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オッサン(36)がアイドルになる話  作者: もちだもちこ


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30/353

25、オフの弥勒と迫るデビュー。

 ラジオの放送はネットでも流れており、三人のラジオで喋る様子もリアルタイムで流れる。元々動画で話題になっていたミロクの特殊な知名度もあり、番組を視聴する人数は前回よりも増えているようだ。

 二回目のラジオ放送でミロクが作った歌詞は周囲の反響がすごく、終わった後にヨイチは興奮した尾根江から連絡を受け、話し合いの結果デビュー曲について本格的に詰めていくということになったらしい。


(アレをどう詰めるんだろう……まぁきっと尾根江さんが作るんだろう。あの人作詞家だし)


 珍しく終日オフになったミロクは、駅前の商店街を歩いていた。ふとメガネを買うように言われた事を思い出す。

 平日の商店街は人通りが少ない。目深に帽子をかぶったミロクは特に話しかけられることもなく、眼鏡屋に入っていく。無難に黒いフレームのメガネを購入。

 女性店員がずっと無言だったこと除けば、店長である男性が丁寧にメガネを作ってくれたので良い店だったと思う。


 馴染みの本屋によると344(ミヨシ)でモデルの仕事をした雑誌が出ていた。ミロクはそれを手に取ると、シジュがぐったりとしてたのを思い出し、クスクス笑ってしまう。

 それを見た本屋の店員がダッシュでバックヤードに入り、色紙とペンを持ってきたので、帽子とメガネは本格的に変装にならないとミロクは知る。「ラジオ聴きました!」と言われ、お礼を言って店を出た。






 時間がある時は必ず行くようにしているスポーツジムに向かうと、入り口で見覚えのある茶色いかみがポワポワ揺れてるのが見える。


「フミちゃん?」


「……ミロクさん!」


 振り向いたフミはパッと明るい笑顔を浮かべると、トトトっと駆け寄ってきた。可愛い。


「どうしたの?ジムに入らないの?」


「私会員じゃないし、叔父さんを送ってきたところだったんです。シジュさんも来ていますよ」


「え?そうなの?入り口で誰かを探してるみたいだったけど……」


「ひぇ!?いや、さ、探してはいないですけど……ああ!ミロクさんメガネ買ったんですか?」


「うん。銀縁とかも気になったんだけど、ヨイチさんの方が似合いそうだし、派手な色はシジュさんの方が似合うとか思っちゃって」


「ミロクさんは華があるので、シンプルなアイテムで充分だと思います!」


「え?そう?でも……」


 ミロクはフミに目線を合わせて、甘く微笑む。


「うん、フミちゃんの方が花みたいに可愛いから、花があるのはフミちゃんの方だね」


 そう言ってジムに入っていくミロクを呆然と見送ったフミは、「メガネしてもダメでしたー!!」と叫んだとか叫ばなかったとか……。







「お、来たかミロク」


「お疲れ、ミロク君」


「お疲れ様です。トレーニングですか?」


「トレーニングはついでで、ミロクが来るかと思って待ってたんだ」


「フミが送ってくれたんだけど、会えずに残念だったね」


 自分を待っててくれたという言葉に嬉しく思ったミロクだが、おや?と首を傾げる。


「フミちゃんなら会いましたよ。ジムの入り口で。誰か探してたみたいですけど」


「……」

「……」


「何ですか二人とも、その目は」


「や、何でもねぇよ。愛が痛ぇよ」


「まぁ僕らが来たのは結構前なんだけど……それよりも、オフに悪いんだけどデビュー曲の音源が出来たから、ダンスだけでも合わせようってことになってね」


「え!?早いですね!!」


「細かいところは変わるだろうけど、土台は一緒みてぇだから大体作ってきたぞ」


「三人のダンスバージョンと楽器演奏バージョンを作るって。尾根江さんがミロク君のピアノにインスピレーション感じまくってるみたいで……衣装も用意してくれるっぽいよ」


「な、なんか嫌な予感がします……」


「お前の王子様スタイルは諦めろ。普段の行いに問題があるんだ」


「ええ!?大崎家の家訓どおりに行動してるだけなのに……」


「どんな家訓でああなるんだよ」


 シジュは呆れたようにミロクを見ている。ヨイチは苦笑しながらタブレット端末から音源を流した。

 キーボードだけの音のため曲のイメージがつかみづらい。


「お披露目は一ヶ月後になりそうだ。それまでなるべく集まっていこう」


「おう」

「わ、わかりました」


 緊張するミロクに、ヨイチとシジュは背中をさすって落ち着かせてやる。なんだかんだ年上二人はミロクに甘いのだ。


(本当に……するんだ……デビュー……)


 緊張しながらも、デビューするからには色々覚悟しなきゃと、拳を握るミロクであった。









お読みいただき、ありがとうございます!

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