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300、巻き込まれ系たちのそれぞれ。

お待ちいただき、感謝でございます。

ありがとうございます。

もう少し書けそうです。


「結局は自分次第だと思っているんだ。特に俺が選んだ道は『芸』に関することだから。それがどんなものであっても、反応をもらえたら勝ちだと思ってるんだ」


「ミロクさん……」


「周りに分かってもらえなくてもいい。自己満足でもいい。ただ本気でやっていけば、いつか周りが『俺たちの本気』に巻き込まれてくれるようになる……なんて、ヨイチさんの受け売りだけど」


 それはないだろう、と佐藤は思った。

 ミロクは、周りからもらった言葉を自分なりに吸収し、それを生きた言葉として誰かに発信することができているのだろうと。


「さすがミロクさんです。自分はなかなか、その域には達しないというか……」


「そんなことはないよ!」


 不意に大きな声を出したミロクは、それを恥じるように軽く頬を染めると佐藤から目をそらす。


「佐藤さんは、大人っぽいというか、俺には無いものをたくさん持っていて、すごく羨ましいです」


「そ、そうですか?」


「フミちゃんもきっと、大人な男って感じのほうに惹かれちゃうと思うし、俺なんかまだまだで……」


「落ち着いてくださいミロクさん。そもそも自分にとって誰かと恋愛をするとか、まだそういう次元じゃないといいますか……」


「次元!?」


 佐藤の言葉に強く反応したミロクは、彼にずずいと顔を近づける。思わずのけぞる彼を気にすることなく自分の世界に入り込み、何やらブツブツと呟き始めるミロク。


「まさか、佐藤さんは次元の違うところに嫁が……? え、まさかそういうタイプだったの? 生まれる次元を間違えたとか、本気で語ってた某女性編集者さんと同じこと言い出しちゃうの?」


「ミロクさん?」


「ダメですよ佐藤さん! 次元は越えられないものです! そんな不毛な(すぱこーん!)痛いっ!!」


 いつもより強めに引っ叩かれたミロクは、後ろにいるスリッパを持ったタレ目の色男を涙目で睨む。

 その後ろには切れ長の目をさらに細めて苦笑するスパダリもいる。


「ミロクお前、妙な暴走の仕方して困らせてんじゃねぇよ」


「そもそも佐藤君はミロク君よりも年下なんだから、ちゃんとお兄ちゃんしないとダメだよ」


「いやヨイチのオッサン、それもおかしいぞ?」


 佐藤は今年で34になるため、ミロクの2つ年下となる。

 冷静になったミロクは「なるほど」とうなずく。


「そうですね。ちゃんと兄として、佐藤さんを守っていかないとですね」


「いやミロクもおかしいって。さてはお前、落ち着いたように見えて落ち着いてねぇな?」


「あの、自分……」


 話の流れがおかしな方向にいっているため、オロオロする佐藤の肩に、ヨイチは軽く手をのせる。


「気にしなくていいよ。この二人はいつもこうだから」


「なにオッサンひとりで常識ぶってんだよ!」

「ずるいですヨイチさん! 俺が先に佐藤さんと仲良くなったのに!」


 三人の息の合った?やり取りに、佐藤は肩の力が抜けていく気持ちになっていた。

 たぶん、これが彼らなのだろう。

 太陽のように誰よりも燦然と輝くアイドルであり、木漏れ日のように柔らかな光で癒してくれるオッサンであり、そして……。


「事務所の所属モデルやスタッフ全員が、僕たちの仲間であり家族だと思っている。何かあったら遠慮なく頼ってくれていいんだよ」


「俺なんか、どうしようもねぇことばっかやってて、経験だけは豊富だからな。そういう系は任せとけ」


「佐藤さんはすごい人だと思う。でも、困ったことがあれば溜め込まないで何でも言ってほしいんだ。きっと解決するから……ヨイチさんが」


「ははっ、ありがとうございます」


 最後の最後で長兄に責任を押し付けたミロクに、佐藤は晴れやかな表情で礼を言う。

 佐藤は思った。


 そうだ。今の自分は如月事務所で働くいちスタッフだ。

 前にヘルプで舞台に出た時とは違って、あのダンスは恥ずかしかった。それでもミロクたちと仲が深まったこともあり、いい経験をさせてもらえたと思おう……と。


 しかし彼は知らない。

 後日、再び会社命令で『可愛すぎる振り付け』で踊らされることを。(色々な意味で)







 薄暗い部屋の中、壁一面に浮かび上がるサングラスの男。

 プロジェクターの光が映し出す、派手派手しいオレンジのスーツは彼の「鎧」でもあった。


 それと向かい合うようにして、豪奢な椅子にゆったりと腰をかけるのは舞台俳優のような男装の麗人である。


「それで? 一体何を企んでいる?」


「企んでなんて、ひどい言い方ねぇ……面白そうだから、噛ませてあげてもいいわよって親切心たっぷりのア・タ・シ・に♡」


「オッサンがハートマークをつけて話すな。許されるのは36の彼までだ。むしろつけて欲しい。動画を要求する」


「あら、あの子意外と男気溢れているからやってくれるかしら……それにアンタ、ずいぶん趣味が変わったみたいね?」


「輝くのは年齢だけではなく、本人次第だって教えてもらったからね」


「ふふん、まぁ及第点ってところかしら」


「そちらにどう判断されようと、私は私の道を進むだけだ」


 すると、デスクに置いてある端末の画面が光っている。

 浮かび上がるメール受信の文字をタップすれば、浮かび上がるのは企画書という件名だ。


 サングラスを光らせたオネエは口角を上げ、ニンマリと笑ってみせる。




「もっともっと輝く男たち、アンタも見たいでしょ?」




お読みいただき、ありがとうございます。

今回ミロクが説教くさいのは、お兄ちゃんぶっているからですw

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