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オッサン(36)がアイドルになる話  作者: もちだもちこ


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42/353

33、トークショーその1。

遅くなりました!

 真っ暗な空間に、パッと光が射す。

 アコースティックギターのソロから始まり、スーツ姿に帽子を片手で押さえてポーズをつける三人。

 スポーツジムの発表会で披露したアニメ「月刊ほにゃらら」のオープニングテーマを甘いテノールで歌うミロクと、よく通る声でコーラスするヨイチとシジュ。

 複雑なステップは前回よりもバージョンアップしていて、シジュの鬼コーチのおかげで完璧に仕上げられていた。

 ノリの良い曲に会場は大いに盛り上がる。

 ミロクの手拍子で、会場は皆手拍子をする。そんなファンとのやり取りができて嬉しそうに笑うミロクに、客席から上がるのは悲鳴に近い歓声。



 二曲目はミロクのピアノ伴奏で、ヨイチとシジュがゆるりと歌う。

 某アニメのエンディングにもなった『FLY ME TO THE MOON』。ハモる二人にミロクのピアノが追いかけて、三人の息の合うところを見せつけられる。

 バリトンを高めに出すため、壮絶な色気のある声となっていた。客席のファンへの効果はばつぐんだ。



 三曲目は「あの伝説の動画」で歌っていたアニソンを披露する。

 シジュとヨイチはバックダンサーとなり、少しずつ三人の動きを合わせながらミロクはフルコーラス歌う。

 女性ボーカルの歌を、音階を変えて朗々と歌うミロクは、ただただ格好良かった。

 ミロクが視線を客席へ移すたびに、所々で「ティッシュ…」という声が聞こえるのは仕様のようだ。



 百人に満たないはずの会場で、体が震える程の大歓声とたくさんの拍手を貰う。

 笑顔でお辞儀をする三人に、幕がふわっと下りた。












 トークショーに入るため、拍手とともに再登場し、椅子に座る三人。ミロクだけはまだ息が上がったままだ。


「はぁ、はぁ、改めまして!ミロクです!」


「ヨイチとー」


「シジュだ」


「三人そろって」


「「「344(ミヨシ)です!!」」」


「今日は、ラジオ『ミヨシ!』公開生放送と、344トークショーイベントにご来場いただき」


「「「ありがとうございます!!」」」


 会場であがる歓声。「ミロク君、休んでー」と、心配する声が上がる。


「だ、だいじょうぶ、です、体力、ないだけ……」


「一番年下なのにねぇ、酸素あるかな?」


「お、サンキュ。ほらミロクこれ吸っとけ」


 スタッフから携帯酸素を受け取ったシジュがミロクに渡す。慣れない携帯酸素にハスハス?しているミロク。「可愛いー」「王子様…」と声がかかる。

 ヨイチはタオルで自分の汗を拭うと、もう一つのタオルでミロクの汗も拭ってやり、シジュは水を持っていく。そして客席からは何か違うイベントへの情熱が迸っていた。落ち着け。


「ごめんね、なかなか息が整わなくて。僕ら若くないからね」


「んだな。まさかこの歳でアイドルデビューするなんて、想像すらしてなかったからな」


「プロデューサーから聞いた時、誰も本気にしてなかったですね」


「ラジオやるって聞いた時に、やっと『プロデューサー本気でアイドルデビューさせたいのかも』って思えたよな」


「元はミロク君にモデルをお願いした僕が始まりなのかな?でも話題の動画はその前からだったよね?」


「あれは間違えてサイトにアップしちゃったんですよ。今はあれで良かったんだって思います」


「まだホストやってた時の俺も知ってるくらい有名だったぞ。素人だと知ってビックリした」


「ミロク君にはたくさん才能があるからね。これからが楽しみだね」


「うう、二人して誉め殺しとかやめてください……」


 真っ赤にした顔を手で覆うミロクに、その顔をつつくシジュ。ヨイチはイイコイイコとミロクの頭を撫でていた。「ヨイチさん私もー」の声に「後でねー」と手を振りかえすヨイチに客席からまた悲鳴が上がる。


「そういえば344の手作りのグッズ、あれスゲーな!」


「団扇は昔を思い出すなぁ。今日は規制がないから色々作ってくれたんだね」


「横断幕の人たちは最後列にいますね。すごい気づかいが出来てて素晴らしいです!俺、こういうの弱いんです!」


「泣くなミロク。俺もつられるだろうが」


「シジュもこういうの意外と弱いよね」


「うっせ」


 横断幕は年配のファンの人達だ。イベント終了後に絶対声をかけると心に決める三人だった。





お読みいただき、ありがとうございます!

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