33、トークショーその1。
遅くなりました!
真っ暗な空間に、パッと光が射す。
アコースティックギターのソロから始まり、スーツ姿に帽子を片手で押さえてポーズをつける三人。
スポーツジムの発表会で披露したアニメ「月刊ほにゃらら」のオープニングテーマを甘いテノールで歌うミロクと、よく通る声でコーラスするヨイチとシジュ。
複雑なステップは前回よりもバージョンアップしていて、シジュの鬼コーチのおかげで完璧に仕上げられていた。
ノリの良い曲に会場は大いに盛り上がる。
ミロクの手拍子で、会場は皆手拍子をする。そんなファンとのやり取りができて嬉しそうに笑うミロクに、客席から上がるのは悲鳴に近い歓声。
二曲目はミロクのピアノ伴奏で、ヨイチとシジュがゆるりと歌う。
某アニメのエンディングにもなった『FLY ME TO THE MOON』。ハモる二人にミロクのピアノが追いかけて、三人の息の合うところを見せつけられる。
バリトンを高めに出すため、壮絶な色気のある声となっていた。客席のファンへの効果はばつぐんだ。
三曲目は「あの伝説の動画」で歌っていたアニソンを披露する。
シジュとヨイチはバックダンサーとなり、少しずつ三人の動きを合わせながらミロクはフルコーラス歌う。
女性ボーカルの歌を、音階を変えて朗々と歌うミロクは、ただただ格好良かった。
ミロクが視線を客席へ移すたびに、所々で「ティッシュ…」という声が聞こえるのは仕様のようだ。
百人に満たないはずの会場で、体が震える程の大歓声とたくさんの拍手を貰う。
笑顔でお辞儀をする三人に、幕がふわっと下りた。
トークショーに入るため、拍手とともに再登場し、椅子に座る三人。ミロクだけはまだ息が上がったままだ。
「はぁ、はぁ、改めまして!ミロクです!」
「ヨイチとー」
「シジュだ」
「三人そろって」
「「「344(ミヨシ)です!!」」」
「今日は、ラジオ『ミヨシ!』公開生放送と、344トークショーイベントにご来場いただき」
「「「ありがとうございます!!」」」
会場であがる歓声。「ミロク君、休んでー」と、心配する声が上がる。
「だ、だいじょうぶ、です、体力、ないだけ……」
「一番年下なのにねぇ、酸素あるかな?」
「お、サンキュ。ほらミロクこれ吸っとけ」
スタッフから携帯酸素を受け取ったシジュがミロクに渡す。慣れない携帯酸素にハスハス?しているミロク。「可愛いー」「王子様…」と声がかかる。
ヨイチはタオルで自分の汗を拭うと、もう一つのタオルでミロクの汗も拭ってやり、シジュは水を持っていく。そして客席からは何か違うイベントへの情熱が迸っていた。落ち着け。
「ごめんね、なかなか息が整わなくて。僕ら若くないからね」
「んだな。まさかこの歳でアイドルデビューするなんて、想像すらしてなかったからな」
「プロデューサーから聞いた時、誰も本気にしてなかったですね」
「ラジオやるって聞いた時に、やっと『プロデューサー本気でアイドルデビューさせたいのかも』って思えたよな」
「元はミロク君にモデルをお願いした僕が始まりなのかな?でも話題の動画はその前からだったよね?」
「あれは間違えてサイトにアップしちゃったんですよ。今はあれで良かったんだって思います」
「まだホストやってた時の俺も知ってるくらい有名だったぞ。素人だと知ってビックリした」
「ミロク君にはたくさん才能があるからね。これからが楽しみだね」
「うう、二人して誉め殺しとかやめてください……」
真っ赤にした顔を手で覆うミロクに、その顔をつつくシジュ。ヨイチはイイコイイコとミロクの頭を撫でていた。「ヨイチさん私もー」の声に「後でねー」と手を振りかえすヨイチに客席からまた悲鳴が上がる。
「そういえば344の手作りのグッズ、あれスゲーな!」
「団扇は昔を思い出すなぁ。今日は規制がないから色々作ってくれたんだね」
「横断幕の人たちは最後列にいますね。すごい気づかいが出来てて素晴らしいです!俺、こういうの弱いんです!」
「泣くなミロク。俺もつられるだろうが」
「シジュもこういうの意外と弱いよね」
「うっせ」
横断幕は年配のファンの人達だ。イベント終了後に絶対声をかけると心に決める三人だった。
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