみこむフミに手を差し出す。
「大丈夫?フミちゃん」
「……はい」
フミは差し出された手を遠慮がちに掴むと、フワッと持ち上げられてミロクの胸にすっぽり収まった。
お風呂上がりの石鹸の香りと、ほんのり上気したミロクの顔がすぐ側まで迫る。
「ふっ、ふみょおおおお!!ミロクさん、近い!!近いです!!」
「あはは、フミちゃんは面白いなぁ。ほら行くよー」
そのままフミを抱き寄せてスタスタ歩き出すミロク。「みょわああああ」という声は遠くなっていき、ジムの受付前でそれを見守っていたオーディエンスは、ミロクの至近距離に耐えられないであろう、フミの無事を祈る事しか出来ない。
それでも彼らは生温かい目で二人を見送るのであった。くそ、イケメンが。
「フミちゃん、起きてフミちゃん」
「はわっ、私夢を見てた?」
「ええ?どんな夢?」
「お風呂上がりのミロクさんが馬鹿みたいにフェロモンをだだ漏れにしてるんです」
「何それ」
テーブルを挟んだフミの目の前でメニューを開きながら笑うミロク。その笑顔も素敵だとぼんやり眺めていたが「フミちゃんも注文しなよ」というミロクの言葉に我にかえる。
「え?あれ?」
「近所だからって俺ジャージで来てたから、ファミレスになっちゃってごめんね」
「あ、いいえ、その、大丈夫なので!」
どうやらフミは朦朧としてたため、ミロクはメニューの内容が一通り選べるファミレスにしたのだ。フミは申し訳なさそうな顔をしているが、間違えてはいけない。フミがこうなったのは風呂上がりのミロクが自重しなかったせいである。
そんなミロクは暢気にメニューを選び、店員に注文してニッコリ微笑んで、頼んだハンバーグセットの付け合わせが豪華になっていた。フミの頼んだパスタにはセット内容には無いサラダがついていた。
恐るべきはイケメンパワーである。
フミはパスタをもきゅもきゅ頬張っていたが、目の前にいるミロクを直視出来ずにいる。
風呂上がりのミロクは凶器でしかない。ジャージ姿でのんびり寛ぐ彼は、周りの客からの視線を集める。
それでも騒ぎにならないのは、地元ならではの心遣いであった。
「ミロクさん」
「ん?」
「メガネは?」
「持ってるよ」
まだメガネをかけてくれたら、ここまでじゃないような気がする。確実に今よりもマシだろう。
「何でかけないんですか」
「かけたらよく見えちゃうから」
「その方が良いじゃないですか」
「無理無理。今はぼやっと見えてるだけでもフミちゃん可愛いのに、はっきり見えたら俺どうなっちゃうか分からないよ?」
そう言って、甘く蕩けるような笑みでフミを見つめるミロクを、思わず顔を上げてダイレクトに見てしまったフミは、顔を真っ赤にしてテーブルに突っ伏してしまう。
そのままウーウー呻くフミの頭を、ミロクは何故こうなったかよく分からないまま撫でてやった。
「フミちゃん?」
「そういうのは反則です」
「ごめんね?」
「ずるいです」
「次はファミレスじゃなくて、おしゃれな所に行こうね?」
「……」
「返事は?」
「…………ハイ」
よろしい!と笑うミロクに、フミは顔を上げてしょうがないなぁと笑い返すのであった。
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