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オッサン(36)がアイドルになる話  作者: もちだもちこ


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33/353

27、メガネと司樹の宿題。

「ラジオの公開放送?」


「そうなんだよ。予想以上に反響があって、その後トークショーとあの発表会でやったダンスを披露して欲しいそうだ」


 344(ミヨシ)としての雑誌モデルの撮影を終えた三人は、近くの喫茶店の一角で休憩に入っていた。この後はダンスの練習が入るため軽食もとっておく。


「俺らはバックダンサー?」


「そうだよ。デビュー曲があればそれを披露したんだけどね……尾根江さんは発表会のが気に入ってるみたいでさ」


「あれ、きっついんだよなぁ、俺はともかくヨイチのおっさんは大丈夫か?」


「僕も結構体力ついてきたよ。腰痛もトレーニングして腹筋背筋つけて、痛みも少なくなってきたし」


 タブレット端末を操作しながら、ヨイチは銀縁メガネのフレームを押さえる。


「肩周りは筋肉つけすぎるなよ、シルエットを綺麗にしねぇとダンスが映えねぇ」


 シジュはそう言うと、ブランド物のメガネを外して胸元に引っ掛けた。


「あの、聞いていいですか?」


「何?」

「どうした?」


「俺はともかく、なんで二人もメガネをかけてるんですか?」


「……」

「……」


 シジュは明後日の方向を見て「あ、かわい子ちゃん発見」とか呟き、ヨイチはタブレット端末から目を外さない。


「ヨイチさん?シジュさん?」


「いや、メガネ男子は需要があるって聞いたから」

「俺はインテリに見られてモテたかったから」


「ヨイチさんはともかく、シジュさんは後で掌底かまします」


「最近ミロクが俺にだけ厳しい!」


 そんなやりとりを横目で見つつ、ヨイチはカフェオレを飲みきると「そろそろ行くよー」と二人を促す。

 慌ててミロクはサンドイッチを詰め込み、シジュはアイスコーヒーを飲みきる。


「そういや、おっさんがカフェオレって珍しいな。しかも砂糖入りなんて」


「うん、たまにはね。疲れてる時は甘いものも良いかと思ってね」


「へぇー…」


 喫茶店から出ると、見慣れた車が停まっている。そこから出てきたポワポワ茶色の猫っ毛頭に、三人は笑顔になる。


「ご苦労様フミ、デスクワークは終わったのかな?」


「はい、大丈夫です。撮影お疲れ様です!」


「フミちゃんお迎えありがとう!」


「お疲れ様ですミロクさん!撮影どうでした?」


「聞いてよ、メガネかけたシジュさんがエロいんだよ」


「それはしょうがないです!諦めましょう!」


「最近フミちゃんも厳しい!」


 シジュの悲愴感にあふれる表情は、もちろん作った表情だ。役者になれるんじゃないかと思うくらいの演技力に、ある意味感心する三人。

 乗り込んだ車が走り出してしばらくすると、ヨイチは仕事モードで話し出した。


「この後はダンスレッスンになるけど、シジュは宿題もあるからね」


「宿題?」


「この前の放送禁止だった歌詞作り、僕が添削するから書き直すこと!」


「ええ!?なんでだよ!!」


「せっかくだから三人全員の作った歌詞をコンプリートしたいと、そんな要望が結構届いてたらしいぞ」


「俺も見たかったのに、見せてくれなかったんですよね、ヨイチさんが……」


「見せられないね。ミロクが汚れる」


「……俺の歌詞って、そんなに?」


「最低ですね!」


 可愛い笑顔でシジュに言い放つフミを見て、ミロクは「可愛い…」とうっとりした顔で小さく呟いている。

 そんな車内のカオスな空気に、ヨイチは咳払いをして話を続ける。


「とにかく、意外とラジオは好評みたいだ。今のペースで続けていこうと思う。このまま良い感じなら週一回番組をもたせてくれるそうだ」


「ええ!?本当ですか!?」

「マジか……」

「すごいです!」


「事務所としても看板アイドルを出すチャンスだからね……まぁ、おっさんだけど」


「まぁ、今はとにかくダンスを完成させよう。曲はどうなってんだ?」


「まだ出来てないみたいだよ。曲作ってる人がかなり盛り上がってるって尾根江さんから連絡があったけど、盛り上がってるってなんだろうね」


「何か嫌な予感しかしませんね……」


「それ言ったらダメなやつだろ……」


「大丈夫です!応援してくれる人がたくさんいます!だから大丈夫です!」


 なぜか自信満々に言うフミが可笑しくて、おっさん三人はつい吹き出してしまう。何で笑うのかと怒るフミが可愛くて、さらに笑ってしまって止まらない。


 プリプリ怒るフミを三人で宥め、すっきりとした気持ちでダンスレッスンに励むおっさん達であった。







お読みいただき、ありがとうございます!

ついやってしまった感……

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