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オッサン(36)がアイドルになる話  作者: もちだもちこ


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34、トークショーその2。

「さて、一度俺たちはお色直しに入ります。挿入歌を歌うアニメのキャラクターですよー」


 どよめく客席。主に男性からの発信が多い。


「初公開だって。すごいね。ここにいる人たちだけが見れる特別……だね」


 どよめく客席。今度は女性の声が多い。


「イイコで待ってろよ。かわい子ちゃん」


 動作のない口元だけのエアキスを送るシジュに、各所で熱い吐息が漏れている。ヨイチがシジュの襟を引っ張って、ミロクは手を振りながら舞台袖に捌けていった。







「……すごいですね。お客さん」


「あれ、全員ファンとか?……まさかだよね?」


「なんか熱気がすげぇよな。あれが全部俺らに向いてるんだぜ?」


 ハァーっと息を吐く三人。

 衣装を持ってきたフミが、慌てて着替えを押しつける。


「これ、すぐ着てください!衣装の着方分かりますか!?」


「大丈夫だよ」


 ネクタイを外して一気に脱ぎ始めるミロクに、フミは「ひゃぁぁぁ」と謎の音を発しつつ外に出てしまう。

 ポカン顔のミロクと、苦笑いのヨイチ、ニヤニヤ笑うシジュは、主人公達の敵役というアニメのキャラクターになるべく、あーだこーだ言いながら身なりを整えるのであった。










 騒めく会場内は再び暗闇となり、何者かの声が響く。


「私はこの青き星を制し、神に捧げ、王になるのです」


「王子に忠誠を」


「忠誠を」


 柔らかな黒髪に青い瞳、白を基調にした短めのマント立て襟に前合わせの金ボタン。縁や袖に金色の飾りが施された、軍服に身を包んだミロクがライトアップされる。


 続いて、アッシュグレーの長めの前髪をかき上げ灰色の瞳を見せ、鮮やかな青の立て襟に前合わせの銀ボタン。クロックコートを身にまとうヨイチがライトアップされる。


 そして、ウェーブのかかった髪を後ろに流し紫の瞳を眇め、日に焼けた肌に赤を基調とした立て襟の軍服には銅色のボタンが付いている。着崩して胸から腹まで素肌を見せている、シジュがライトアップされて会場は大盛り上がりになる。


「シジュ、君は騎士なのだから、服くらいまともに着ること」


「面倒くせぇ。王子を守りゃいーんだろ?」


「二人とも、この星の皆さんが見てますよ。とにかく私達はこの星を制圧する必要があります」


 言い合う二人の部下を諌めるミロク。それを受けて、宰相のヨイチは困ったような笑顔で彼に言う。


「でも王子、地球って意外と大きいよ?三人で何かするなんて無理じゃないかな?」


「それは……そこを考えるのが宰相のヨイチさんでしょう?」


 憂いを帯びた顔も麗しいミロクは、縋るようにヨイチを見る。こういう表情をさせると男女問わず助けたい気持ちにさせるのは、ある意味彼のカリスマなのかもしれない。


「僕なの?最年長は労って欲しいものだね。シジュに任せれば良いんじゃないかな」


「知らん。俺は戦えればいい」


 ふとシジュは遠くに視線をやる。騎士としての警戒の網に何かが引っかかったようだ。その表情を見るだけで、ミロクとヨイチも周囲を警戒する。


「どうやら私達に対抗する戦力があるようですね」


「そう簡単にいかない……ってことかな」


「女三人?」


 人には聞こえないくらい遠くで響く起動音に、三人は乗ってきた機体に乗り込む。

 遠くから彼女達の歌が聴こえる。ミロクはその歌を聴いて甘く微笑む。


「歓迎の歌……ですか。音に乗せて私達の脳に何かの影響を与えようとしていますね。これは是非ともお返ししませんと……」


「楽しそうだね王子」


「歌うのか?」


「ええ、勿論です。彼女達に甘く優しい、蕩けるような恋の歌を届けましょう」


 甘く微笑むその瞳の青は、どこか冷たく光っていた……。



「皆さん、この続きはテレビ放映でご覧ください」









 今回のイベントは、成功と言って良かった。

 慌ただしく準備不足の感もあったが、三人の天性の才能のようなもので上手くこなせた。

 イベントの終わりは、344が握手で見送るというもの。

 ファンと握手でお見送りしていたミロクは、目の前にサングラスをかけた茶髪の男性に立たれていた。


「貴方は、さっきの……」


「今日のイベントとても良かったです。参考になりました」


「参考?」


 その男性はサングラスをとって、ミロクにニッコリと微笑む。驚くミロクに、ヨイチとシジュが視線を送って来る。

 男性はすぐにサングラスを再びかけた。


「今日はそっちのお客さん多いですから、一応です」


「声優の大野光周さん……なぜここに?」


「もちろんファンだからです。あと、ミロク王子役に決まったので、役作りのためです。あ、後がつかえてますね、控室に伺っても?」


「……分かった」


「ありがとうございます!では!」


 大野は握手すると、嬉しそうに会場から出て行った。その嬉しくてたまらない様子に、フミとの一件で警戒していたミロクは少し混乱しつつ、その後のファンとの対応に追われていくのであった。








お読みいただき、ありがとうございます!

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