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286、北海道ライブで飛ばすオッサンたち。



 今日のオッサンなアイドル三人は、最初からかなり飛ばしていた。

 ライブ会場いっぱいに響く黄色い声は、上半身裸になった彼らの鍛え抜かれた胸筋や腹筋に向けられている。首にかけたタオルが、胸のとある部分をチラ見させているのがファンにはたまらないのだろう。


「今日は!! いっぱい楽しんでねー!!」


 艶やかな黒髪から汗をしたらせ、薄っすらとピンク色に染まった白い肌をさらけ出したミロクは、客席に向けて笑顔で大きく手を振る。


「北海道は!! 最高だよ!!」


 切れ長の目を細めて、ヨイチはいつになくテンションを高めに叫んでいる。彼の元気な様子にファンたちも大いに盛り上がっていく。


「愛してるぜ!! 俺のかわい子ちゃん!!」


 汗だくのシジュも負けじと客席へ手を振っている。

 さらに投げキッスを飛ばしまくる彼を見て、ヨイチがさっそくツッコミを入れる。


「こらシジュ、一人だけズルイよ。僕だってファンの皆を愛しているのに……」


「ズルイですよ! 俺だって皆さんをいっぱい好きなのに!」


「おいミロク、それは言い方が違うぞ」


「え? 何がですか?」


 不思議そうな表情で首をこてりと傾げるミロクから色香が漏れ、客席の各所から声にならない声が漏れる。漏れ漏れである。

 そんなミロクの肩を抱き寄せ、シジュは彼の耳元に何事かを囁いた。再び声にならない声と何かが漏れる。もうとまらない。


「ほら、正しい言葉で言ってやれ」


「はいシジュさん! ファンのみんなっ! 俺っ……俺っ……みんなのこと……いっぱいちゅきー!!」


 悲鳴の「キャー!」が、「ギャァァァァ!!」に変わる時、それは今である。(古い)

 果たしてシジュの言う「いっぱい好き」の正しい言葉がそれなのかは不明なのだが、観客が狂喜乱舞しているのできっとそれが正しいのだろう。

 正しさとは、常に移ろいゆくものなのである。


「さて、ここでちょっと休憩だよ。メイキングムービーを流すから、君たちも座って休んでいいからね」


「俺らはちょっくらお色直しってやつだ。寂しくても泣くなよ?」


「いい子で待ってたら、ご褒美がもらえるかも? ヨイチさんから」


「ミロク君のおねだりには勝てないなぁ」


「お兄ちゃーん、俺にもご褒美ー」


「ボーナスカットかい?」


「なんでだよ! そういうM的なご褒美じゃねぇよ!」


 ワチャワチャしながらオッサンたちは舞台裏へ向かうと同時に、会場の照明が落とされた。







 ドアに貼られた紙には『344(ミヨシ)控え室』と書いてある。

 緊張しているのか、遠慮がちにノックする小さな手。


「はい、どうぞー」


 明るく響くテノールはミロクのものだろう。その声に励まされるように、ゆっくりと入っていくのは七人の少女たちであった。


「はじめまして! ベザです!」

「フクです!」

「ビシャです!」

「ホテです!」

「エビです!」

「ダイコです!」

「ジュロです!」

「七人あわせて、『鶯谷七セブン』です!!」


 ミロクたちの前で、七人はそろってターンをするとピタリと合わせてポーズをとった。何やら福がきそうなポーズである。

 まだ十代のピチピチした彼女たちは、オッサンたちには眩しすぎるようだ。シジュとミロクは「めが、めがー」と悶えていて使い物にならない。

 そこに出てきたのは切れ長の目をキラリと怪しげに光らせた『344(ミヨシ)』リーダーのヨイチである。


「お嬢さんたち、今日はライブを観に来てくれたのかな?」


「はい! 私たちも北海道でライブをやったのですが、ぜひとも『344』さんのライブを観たくて……」


「ふふ、ありがとう」


 屈んで目線を合わせたヨイチは、少女の頭を優しく撫でてやる。

 その瞬間、真っ赤になった彼女はふらついて倒れそうなところを、すかさず支えるヨイチ。


「ヨイチさん、俺に散々自重しろとか言って……」


「オッサン……それ以上は犯罪だからな?」


「え? そうかな?」


 ヨイチの腕の中でうっとりしていた少女は、ハッと気づいて慌てて離れる。


「ミロクさんじゃないから油断していました! さ、さすがですね!」


「いや、僕は別に何も……」


「こうなったら私たち七人のパワーで、『344』さんたちをメンバーに取り込んでやるのです!」


「「「な、なんだってー!?」」」


 未だ顔が赤いままの少女がポーズをとると、他の六人も慌てて同じようにポーズをとる。


「くらえ!! 七福々ビーム!!」


「「「うわああああああっ!?」」」







 暗転していた会場が再び明るくなると、舞台の様子は一変していた。

 ピンク色を基調にした舞台装置、ふんわりハート形の風船がたくさん飛んでいる。そこを奈落から上がってきた七人の美少女が、きらびやかな衣装を身にまとい会場を盛り上げる。


「飛び入り参加の『鶯谷七』です!!」


「今日は、新しいメンバーを三人紹介します!!」


 少女の声に盛り上がる会場。そこは悲鳴と何かが入り混じった歓声でうめつくされていた。

 

 アッシュグレーの髪は縦ロールに切れ長の目を流した和風美女。

 青を基調とした衣装で、プリーツの入ったロングスカートに編み上げブーツの組み合わせは思わず「お姉様」と呼びたくなるような気品をかもし出している。

 

 癖のある長い髪のポニーテール、少し垂れた目がチャームポイントのワイルドな美女。

 彼女の日に焼けた肌は健康的な美しさを秘めている。赤を基調とした衣装で、大胆にスリットの入ったスカートからチラリと見える黒のガーターベルトと網タイツ。赤いハイヒールには思わず跪いてしまいそうになる。


 サラリとした黒髪ストレートは腰まであり、白い肌にピンクの唇が麗しい色気だだ漏れの美女。白を基調とした衣装は、大胆にもフリルのついたミニスカートにレースのついたニーハイソックスと、リボンの靴下留めが愛らしい。

 彼女は微笑むと、衣装を見せびらかすようにくるりと回ってみせる。ふわっと浮かぶミニスカートからのぞく絶対領域と、見え隠れする艶やかな白い肌に、どこからか生唾を飲む音が聞こえる。


「ミロ子です!」

「ヨイ子だよー」

「……シジュ子だ……」

「三人合わせてー」


「「「『344』です! よろしくおねがいします!」」」





お読みいただき、ありがとうございます!


コミックPASH!様にて、オッサンアイドルのコミカライズの最新話が更新されています。

オッサンたち、初めての発表会。初めての共同作業。(なんか違うw)

この回と見比べていただけたら嬉しいですw

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