表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オッサン(36)がアイドルになる話  作者: もちだもちこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/353

26、芙美と仁奈の内緒話。

フミちゃん回?です。

 何故、来るかどうかも分からないミロクを待っていたのだろう。


 フミは事務所専用の駐車場に車を停めると、軽くため息を吐いた。エンジンを止めて車から出ようとするも、立ち上がる気力は無かった。

 ミロクと一緒にいると、心が不安定になるのは分かっている。それでも顔を見ない日は落ち着かなくて、つい彼のことばかり考えてしまう。


(恋……なんて、簡単なものじゃない)


 初めてミロクを見た時、なんて綺麗な人なんだろうと思った。自分より十三も年上だとは思えない純粋な人だと思った。

 誰に対しても優しく誠実であろうとする彼を、皆が好きになるのは当たり前で。その当たり前に自分も加わっていると思っている。


(それにミロクさんは、私を妹扱いしている感じだし)


 はぁーっと、今度は深くため息をついて車から出る。むわっとした夏の空気に顔をしかめながら、涼しい事務所に急いで戻ろうとすると、どこかで見たような姿が目に入った。


「ニナさん……?」


 水色のストライプのシャツに黒のチノパンで、編み込みの髪を結わえているスラリと背の高い女性は、確かミロクの妹であるニナだろう。

 事務所の前でウロウロしているのは、もしかしたらミロクに用があるのかもと声をかける。


「あの、ミロクさんの妹さんですよね」


「わぁっ、あ、ああ、マネージャーさんだっけ?」


「はい、如月フミです」


「私はニナで良いよ。携帯繋がらなくてお兄ちゃ……兄を探しているんだけど、今日は仕事じゃないの?」


「ミロクさん今日はオフなんです。……あ、さっきジムにいました。もしかしたらそのせいかもしれません」


「そっか……」


 ニナは少し暗い顔をしている。


「あの!!何かあったんですか!?」


 自分では力になれないかもしれないが、思い切って聞いてみようとするフミを、ニナは呆然と見ていた。


「えっと、大したことじゃないんだけど……」


「そんな事ないです。ここ暑いでしょうから事務所にどうぞ!」


「え?いいの?」


「ミロクさんの身内の方です!どんとこいなのです!」


「何それ」


 つい吹き出したニナを見て、フミは笑顔で事務所に案内するのだった。







「叔父ですか?」


 クーラーの効いた会議室で涼みながら、麦茶を出すフミ。

 先程よりは幾分和らいだ表情のニナの問いかけは、ヨイチの事だった。


「うん。あの人どっかで見たことあると思って、発表会の時は気がつかなかったんだけど、お兄ちゃんと一緒にラジオ出てるの見て思い出したの」


「どっかで見た?テレビじゃないですか?叔父は昔シャイニーズに所属していて、そこそこ売れてたんですよ」


「やっぱり!!そうか……それ知ってるのかな……」


「二人組の『アルファ』っていう。メンバーが都合で辞めてしまって、シャイニーズの社長は叔父を引き留めたかったみたいです」


「辞めたのも病気だったからって」


「はい。アイドルは体力勝負ですから。でも叔父のことよく知ってますね。もう二十年以上前ですよ?」


 確かニナはフミよりも少し年上のはずだから、芸能人に興味を抱くとしてもヨイチが対象であるのは珍しい。

 ニナは出された麦茶をゴクゴクと飲み干すと、ぷはーっと息を吐いてコップを置く。


「ファンがいたの」


「ファン?叔父のですか?」


「私小さかったし、ヨイチさんの事はあまり憶えてないけど、追っかけしたり手紙書いたりしてたの」


「それは……なんというかマニアックですね。ニナさんのご友人ですか?」


「姉よ」


「へ?」


「姉は隠していたけど、小さい時に姉の隠しているシャイニーズグッズを見つけちゃったの」


「そ、それって……」


「もちろん言えない。知らないことにしてるの」


「は、はぁ……」


 まさか「あの」ミハチが隠れシャイニーズファンだとは想像もつかないが、フミはとりあえず自分を納得させる。


「それで、なぜここに?」


「お兄ちゃんならヨイチさんを知ってるでしょ?この前、姉とヨイチさんが二人で会ってるのを見ちゃって……色々考えちゃったの」


「ああ、叔父からはミロクさんの事で話してたって言ってましたけど……でもミハチさんのその事を知ってしまうと……」


 唐突にフミは気付いた。大崎家は他の家庭よりも家族の絆のようなものを強く感じる。それが今回のニナの行動ではないか……と。

 ニナはブラコンであるが、シスコンでもある。

 年の離れた姉に小さい頃から憧れていた。そんな姉が芸能人とはいえ夢中になっていた男性が、今近くにいるのだ。


「……ニナさんは心配してるんですね」


「え!?や、そんな、そんな事ないんだけど!二人ともオトナだし!」


「ふふ、大丈夫です。叔父は人間的にもしっかりしてますから、ミハチさんに何かするとは考えられないです。それにミハチさんですし」


「まぁ、そうなんだけど。この事知ってるの私だけだし、一応ね」


「あ!こんな大事なこと私が知っても大丈夫だったんですか!?」


 どうしようとワタワタしているフミは、茶色の猫っ毛髪をポワポワさせて慌てている。その小動物のような動きに、ニナは頬を緩めた、


「いいよ、お兄ちゃんのマネージャーだし、話聞いてもらって楽になった。ありがとう」


 笑顔で言うニナに、フミは顔を真っ赤にする。ミロクの妹であるニナも美人の部類に入る。笑い方もミロクそっくりの為、なんだかついポッとなってしまう。


「あはは、フミちゃんって面白い。またこうやって話してね」


「はい!!」


 あまり接点のないニナと親しくなれたような気がして、フミは嬉しく思った。


(それにしてもこういう仕事してるからといって、私美形に囲まれすぎじゃない?)


 フミはこっそりため息をつき、麦茶のお代わりを飲むニナの整った顔を見ていた。






お読みいただき、ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ